しかし、2000年秋頃からそれまでと傾向が異なる地殻変動が観測され始めました(図)。1998年1月~2000年1月を、定常的な地殻変動が進行していた期間と考えて、その変動速度および年周・半年周成分を推定して、当該期間の地殻変動から取り除きました。そうすることで、従来とは異なる地殻変動のみ(以下、非定常地殻変動)が明瞭となります。
こうして得られた非定常地殻変動は、「愛知県から静岡県にかけての南東方向の水平変位」および「愛知県で沈降、静岡県西部で隆起」という特徴が見られます(図)。この非定常地殻変動は、プレート境界面上での固着によって引きずり込まれる方向とは逆向きのすべりにより引き起こされると考えられ、そのすべりの中心は浜名湖直下にあると推定されました(図)。この浜名湖直下に推定されたすべり(スロースリップ)は、2005年夏ごろにほぼ停止したと考えられます。 今回のスロースリップは、地震の規模を表すモーメントマグニチュード(Mw)に換算すると7.1程度(剛性率を30GPaと仮定)のエネルギーを解放したことに相当します(図)。プレート境界面上の深さ0~20kmのところには,発生が危惧されている大地震(東海地震)の想定震源域が存在しますが,今回のスロースリップの発生場所は深さ20~30kmと推定され,各々重ならないような場所で発生していました(図)。 このスロースリップにより、浜名湖直下付近ではプレートの沈み込みによって蓄えられたひずみが解放されましたが、発生が危惧されている東海地震の想定震源域では、ひずみの解放はほとんどありませんでした。
現在は、スロースリップ開始以前の地殻変動とほぼ同様の傾向にあると考えられますが(図)、今後とも地殻変動の推移を注意深く見守る必要があるため、国土地理院ではすでに公開している全国の情報に加えて、当面原則として月1回程度、この地域の地殻変動情報を更新していく予定です。なお、臨時に計算を行い、情報を更新することがあります。

