地震予知連絡会の活動報告

第113回地震予知連絡会(1995年2月20日) 議事概要

 平成7年2月20日、国土地理院関東地方測量部において第113回地震予知連絡会が開催され、平成7年兵庫県南部地震、東海地方の地殻活動等について、大学、国立研究機関等より報告があり、検討が行われました。

 以下に主な議事の概要を紹介します。

1.兵庫県南部地震について

 兵庫県南部地震の余震活動は順調に減衰している(気象庁資料)。明石海峡付近を中心に4つの領域に分け、北東と南西の領域での活動の推移を見ると、活発化と静穏化を繰り返しながら、減衰していることが見える(京都大学資料気象庁資料1資料2)。一方、周辺地域の微小地震活動がやや高まっている。今回の余震域北東側の丹波山地では、本震発生直後からほぼ全域で地震活動が活発化している(京都大学資料)。また、北西側の山崎断層でも本震発生直後から地震活動の活発化が見られている(京都大学資料)。過去の内陸地震の最大余震や続発地震の例を調べると、1ヶ月以上経って最大余震が発生した例は26例中2例しかなく、今回の地震発生から1ヶ月経ったことからM6クラスの余震の発生の可能性は低くなったと考えられる(気象庁資料)。但し、地震の続発が見られた例も多く、広域の地震活動の推移を注意していく必要がある。

 余震データを再検測し、その震源を精密に決定したところ、余震分布は、神戸側では既存の断層にほぼ一致する(京都大学資料)。しかし、余震分布と震度7の領域は一致せず、被害の原因は未知の活断層の活動よりも地下構造の影響と考えられる(気象庁資料)。

 GPSによる三角点の測量により、地殻水平変動が明らかになった(国土地理院資料)。全体的には右横ずれの変動を示すが、地理的なパターンから淡路島の野島断層と神戸の断層系と2つ以上の断層が動いたことが示唆される。また、神戸側では六甲断層系に対して非対称なパターンであり、複雑な断層運動を示唆する。水準測量により垂水付近を境に明石側が約19cm隆起し、神戸側が7cm程度沈降したことが明らかになった(国土地理院資料1資料2)。この隆起と沈降の境界は、ほぼ六甲断層系に一致し、野島断層の延長には当たらず、このデータからも複雑な断層運動が示唆される。

2.東海地方の地殻活動

 1993年11月からの3ヶ月では、伊勢湾付近の地震活動が活発であった(名古屋大学資料)。兵庫県南部地震との関連がある可能性も示唆された。想定震源域では、昨年秋からほとんど地震が発生していない(気象庁資料)。一方、伊豆諸島海域では活発な活動が続いている。

 森町から御前崎に至る水準測量では、10月の測量に比較して掛川で2cmや浜岡で3.7cm沈降した(国土地理院資料)。年周変化を補正した上下変動を見ても、浜岡が掛川に対して1.2cm沈降している(国土地理院資料)。このデータは、1992年以前の変動の延長上にあるとも見られ、最近2年間の沈降の停滞が終わったとも見られるが、今後も注意深く見守っていく必要がある。

3.伊豆半島とその周辺の地殻活動

 伊豆半島伊東市周辺では、最近は目立った地震活動も見られず(気象庁資料)、水準測量データにも隆起は見られない(国土地理院資料)。このように、現在のところ伊豆半島東部の地殻活動は静穏な状況にあるが、必ずしも1974年からの一連の活動の終息を示すものではなく、今後も注意が必要である。

 伊豆諸島周辺海域では、特に新島・神津島付近で依然活発な活動が続いている(気象庁資料)。今後も見守っていく必要がある。

4.関東地方の地震活動

 1979年からの地震データを調べると、1986年頃からMの大きな地震が目立ち始め、1993年からM4以上の地震が4個発生するなど、地震が大粒になってきていることがわかる(防災科学技術研究所資料)。また、歴史を遡ってみると、1923年関東地震以来約50年間東京では震度5を観測しなかったが、最近見られるようになった。これらのことは、南関東地方でも地殻内の応力が高まっていることを示唆する。今後の推移を注意深く見守っていく必要がある。

5.北海道地方の地震活動

 1984年からの北海道周辺の地震について、緯度・経度0.05゜のメッシュ内の発生回数を見ると、北海道南西沖及び東方沖地震の余震域や浦河沖で活発なことがわかる(北海道大学資料)。1894年根室半島沖地震の余震域の西半分、1952年十勝沖地震の余震域の東半分の活動が低く、注目している。

6.三陸はるか沖地震について

 昨年12月28日に発生した三陸はるか沖地震の余震は、本年1月7日に余震域の西端で最大のM6.9が発生し、その後この周辺で活動度が高まったが、余震活動としては減少してきている(東北大学資料)。余震域とその周辺を領域に分けて、各領域内の時空間分布を見ると、震源断層を含む領域では、本震発生1ヶ月前くらいから静穏化していた(東北大学資料)。

(事務局:国土地理院)