地震予知連絡会の活動報告

第171回地震予知連絡会(2007年2月19日) 議事概要

 平成19年2月19日、国土地理院関東地方測量部において第171回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。トピックスとして、「近畿の地殻変動」について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間に発生したM6以上の地震では、11月18日に奄美大島近海でM6.0の地震が発生している。なお、国外では千島列島で11月15日にM7.9、1月13日にM8.2の地震が発生した。12月26日に台湾付近でM7.2、1月25日に台湾東方でM6.1の地震が発生した(気象庁資料)。

 なお、期間外であるが、2月17日に平成15年(2003年)十勝沖地震の余震域内でM6.2の地震が発生している。

2.日本列島の歪み変化について

 GPS連続観測データから推定した日本列島の歪み変化は北海道地方で2003年十勝沖地震に関連する余効的な地殻変動の影響による歪み変化がみられる。また伊豆諸島周辺の地殻活動に伴う北東—南西方向の伸びが依然として顕著である。2006年1〜5月の伊豆半島東部における地震活動、2006年夏以降の箱根周辺での地殻変動の影響も見られる(国土地理院資料)。

3.東海地域の地殻活動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町〜掛川間では前回の観測結果と比較してほとんど変化は見られず、掛川〜御前崎間でごくわずかな沈降が見られる(国土地理院資料)。掛川市の水準点140-1に対する御前崎市の水準点2595の動きは、長期的な沈下の傾向が続いている(国土地理院資料)。

 東海地域の非定常地殻変動(スロースリップ)は、トレンドを除いた時系列データを見ると2005年中頃から非定常変動がほぼ停止しているように見える。しかし、一部の観測点では隆起が継続あるいは新たに開始しているように見える(国土地理院資料)。

 御前崎沖の地震活動が、2006年8月から静穏になっているが、地殻変動には明瞭な変化は見られていない(気象庁資料)。

 2007年2月に深部低周波微動が発生し、それに伴う傾斜変動が観測された(防災科学技術研究所資料)。

4.千島列島の地震活動

 千島列島東方で、海溝軸を挟んで2006年11月15日に西側でM7.9、2007年1月13日に東側でM8.2の地震が発生した。11月の地震は北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で北米プレートと太平洋プレートの境界付近で発生した地震、1月の地震は北西−南東方向に張力軸を持つ正断層型で太平洋プレート内部で発生した地震と考えられる。なお、1月の地震発生領域では、11月の地震直後から地震活動が活発化していた(気象庁資料)。

5.トピックス「近畿の地殻活動」

 近畿地方における地震活動や地殻変動の観測結果とその解釈について報告された。

 丹波山地地域の微小地震活動が2003年頃から静穏化を示している。過去に遡って見ると、1995年の兵庫県南部地震の数年前からこのような静穏化が起きていたことが報告された(京都大学防災研究所資料)。また、丹波地方の地震活動の空間的な変化の推移を調べた結果について報告があった(気象庁資料)。近畿地方中部において、地殻変動連続観測により主歪み軸の時間的な変化が見いだされた。観測された歪み速度の時間変化の原因として、プレート間相互作用の変化ではないかというモデルが提出された。近畿地方でのGPS観測の結果から、歪み速度の変化の検出が行われ、多くの地点で2002年の後半に剪断性の歪みが発生している様子がとらえられ、それを説明するモデルが提出された(京都大学防災研究所資料)。また、地震活動の活発化、静穏化の変化について、地下水と応力変化によって定性的に説明できるという報告がされた。(京都大学防災研究所資料)地震波のトモグラフィーの結果は、丹波山地地域の地下に流体が存在することを示唆しており、上記のモデルと矛盾しない。(京都大学防災研究所資料)また、近年の研究の進展により、M7クラスの内陸地震について破壊開始点と主破壊域の推定がある程度可能であることが報告された(京都大学防災研究所資料)。

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁 (2006年11月〜2007年1月)
 1.日本とその周辺
  C 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

 2.北海道地方とその周辺
  C 十勝支庁南部(11月1日 M4.8、M4.3)の地震活動
  C 北海道東方沖(11月22日 M5.6)の地震活動
  C 釧路沖(12月6日 M5.0)の地震活動
  C 根室半島南東沖(12月31日 M5.0)の地震活動
  C 網走沖(1月9日 M4.7)の地震活動

 3.東北地方とその周辺
  C 福島県会津(11月30日 M4.3)の地震活動
  C 山形県沖(1月28日 M4.3)の地震活動
  C 宮城県沖の地震活動

 4.関東・中部地方とその周辺
  C 千葉県北東部(12月4日 M4.5)の地震活動
  C 佐渡付近(12月26日 M4.9)の地震活動
  C 新島・神津島近海(12月31日 M4.7)の地震活動
  C 新潟県中越地方(1月8日 M4.8)の地震活動
  C 静岡県伊豆地方(1月16日 M5.8)の地震活動
  C 福井・岐阜県境付近(1月22日 M4.5)の地震活動
  C 御前崎沖の地震活動
  A1 東海地域の低周波地震活動と短期的スロースリップ
    (1)2006年11月
    (2)2007年2月
  C 東海地域の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動

 5.近畿・中国・四国地方とその周辺
  C 愛媛県南予(11月19日 M4.2)の地震活動
  A1 丹波地方およびその周辺の地震活動

 6.九州地方とその周辺
  C 奄美大島近海(11月18日 M6.0)の地震活動
  C 奄美大島北東沖(12月11日 M5.7)の地震活動

 7.沖縄地方とその周辺
  (沖縄地方とその周辺では今期間特に目立った活動はなかった)

 8.期間外・海外
  C 台湾付近(1月26日 M7.2、M7.1)の地震活動
  C 台湾付近(1月25日 M6.1)の地震活動
  A1 千島列島東方(2006年11月15日 M7.9、2007年1月13日 M8.2)の地震活動
  A1 気象庁地震カタログの震源再計算

【2】国土地理院
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間および3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間、3ヶ月)
  A2 GPS連続観測から推定した日本列島の歪み変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 東海地方の水準測量結果Ⅰ(森〜掛川〜御前崎間)
  A2 東海地方の水準測量結果Ⅱ(菊川市付近)
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 浜名湖・伊勢湾周辺
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 御前崎周辺
  C 御前崎地区高精度比高連続観測結果
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計観測結果
  C 御前崎地中地殻活動観測装置観測結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壺・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  A2 伊豆半島の水準測量結果
  C 伊豆半島および伊豆諸島の地殻水平・上下変動
  A2 GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区
  C 川奈地区精密辺長観測結果
  C 伊豆半島東部測距連続観測結果
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区
  B 伊豆大島の地殻変動

 4.関東地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 首都圏の水準測量結果
  C 三浦半島の水準測量結果
  C 房総半島の水準測量結果
  C 松本地区の水準測量結果
  C GPS連続観測結果 箱根周辺
  C 館山地殻活動観測場
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果

 5.北海道地方の地殻変動
  C 北海道の地殻水平変動図(最近3ヶ月、1ヶ月)
  C GPS連続観測結果 北海道太平洋岸
  A2 2004年釧路沖の地震以降の地殻変動
  A2 千島列島東方の地震(2006.11.15 M7.9、2007.1.13 M8.2)に伴う地殻変動

 6.東北地方の地殻変動
  C 仙台・牡鹿地区の水準測量結果
  C GPS連続観測結果 東北地方太平洋岸
  C 東北地方の高度地域基準点測量結果

 7.北陸・中部地方の地殻変動
  C 中越地方の水準測量結果
  C 中京地方の水準測量結果
  A2 GPS連続観測結果 御嶽山周辺
  C 跡津川(有峰湖地区)変動地形調査測量結果

 8.中国・四国地方の地殻変動
  C 中国地方の水準測量結果
  C 室戸岬西側の水準測量結果

 9.九州・沖縄地方の地殻変動
  C 雲仙地方火山変動測量結果
  C 沖縄県辺土名地区の水準測量結果
  C 奄美大島近海の地震(2006.11.18 M6.0)に伴う地殻変動

 10.その他
  C 測地VLBI観測(国際・国内超長基線測量)結果
  C 硫黄島の地殻変動

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の地震活動
  C 2006年8月18日に発生したサハリン南西部地震(M5.9)について
  C 根室沖アスペリティ付近のb値の時間変化
  C 千島列島東方沖の地震−2006年11月15日(M7.9)と2007年1月13日(M8.2)に伴う
    歪み地震動記録
  C 2006年11月15日と2007年1月13日千島列島東方沖の地震に伴う津波解析

【4】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について

【5】東京大学地震研究所
  C 1月13日千島列島で起こった地震の震源過程
  C 日光・足尾付近の地震活動(2006年11月〜2007年1月)
  C 富士川・駿河湾地方における地殻変動観測(その31)
  C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2006年11月〜2007年1月)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2006年11月〜2007年1月)

【6】名古屋大学環境学研究科
  A4 水準測量による東海地域の上下変動
  A4 2006年12月19日愛知県・岐阜県境付近の地震

【7】京都大学防災研究所
  C 近畿北部の地殻活動

【8】九州大学理学研究院
  C 九州の地震活動(2006年11月〜2007年1月)

【9】鹿児島大学理学部
  C 九州南部の地震活動(2006年11月〜2007年1月)

【10】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2006年11月〜2007年1月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2006年11月〜2007年1月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測                    (2005年5月〜2007年2月)
  B 宮城県沖の地震活動パタン変化
  B 2007年1月9日 北海道網走沖の地震
  B 2006年12月26日佐渡島近海の地震
  A4 西南日本の深部低周波微動及び短期的スロースリップ活動
                             (2006年12月〜2007年2月)

【11】産業技術総合研究所
 1.東海・伊豆地域
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2006年11月〜2007年1月)
  C 神奈川県西部地域の地下水位観測(2006年11月〜2007年1月)
                     −神奈川県温泉地学研究所・産総研−

 2.中部・東海地域
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2006年11月〜2007年1月)

 3.近畿地域
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2006年11月〜2007年1月)

 4.中国・四国地域
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2006年11月〜2007年1月)
                     −鳥取大学工学部・京大防災研・産総研−

【12】海洋情報部
  C 海底基準点における海底地殻変動観測結果
  C GPSによる地殻変動監視観測
  C 2007年1月13日の千島列島東方で発生した地震による津波の潮位記録

【13】統計数理研究所
  A4 千島列島沖の地震活動
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出