地震予知連絡会の活動報告

第150回地震予知連絡会(2003年2月17日) 議事概要

 平成15年2月17日、国土地理院関東地方測量部において第150回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ議論がなされた。トピックスとしては、活断層の深部構造と地震・地殻活動について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、宮城県沖、東海道沖、日向灘などでM5を越える地震が発生した。
 全国のM5以上の地震 (2002.11.01−2003.01.31)(気象庁資料)

2.東海地域の地殻活動について

 東海地域の掛川〜御前崎間では2002年10月の測量で御前崎付近に沈降の不足が見られたが、11月の測量で沈降不足が解消し、2003年1月に行われた測量では従来の傾向通りの沈降が生じていることが確認された。
 森町〜掛川〜御前崎間の上下変動(国土地理院資料)
 水準点2595(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)

 一方、東海地域の推定固着域周辺における地震活動は、地殻内、フィリピン海スラブ内とも平常レベルである。
 固着域周辺の地震活動 (地殻内 1997年以降)(気象庁資料)
 固着域周辺の地震活動 (フィリピン海プレート内 1997年以降)(気象庁資料)

 東海地域の異常地殻変動は依然として継続している。最近では、平均的な変動からのずれの水平成分が以前より小さくなっているように見えるが、年周成分が十分に取り切れていない部分もあり、今後とも注意深く推移を見守る必要がある。一方、最近約1年間の隆起量は浜名湖の北東側で最大となっており、それ以前と比べてすべり領域が移動したことを示している。これらのデータからプレート境界面における断層すべりの時空間発展を推定した結果によれば、イベント開始以来のモーメント解放量はMw6.8を上回り、さらに成長を続けている。
 平均的な地殻変動からのずれ(精密歴)(国土地理院資料)
 東海地殻変動(3)大潟固定 (国土地理院資料)
 東海地方の上下変動(大潟固定)(国土地理院資料)
 推定滑り分布の時間変化(暫定)(5) 大潟固定データ(国土地理院資料)
 推定モーメントの時間変化(国土地理院資料)

3.東海道沖の地震活動について

 1月19日に東海道沖でM5.3の地震が発生した。震源の深さは当初40km程度と推定されたが、地震規模の割に大きな表面波が励起されていること、特徴的な反射波が検出される点などを考慮した結果、深さ10km程度で発生した可能性のあることが分かった。この深さを仮定して震源メカニズムを求めると、この地震はプレート境界面上で逆断層すべりが生じたものと推定される。この地震は1944年東南海地震の震源域の東端付近で発生しており、1966年、1968年にも似たような地震活動があったと考えられる。
 東海道沖の地震活動(気象庁院資料)
 (気象庁資料)

4.宮城県沖の地震の余効変動について

 宮城県沖では2002年11月3日にM6.1の地震が発生したが、周辺のGPS観測点では地震時のステップ状の変化に加えて地震後もゆっくりとした変動が検出された。この余効変動は最大でも1cm以下と小さいが、東北地方の内陸部に及ぶ広い範囲で検出された。このデータから推定される地震時および地震後の断層すべりの総量はMw6.5程度となり、本震と同程度の断層すべりが地震後に生じたと考えられる。
 傾斜・年周・半年周補正グラフ(成分表示)(国土地理院資料)
 2002年11月3日の宮城県沖の地震(Mj6.1)後の地殻変動について(2)(国土地理院資料)

5.室戸岬の上下変動について

 安芸市と室戸岬の間で水準測量が実施され、1896年以来1946年南海地震の発生を含む約110年間について上下変動の経年変化が明らかになった。室戸岬は、南海地震をはさむ時期に安芸市に対して約1m隆起したが、それ以外の期間は年間5〜6mm程度の速度で沈降している。この観測結果を外挿すると南海地震の再来周期(90〜120年)の間の沈降量は0.5〜0.7m程度にしかならず、地震発生の1サイクルが終わった時点で残留隆起が残ることになる。しかし、この結果は地質学的な知見とは必ずしも整合的でなく、更なる検討が必要である。
 室戸地方水準点5141の経年変化(国土地理院資料)

6.活断層の深部構造と地震・地殻活動について

 今回のトピックスでは、「活断層の深部構造と地震・地殻活動」と題して、陸域の断層の深部構造と内陸地震の発生過程の物理モデル関する議論を行った(世話人:佃榮吉委員)。

 プレート境界の地震と異なり、内陸地震の発生過程については物理モデルが未だに確立していない。これまで、下部地殻では地震が発生しないのは流動的で弱いためと考えられてきたが、こうした考え方では説明できない観測事実が多い。そこで、下部地殻は強く、断層の深部延長付近が局所的に変形をしているという新しい仮説が提出され、この仮説を検証するべく科学技術振興調整費による「陸域震源断層の深部すべり過程のモデル化に関する総合研究」が実施され、地震学的および電磁気学的な構造探査、GPSによる地殻変動観測、断層岩の観察、高温高圧の岩石実験、数値シミュレーションなどを通して、地殻および断層の変形過程と内陸地震の発生過程に関する総合的なモデルの構築を目指す研究が行われてきた。この研究により、糸魚川−静岡構造線北部および長町−利府断層周辺で地殻内の反射面分布や地震波速度構造、比抵抗構造と地殻変動分布が得られている。また、地震発生域の下限付近で形成された断層岩が現在地表に露出している場所では、脆性破壊と塑性変形が複雑に競合する複雑な変形様式や、水平方向に不均質な変形の様子が観察されるなど興味深い結果が得られている。こうした知見を総合して内陸地震の発生に関する物理モデルの構築を進める必要がある。
 内陸地震の発生過程の作業仮説(京都大学防災研究所資料)
 研究の概要(京都大学防災研究所資料)
 成果の概要(京都大学防災研究所資料)

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(A1)
 1.2002年11月から2003年1月の全国M5以上の地震と主な地震の発震機構解(C)

 2.2002年11月から2003年1月の北海道地方とその周辺の地震活動
  C 十勝沖(11月30日M5.2)の地震活動
  C 十勝支庁南部(1月7日M4.6)の地震活動
  C 釧路支庁北部(弟子屈付近)の地震活動

 3.2002年11月から2003年1月の東北地方とその周辺の地震活動
  C 青森県東方沖(1月6日M4.9)の地震活動
  C 宮城県沖(12月5日M5.2)の地震活動

 4.2002年11月から2003年1月の関東・中部地方の地震活動
  C 房総半島沖(12月11日M5.0)の地震活動
  C 茨城県沖(1月21日M5.0)の地震活動
  C 東海・南関東地方の地震活動・地殻変動
  A1 1月19日(M5.3)東海道沖の地震活動
  A1 1960年代に志摩半島沖から熊野灘にかけて発生した二つの地震活動について
  C 長野県北部の地震活動と松代における地殻変動連続観測
  C 三宅島近海〜新島・神津島近海の地震活動

 5.2002年11月から2003年1月の近畿・中国・四国地方の地震活動
  C 和歌山南部の地震活動

 6.2002年11月から2003年1月の九州地方とその周辺の地震活動
  C 11月4日(M5.7)日向灘の地震活動

 7.2002年11月から2003年1月の沖縄地方とその周辺の地震活動(C)

【2】国土地理院(A2)
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間の地殻水平変動
  A2 GEONETによる最近3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(3ヶ月)
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点(140-1、2595)の経年変化
  A2 水準点2595(浜岡町)の経年変化
  C 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  A2 水準点2602-1(菊川町)と10333(大東町)及び2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準点2602-1(菊川町)と2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値)
  C 比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺(2)
  A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
  C GPS連続観測による基線長・比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測結果 静岡県西部
  C GPS連続観測結果 東海道沖
  A2 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 御前崎長距離水管傾斜計月平均(E−W)
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計日平均
  C 地中地殻活動観測装置観測結果
  C 御前崎における絶対重力変化

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊豆大島の上下変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊東東部連続観測(辺長)日平均結果
  C GPS連続観測結果 伊豆東部周辺
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島北部周辺
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島北部周辺(ベクトル図)

 4.関東・中部地方の地殻変動
  C 藤沢〜水準原点(甲)間の上下変動
  C 三浦半島東側の上下変動
  C 水準原点〜大宮〜野田〜船橋〜千葉間の上下変動
  C 君津〜館山間の上下変動
  C 館山〜勝浦間の上下変動
  C 富津〜鴨川間の上下変動
  C 館山〜和田間の上下変動
  C 房総半島南部の上下変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  C GPS連続観測結果 富士山・箱根周辺

 5.北海道・東北地方の地殻変動
  C 北海道東部地方の水平歪み
  C 北海道南部地方の水平歪み
  C 男鹿半島の上下変動
  C 酒田市〜秋田市〜能代市間の上下変動
  C 北上市〜玉山村間の上下変動
  C 秋田市〜横手市〜北上市間の上下変動
  C 仙台市〜一関市〜北上市間の上下変動
  C 東根市〜仙台市間の上下変動
  C 仙台市〜牡鹿町間の上下変動
  C 関東・東北地方の上下変動
  A2 GPS連続観測結果 宮城県沖地震後の地殻変動

 6.中部・近畿地方の地殻変動
  C 中京地方の上下変動

 7.中国・四国・九州地方の地殻変動
  C 高梁市〜岡山市間の上下変動
  A2 安芸市〜室戸市間の上下変動
  C 阿波池田地区 精密辺長測量
  C GPS連続観測結果 日向灘・南海周辺

 8.その他
  C GPS連続観測結果 硫黄島

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の最近の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 弟子屈地方における体積歪み観測の紹介

【4】東北大学
  C 東北地方およびその周辺の微小地震活動(2002年11月〜2003年1月)

【5】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について

【6】東京大学地震研究所
  C 伊豆半島および伊豆諸島周辺の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 日光・足尾付近の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 高精度弾性波連続観測結果について(2003年1月まで)
  C 新潟県中部の地震活動
  C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 富士川・駿河湾地方における地殻変動観測(その27)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 徳島県池田町におけるGPS連続観測(2002年11月〜2003年1月)
  C 鳥取県西部地震震源域周辺の地震活動

【7】名古屋大学
  A4 2003年1月19日東海道沖の地震(M=5.3)の震源の再考

【8】京都大学
  C 昭和南海地震の前に水位の減少した井戸の調査
  C 紀伊半島における重力の時間的変化
  C 2003年2月6日亀岡市付近の地震活動について

【9】九州大学
  C 九州の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 九州南部の地震活動(2002年11月〜2003年1月) (鹿児島大)

【10】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2002年11月〜2003年1月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2002年11月〜2003年1月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測
  A4 2003年1月19日紀伊半島沖の地震
  A4 東海地域推定固着域における地震活動変化
  B レーザひずみ計及びレーザ津波計開発の現況

【11】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2002年11月〜2003年1月)
  C 豊橋観測点でのボアホール計測による地殻歪・傾斜観測結果
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2002年11月〜2003年1月)
  C 有馬−高槻−六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2002年11月〜2003年1月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2002年11月〜2003年1月)
  C 産総研による全国主要活断層等の研究の成果概要

【12】海洋情報部
  C GPSによる地殻変動観測

【13】統計数理研究所
  B 地震活動の変化について−中部・近畿地方の活動
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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