地震予知連絡会の活動報告

第175回地震予知連絡会(2007年11月19日) 議事概要

 平成19年11月19日、国土地理院関東地方測量部において第175回地震予知連絡会が開催された。トピックスとして、「地震予知連絡会が実施してきた地域指定のレビュー」について報告および議論が行われた後、「地震予知連絡会 今後の活動展開の検討ワーキンググループ」の中間報告等があった。次に、全国の地震活動、地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。以下に、その概要について述べる。

1.トピックス「地震予知連絡会が実施してきた地域指定のレビュー」(世話人:島崎副会長)

 様々な視点から地域指定の成果について報告及び議論がなされた。

 地域の選定後に発生したM6.7以上の地震の多くが、特定観測地域や観測強化地域で発生していたことが報告された(事務局資料)。さらに、過去30年のM5以上の常時地震活動と特定観測地域や観測強化地域を比較した結果、活動度の高い地域と特定観測地域や観測強化地域がおおむね一致していたこと等が報告された。

 また、各機関より、地域指定は観測体制の整備や調査研究の推進に大きく貢献したとの報告がなされた。

2.「地震予知連絡会 今後の活動展開の検討ワーキンググループ」の中間報告等

 「地震予知連絡会 今後の活動展開の検討ワーキンググループ」からの中間報告がなされた。その中で示された今後の地域指定についての考え方が了承され、引き続き同ワーキンググループで議論を深めることが了承された。

 また、地震予知連絡会の活動目的について、再確認がなされた。

3.全国の地震活動について

 国内で最近3ヶ月間に発生したM6以上の地震は、8月1日、7日に発生した、沖縄本島北西沖のM6.1、M6.3の地震のみで、全般的に地震活動は低調であった(気象庁資料)。

4.日本列島の歪み変化について

 GPS連続観測データから推定した日本列島の歪み変化図からは、北海道では、2003年9月26日の十勝沖地震の余効変動の影響が見られ、伊豆諸島周辺では、地殻変動に伴う北東―南西の伸びが顕著である。また2007年3月25日の能登半島地震の地殻変動の影響が見られる。また2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震による歪みも顕著である。房総半島では、2007年8月13日〜22日頃に発生した房総半島沖スロースリップの影響が見られる(国土地理院資料)。

5.東海地域の地殻変動について

 東海地方の水準測量結果によると、森町に対して掛川市の水準点140−1や、御前崎市の水準点2595では、前回の観測結果と比較してごくわずかな沈降が見られ、掛川市の水準点140−1に対する御前崎市の水準点2595の動きはごくわずかな隆起が見られた(国土地理院資料)。水準点2595の経年変化の解析において、スロースリップ進行期とその前後の3つの期間に分けて、傾きと年周を推定したところ、傾きがスロースリップ終息後にスロースリップ発生前の値に戻ったこと、及び2007年7月と9月の隆起は、回帰曲線の標準偏差から大きくはずれていないことが示された(国土地理院資料)。

 東海地域のスロースリップの推定モーメントの時間変化を見ると2005年半ば以降、これまでの傾向と異なったものとなっている。これは、季節変動、2007年新潟県中越沖地震による固定点「大潟」への影響、2005年紀伊半島沖地震の余効変動、東海地域のスロースリップの周りでの若干の滑りの進行等により説明されるものと考えられる(国土地理院資料)。

 2007年9月〜10月にかけて、長野県南部〜愛知県西部で低周波微動が発生し、その領域周辺でプレート間滑りが推定された(気象庁資料)。また、この低周波微動に加えて、超低周波地震及びそれらに伴う傾斜変化について報告があり、西南日本の深部低周波微動・超低周波地震、短期的スロースリップは、3回のエピソードからなり、北東から南西に移動しているように見えることが示された。傾斜変動ベクトルから推定された短期的スロースリップは超低周波地震の震央の近くに推定されている。(防災科学技術研究所資料)。

6.東北地方の地震活動の静穏化について

 東北地方の太平洋側で2007年以降、M5以上の地震が全く発生していない状態が継続している。この領域では、これまでも約10年ごとに地震活動が静穏化していた。この領域ではM7クラスの地震がたびたび発生しているが、このうち2例(1968年十勝沖地震と1978年宮城沖地震)では、地震発生の直前に静穏化がみられていた(気象庁資料)。

7.2007年新潟県中越沖地震について

 海陸の臨時地震観測の結果、精度の高い余震分布が明らかになった。震源域の南側においては、南東傾斜の震源分布である。北側においてはその震源分布は複雑であり、南東傾斜の震源分布のほかに、一部に北西傾斜の震源分布がみられた。陸上臨時地震観測の結果からも、上記と同様な結果が得られた(地震研究所資料

 また、3次元地震波速度構造と余震分布から、多くの余震は、基盤岩内の不均質構造に沿って発生しているように見えることが示された(地震研究所資料)。

 「だいち」合成開口レーダーの干渉解析によって新潟県中越沖地震に伴う地殻変動が検出された。その結果、活褶曲の成長を示す西山丘陵の隆起が認められた(国土地理院資料)。

8.「山崎断層帯」「六甲・淡路島断層帯」付近の地震活動の推移について

 「六甲・淡路島断層帯」に沿う領域において、1995年兵庫県南部地震発生前には長期的な地震活動の低下がみられた。「山崎断層帯」に沿う領域において現在似たような状況になっており、20年程度同様な状態が続いている(気象庁資料)。

9.インドネシア・スマトラ南部の地震について

 スマトラ南部で2007年9月12日にM8.4、9月13日にM7.9の地震が発生した。これらの地震は、北東−南西方向に圧縮軸を持つ海溝型地震であった(気象庁資料)。

 この地域では、2004年12月に発生したスマトラ地震M9.0の後、海溝沿い南東方向に2005年3月M8.6、2007年9月M8.5と巨大地震が発生している。これらの地震系列に先行してバックグラウンドの地震活動に変化が見られ、スマトラ地震に向けて全体的に活性化してきたことが報告された。この地震活動が活性化した領域で巨大地震が発生しており、アスペリティ域への応力集中がその原因と考えられる。またパダン沖の空白域とされる場所では、地震活動の活性化が起きており、この活性化が応力集中の進行を意味するならば、近い将来のM8地震の発生が懸念されることが報告された(防災科学技術研究所資料)。

(事務局 国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(2007年5月〜2007年7月)
 1.日本とその周辺
  C 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

 2.北海道地方とその周辺
  C 渡島支庁東部(8月22日M5.4)の地震活動 
  C 北海道東方沖(8月26日M5.4)の地震活動
  C 千島列島(ウルップ島付近)(9月4日M6.3)の地震活動
  C 北海道東方沖(10月9日M5.8)の地震活動 

 3.東北地方とその周辺
  A1 東北地方の地震活動の静穏化

 4.関東・中部地方とその周辺
  C 九十九里浜付近[千葉県東方沖](8月16日M5.3、18日M4.8)の地震活動
  A1 神奈川県西部(10月1日M4.9)の地震活動
  C 新潟県中越地方(10月17日M3.7)の地震活動
  C 新島・神津島近海(10月22日M4.3)の地震活動
  C 松代における地殻変動連続観測
  C 東海地域の低周波地震活動と短期的スロースリップ(2007年8月〜10月)
  C 東海地域の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動

 5.近畿・中国・四国地方とその周辺
  C 島根県東部(10月14日M3.7)の地震活動
  A1 「山崎断層帯」と「六甲・淡路島断層帯」付近の地震活動の推移
  C 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測

 6.沖縄地方とその周辺
  C 沖縄本島北西沖(8月1日M6.1、8月7日 M6.3)の地震活動
  C 沖永良部島付近[沖縄本島近海](8月9日M5.1)の地震活動
  C 宮古島近海(9月22日M5.1)の地震活動
  C 沖縄本島近海(10月17日M5.4)の地震活動

 7.期間外・海外
  C サハリン西方沖[サハリン南部付近](8月2日 M6.4)の地震活動
  C ペルー沿岸(8月16日 M8.0)の地震活動
  C 台湾付近(9月7日 M6.6)の地震活動
  C スマトラ南部(9月12日 Mw8.4)の地震活動
  C マリアナ諸島(9月28日 Mw7.4)の地震活動
  C 千島列島東方(10月25日 Mw6.2)の地震活動
  C 大阪府−奈良県境[奈良県](11月6日 M4.1)の地震活動
  C チリ北部(11月15日 Mw7.7)の地震活動

[参考資料] 
  A1 活断層付近の地震活動

【2】国土地理院
 1. 日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間および3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間、3ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪み変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点2595(御前崎市)の経年変化
  A2 水準点(140−1、2595)の経年変化
  A2 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  C 1979年を基準とした静岡〜浜松間の水準点の経年変化
  A2 菊川市付近の水準測量結果
  C 水準点の比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 御前崎周辺
  C GPS連続観測による基線長・比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測および水準測量による比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測による御前崎の上下変動
  C 御前崎地区高精度比高連続観測結果
  C 御前崎長距離水管傾斜計月平均
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計による傾斜変化(日平均、時間平均)
  C 御前崎地中地殻活動観測装置観測結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊豆半島および伊豆諸島の地殻水平・上下変動図
  C GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区
  C 伊豆半島東部測距連続観測結果
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区
  C 伊豆大島の地殻水平・上下変動図(火山統合解析)

 4.関東・甲信地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 館山地殻活動観測場
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  C 房総半島沖スロースリップ
  C 2007年9月・10月長野県南部−愛知県東部の低周波地震活動前後の地殻変動
  C 神奈川県西部の地震(2007.10.1)に伴う地殻変動

 5.北海道地方の地殻変動
  C 北海道の地殻水平変動図(最近3ヶ月、1ヶ月)
  C GPS連続観測結果 北海道太平洋岸
  C 基線ベクトル成分の変位量と変化率
  C 2004年釧路沖の地震以降の累積推定すべり分布
  C 樽前山の上下変動(火山変動測量)

 6.東北地方の地殻変動
  C 利府町〜石巻市間の上下変動
  C GPS連続観測結果 東北地方太平洋岸
  C GPS機動観測結果 牡鹿地区

7.北陸・中部地方の地殻変動
 能登半島地震(2007.3.25)に伴う地殻変動
  C 高度基準点測量
  C 能登半島地震後のSAR干渉画像

 新潟中越沖地震(2007.7.16)に伴う地殻変動
  C 上越市〜燕市間の上下変動
  C 柏崎市〜川口町、小千谷市間の上下変動
  A2 水準測量結果の解釈
  C 地震後の地殻変動ベクトル図
  C GPS連続観測結果 柏崎地区(短期・長期)
  C 柏崎周辺の地震後のGPS観測結果
  A2 SAR解析結果
  A2 震源断層モデル
  C 海成段丘にみる長期的地殻変動(2)
  A2 新潟県中越地震後の地殻変動

8.中国・四国地方の地殻変動
  C 宿毛市〜今治市間の上下変動
  C 今治市〜善通寺市間の上下変動
  C 善通寺市〜阿南市間の上下変動
  C 宿毛市〜四万十市間の上下変動
  C 四万十市〜高知市間の上下変動
  C 高知市〜阿南市間の上下変動
  C 高知市〜善通寺市間の上下変動
  C 四国地方の上下変動

 9.その他
  C GPS連続観測結果 硫黄島地区
  C GPS繰り返し観測 硫黄島
  C SAR解析結果 硫黄島

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の地震活動
  B 2007年8月2日に発生したサハリン南西部の地震(M6.4)の地震活動
  B 2007年サハリン南西部の地震(M6.4)による地殻変動

【4】東京大学地震研究所
  A3 海底地震計を用いた2007年(平成19年)中越沖地震の余震分布
  C 日光・足尾付近の地震活動(2007年8月〜2007年10月)
  C 房総半島付近の地震活動
  C 油壷観測坑における地殻変動連続観測

【5】京都大学防災研究所
  C 近畿北部の地殻活動
  C 地殻活動総合観測線観測結果
  C 紀伊半島下のフィリピン海プレートとその周辺の不連続面構造について
  C 11月6日大阪・奈良県境付近の地震について

【6】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2007年8月〜2007年10月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2007年8月〜2007年10月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測                   (2006年2月〜2007年11月)
  B 宮城県沖の地震活動パタン変化
  B 地震活動変化による房総沖スロースリップ域の推定
  B スマトラ地震系列に先行する地震活動変化
  B 糸魚川−静岡構造線周辺域の地震活動
  B 2007年10月1日神奈川県西部の地震活動 (Mj4.9)
  B 2007年9月21日静岡県南西部の地震‐DD法による震源決定結果‐
  B 2007年11月6日大阪府・奈良県境付近の地震
  B 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況(2007年8〜10月)

【7】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2007年8月〜2007年10月)
  C 神奈川県西部地域の地下水位観測(2007年8月〜2007年10月)
                     −神奈川県温泉地学研究所・産総研−
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2007年8月〜2007年10月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2007年8月〜2007年10月)
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2007年8月〜2007年10月)
                     −鳥取大学工学部・京大防災研・産総研−

【8】海上保安庁
  C GPSによる地殻変動監視観測
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)各地域についての詳細検討(新潟県中越沖地震を除く)
(A4)平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の詳細検討
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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