地震予知連絡会の活動報告

第165回地震予知連絡会(2005年8月22日) 議事概要

 平成17年8月22日、国土地理院関東地方測量部において第165回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、千葉県北西部で2005年7月23日にM6の地震が発生した他、房総沖の三重会合点付近でM5以上の地震が8回発生した。また8月16日にはM7.2の地震が宮城県沖の太平洋プレートと陸側プレート間で発生した。(気象庁資料)

2.千葉県北西部の地震

 2005年7月23日に千葉県北西部の深さ73kmでM6.0の地震が発生した。太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界付近で発生した地震と考えられる。今回の地震の震源付近にはクラスタ状の活発な地震活動域がある。1928年以降6回のM6クラスの地震の震度分布、及び地震波形を比較すると、1928、1956、1980,2005年の地震はよく似ている事が指摘された。(気象庁資料

3.東海地域の地殻活動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町〜掛川〜御前崎間では前回の観測結果と比較して御前崎側で沈降が見られる。掛川市の水準点140-1に対する御前崎市の水準点2595の動きは、今までのトレンド上にのり、基本的な傾向は今までと変わらない。(国土地理院資料)東海地域の非定常地殻変動(スロースリップ)は依然として継続している。2004年以降、平均的な変動からのずれの水平成分の内、若干停滞していた東西成分も、緩やかに以前のトレンドに戻りつつあるように見える、南北成分は今までとおりの変化速度で推移している。(国土地理院資料

4.東海地方の短期的なスロースリップ

 2005年7月に東海地方で、低周波地震が活発化し、それとほぼ同じ時期に気象庁の体積歪計から歪み変化が検出された。歪み変化が落ち着いた後は、低周波地震の発生数も少なくなっている。観測された歪み変化がプレート間のゆっくり滑りによるものと考えモデルを推定すると、低周波地震の発生領域とほぼ同じ場所にプレート間滑りの領域が推定された。(気象庁資料)低周波地震の活動が活発化した時期は過去にもあり、その時にも、同じようなプレート間滑りが起きていた可能性が指摘された。(気象庁資料)防災科学技術研究所も、傾斜計の変化から2004年12月と2005年7月に短期的なスロースリップイベントが発生していた事を報告した。(防災科学技術研究所資料

5.北海道地方の地殻変動及び地震活動

 2004年の釧路沖の地震から現在までのプレート間滑りをGPSの観測結果から推定した結果と、プレート境界上の地震分布の活動度変化から北海道根室沖付近まで余効的なプレート間滑りが発生している可能性が指摘された。(国土地理院資料

6.宮城県沖の地震

 2005年8月16日に宮城県沖においてM7.2の地震が発生した。発震機構は西北西―東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で太平洋プレートと陸のプレート境界で発生した地震と考えられる。またこの地域では過去に繰り返しM7.4クラスの地震が発生している。(気象庁資料)震源域付近のGPS観測点は、地震時に東へ数センチメートル程変動した。(国土地理院資料)地殻変動のデータには、現在のところ、誤差を超える余効変動は見られない。(国土地理院資料) 2005年8月16日の宮城県沖の地震の破壊域と地殻構造の関係から、破壊域が太平洋プレートの沈み込み角度が急変する西側、太平洋プレートと島弧マントルが接する場所で発生している事が指摘された。また、破壊域周辺の太平洋プレート沈み込み角度は25度前後、破壊域周辺でのプレート境界面の深さは30−35kmといった特徴が報告された。(海洋研究開発機構資料

 地震波から推定された2005年宮城県沖の地震のプレート間滑り領域の破壊開始点は1978年の地震の破壊開始点と隣接している。ただし、1978年の地震は破壊が北側に広がっていき、2005年の地震は規模が小さくどちらかというと南西方向に広がっている。(東京大学地震研究所資料)この地域では1936年にM7.4の地震が1978年の地震の南側で発生しているが、2005年の地震が1936年と同じアスペリテイであったかどうかは今後の検討が必要と考えられる。(東京大学地震研究所資料、東北大学資料) 相似地震により推定された準静的プレート間滑りの時間変化からは、2005年の地震前に特にプレート間滑りが変化していないように思われる。(東北大学資料) また、津波の波源域を1978年の地震と2005年の地震で比較すると、1978年の波源域の中に2005年の地震の波源域が推定された。(気象庁資料

 1936,37年の宮城県沖の地震と1978年宮城県沖地震との再決定された余震分布からは、1936年、1937年の余震域が1978年の余震域をカバーするようにも見える事が報告された。(東北大学資料

 議論の最後に、岡田副会長は、2005年宮城県沖の地震のまとめとして、(1)プレート間地震であった、(2)1978年のアスペリテイの一部が破壊した、(3)破壊開始点で大きな滑りがあった、(4)余効変動が現在のところ見えていない、(5)地震の前兆は今のところ見つかっていない、とポイントを挙げた。また、余震分布の把握並びに、地殻変動及び相似地震の観測による、余効変動の推移の把握が重要であるとの指摘がなされた。さらにインターサイスミックの期間で推定される滑り欠損と今回の地震との定量的な関係を今後みていく必要があると指摘があった。

 (事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁 (2005年5月〜2005年7月)
 1.日本とその周辺
  C 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

 2.北海道地方とその周辺
  C 釧路沖(5月19日M4.8)の地震活動

 3.東北地方とその周辺
  C 三陸沖(7月2日M5.5)の地震活動
  C 宮城県沖(5月21日M5.1)の地震活動
  C 宮城県北部(5月27日 M4.9)の地震活動
  C 秋田県内陸南部(6月2日M4.0)の地震活動

 4.関東・中部地方とその周辺
  C 茨城県南部(7月28日M5.0)の地震活動
  C 栃木県南部(5月8日 M4.5、5月15日 M4.8)の地震活動
  C 千葉県北東部(6月20日 M5.6)の地震活動
  A1 千葉県北西部(7月23日M6.0)の地震活動
  C 東京湾(6月1日 M4.1、M4.1、M4.3)の地震活動
  C 南関東地域における2005年4月以降の地震活動(M4.0以上)
  C 八丈島東方沖(7月10日M5.8)の地震活動
  C 八丈島東方沖(7月26日頃〜、最大 M5.5)の地震活動
  C 新潟県中越地方(6月20日 M5.0)の地震活動
  C 平成16年(2004年)新潟県中越地震の余震活動
  C 山梨県中西部(5月11日 M4.0)の地震活動
  C 山梨県東部(7月31日M4.4)の地震活動
  C 岐阜県美濃中西部(6月20日 M4.6)の地震活動
  C 東海地域の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動
  A1 2005年7月20日からの愛知県東部と静岡県西部で観測された歪み変化について

 5.近畿・中国・四国地方とその周辺
  C 徳島県北部(5月27日 M4.7)の地震活動
  C 豊後水道(5月25日、M4.6)の地震活動

 6.九州地方とその周辺
  C 福岡県西方沖の地震活動(余震活動)
  C 熊本県天草芦北地方(6月3日M4.8)の地震活動
  C 日向灘(5月31日 M5.8)の地震活動

 7.期間外・海外
  C 茨城県沖(8月8日M5.6)の地震活動
  C 十勝支庁南部(8月16日 M4.6)の地震活動
  C 新潟県中越地方(8月21日 M5.0)の地震活動
  A1 2005年8月16日宮城県沖の地震(別資料)

【2】国土地理院
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間・3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間及び3ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点(140−1、2595)の経年変化
  A2 静岡〜掛川、三ヶ日〜掛川、相良〜藤枝、舞阪〜御前崎間の上下変動
  C 御前崎地方、渥美半島の上下変動
  C 御前崎〜掛川〜静岡、舞阪〜御前崎〜静岡、舞阪〜掛川〜静岡、
    三ヶ日〜掛川〜静岡、名古屋〜掛川〜静岡、掛川〜御前崎間の上下変動
  C 東海地方の上下変動
  C 1901、1950、1977年を基準とした東海地方各水準点の経年変化
  A2 水準点2602−1(菊川町)と10333(大東町)及び2601(小笠町)
    の経年変化
  A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値)
  C 水準点の比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動 
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
  C GPS連続観測および水準測量による比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 水準測量による取付観測と電子基準点の比高変化
  C GPS連続観測結果 愛知・静岡周辺
  C 愛知県中部の断層パラメータ
  C GPS連続観測結果 愛知県中部
  C 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 水準測量による取付観測と高精度比高観測点の比高変化
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計月平均・日平均・時間平均
  C 地中地殻活動観測装置観測結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊豆半島東部測距連続観測
  C GPS連続観測結果 伊豆半島東部・伊豆諸島地区

 4.関東地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  A2 GPS連続観測結果 房総半島
  C GPS連続観測結果 千葉県北西部周辺
  C 2期間の地殻変動水平ベクトルの差(3ヶ月、1ヶ月)
  C 傾斜・年周・半年周補正による地殻変動監視

 5.北海道地方の地殻変動
  A2 GPS連続観測結果 十勝沖周辺
  A2 十勝沖地震に伴う地殻変動
  A2 北海道千島海溝沿いの推定すべり分布
  C GPS連続観測結果 留萌支庁南部周辺
  C 干渉SARで捉えられた屈斜路湖東岸の火山性地殻変動

 6.東北地方の地殻変動
  A2 2005年8月16日宮城県沖の地震による地殻変動

 7.北陸地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 中越地方
  C 中越地震の断層モデル
  C 長岡における絶対重力測定

 8.近畿地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 丹波山地周辺

 9.四国・九州地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 福岡県西方沖周辺
  C 福岡県西方沖の水平変動図

 10.その他
  B 傾斜・年周・半年周補正による地殻変動監視

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の地震活動
  C 2003年十勝沖地震(M8.0)後の地殻変動
  C 北海道周辺の太平洋プレート内部の地震活動度のモニタリング
  C 臨時に実施した2002年と2003年の十勝沖海底地震観測報告
  A4 津波波形解析による2005年8月16日宮城県沖地震のすべり量分布
  C 1978年と2005年の宮城県沖地震の規模の差―えりもで見た歪地震動の比較

【4】東北大学
  A4 2005年8月16日宮城県沖地震(M7.2)の活動特性
    −震源域周辺の地殻・マントル構造,本震・余震の分布と過去の宮城県沖地震との
     比較,及び震源域周辺のプレート間すべりの時空間発展−

【5】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について
        【6】東京大学地震研究所
  C 御前崎における絶対重力変化
  C 豊橋における絶対重力変化
  C 中越地震震源域の西方で発生したM5.0の地震
  C 日光・足尾付近の地震活動(2005年5月〜2005年7月)
  C 2005年7月23日千葉県北西部の地震の震源メカニズムと強震動
  C 鋸山観測坑における地殻変動連続観測(2002年1月〜2005年7月)
  C 精密弾性波連続観測
  C 紀伊半島及びその周辺の地震活動(2005年5月〜2005年7月)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2005年5月〜2005年7月)
  A4 博多湾警固断層の地震履歴
  C ケーブル式海底津波計で捉えた8月16日の宮城県沖の地震(M7.2)
  C 宮城県沖地震想定震源域付近の海陸合同地震波構造探査
  A4 2005年宮城沖地震の震源過程
  C 2005年8月16日宮城県沖の地震の震源メカニズムと強震動

【7】名古屋大学
  C 東海地方における地殻変動連続観測
  B 核燃料サイクル開発機構の縦坑掘削工事に伴う地殻変動−瑞浪観測点−
  C 2005年7月20〜23日の深部低周波微動前後の地殻変動
  C 深部ボアホール歪観測によるスマトラ地震 ‐東濃地震科学研究所 名古屋大学‐

【8】京都大学防災研究所
  B 福岡県西方沖地震の余震の応力降下量分布
  B GPS連続観測で得られたスマトラ地震に伴う地殻変動
  C 近畿地方の地殻活動

【9】九州大学理学研究院
  C 九州の地震活動(2005年5月〜7月)
  C 九州南部の地震活動(2005年2月〜4月) −鹿児島大理学部−

【10】統計数理研究所
  B 近年の余震活動と常時地震活動について
  A4 宮城県沖の地震と東北地方の地震活動について

【11】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2005年5月〜7月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2005年5月〜7月
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測                  (2003年11月〜2005年8月)
  C 三重会合点南方の海溝軸海側で発生した群発地震のCMT解
  A4 茨城県つくば市南部の群発地震活動
  A4 2005年6月1日の東京湾における地震活動
  A4 2005年7月23日千葉県北西部の地震
  A4 東海地域における短期的スロースリップイベントと深部低周波微動
  A4 2005年8月16日宮城県沖の地震
  A4 2005年8月16日宮城県沖の地震前の傾斜記録

【12】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2005年5月〜2005年7月)
  A4 2005年7月20日から23日にかけての東海地方の低周波地震活動に関連する地殻変動
    の検出
  B 神奈川県西部地域の地下水位観測 −神奈川県温泉地学研究所・産総研−
  C 岐阜県東部の活断層周辺おける地殻活動観測結果(2005年5月〜2005年7月)
  C 有馬−高槻−六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2005年5月〜2005年7月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2005年5月〜2005年7月)
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2005 年5月〜2005年7月)
                     −鳥取大学工学部・京大防災研・産総研−
  B 産総研のボアホール歪計による1996−2005年の近畿地方の地殻歪観測結果

【13】海洋情報部
  C GPSによる地殻変動監視観測
  A4 宮城県沖の地震の震央周辺のい海底地形
  A4 宮城県沖の地震の震央周辺の海底音響画像とシングルチャンネル反射法探査記録
  A4 宮城県沖の地震による潮位変化について
  A4 宮城県沖海底基準点における海底地殻変動観測
  A4 宮城県沖の地震によるGPS局の地殻変動について

【14】海洋研究開発機構
  A4 2005年8月16日に発生した宮城県沖地震震源域周辺の地殻構造

【15】大竹政和
  A4 宮城県沖の大地震発生系列に見られる時空間的特徴
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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