地震予知連絡会の活動報告

第195回地震予知連絡会(2012年5月30日) 議事概要

 平成24年5月30日(水)、国土地理院関東地方測量部において第195回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動などのモニタリングについての報告が行われ、続いて重点検討課題として「プレート境界に関するわれわれのイメージは正しいか?(その3) 相模トラフ周辺・首都圏直下」に関する報告・議論が行われた。最後に次回の重点検討課題「内陸で発生する地震について」に関する趣旨説明等が行われた。以下に、その概要について述べる。

「地殻活動のモニタリングに関する検討」資料説明映像(35MB,約14分)
「重点検討課題に関する検討」資料説明映像     (68MB,約36分)
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 説明資料(PDF:9MB)

1.委員の交代について

1.1 委員交代

 海洋研究開発機構  金田 義行委員 が 堀 高峰委員 に交代した。

2.地殻活動モニタリングに関する検討

2.1 地殻活動の概況

(1)全国の地震活動について

 国内で2012年2月から4月までの3ヶ月間に発生したM5以上の地震は58個であった。M6以上の地震は8個、M7以上はなかった(気象庁資料)。

(2)日本列島の歪み変化

 GNSS連続観測データによる最近1年間の日本列島の歪み図では、東北地方太平洋沖地震の余効変動の影響が顕著に見られる(国土地理院資料)。

(3)日本周辺における浅部超低周波地震活動

 2月13日に福島県沖で超低周波地震があった。3月14日に発生したM6.9の地震の後、3月20日頃にかけて十勝沖でやや活発な超低周波地震活動があった。4月12日から19日頃に、日向灘で小規模な超低周波地震活動があった(防災科学技術研究所資料)。

(4)日本の中・長期の地震確率予測

 東北地方太平洋沖地震の発生前および発生後における深さ100 km 以浅の地震の中・長期発生確率が報告された(統計数理研究所資料)。

2.2 東北地方太平洋沖地震関連

 過去3ヶ月間の水平変動では、東北地方太平洋沖地震後の東向きの余効変動が見られる(国土地理院資料)。
 上下変動では、太平洋沿岸の一部観測点で隆起傾向が見られるが、隆起速度は小さくなってきている(国土地理院資料)。
 水平歪みの図では、東北地方太平洋沖地震後の余効変動の影響が見られる(国土地理院資料)。
 地殻変動の時系列データの図では、対数関数により観測データがよく説明されていることが示された(国土地理院資料)。
 余効変動から推定した太平洋プレート上面の滑りでは、滑り域の顕著な移動は見られず、地震モーメントの解放が時間と共に小さくなっていることが示された(国土地理院資料)。

2.3 プレート境界の固着状態とその変化

(1)南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
 やや活発な微動活動が、3月23日から28日に東海で、4月14日から16日に紀伊半島北部で、2月6日から11日に紀伊半島中部で、2月1日から8日に四国東部で、3月10日から14日に四国中部でみられた(防災科学研究所資料)。

3.重点検討課題「プレート境界に関するわれわれのイメージは正しいか?(その3) 相模トラフ周辺・首都圏直下」の検討

 関東地方の今後の短中期的な大地震発生の可能性、首都直下大地震や相模トラフ沿いの巨大地震の規模と繰り返しについて議論が行われた。これらに関して、2部に分けて検討が行われた。

◆第1部 東北地方太平洋沖地震後の関東の地震活動と地殻変動

 太平洋プレート、フィリピン海プレート、陸のプレートが互いに接する境界付近で地震活動が活発化した領域が見られる一方、太平洋プレート内の二重地震面の下面では活発化が見られないことが報告された。福島県浜通りから茨城県北部・銚子付近などでは地殻内での地震活動が活発化していることが示された(気象庁・斎藤誠地震情報企画官資料)。
 相似地震の発震機構解は、東北地方太平洋沖地震前と同様にプレート境界の滑りと調和的な低角逆断層であることが報告された。相似地震発生の繰り返し間隔は、東北地方太平洋沖地震以前より短くなったことが示された(防災科学技術研究所・木村尚紀主任研究員資料)。
 海底地震計の観測から、茨城県沖では陸側プレート内にも活発な余震活動が見られること、余震分布の南限は太平洋プレートとフィリピン海プレートが接する領域と一致していることなどが報告された(東京大学・篠原雅尚教授資料)。
 GEONETデータの解析から、関東地方の余効変動は広い領域にわたって隆起を伴った東方向への変位を示し、太平洋プレート上面の滑りでほぼ説明可能であることが報告された。ただし太平洋プレート単独のモデルより、フィリピン海プレートを組み込んだモデルの方が統計的により良いことが示された(国土地理院・小沢慎三郎主任研究官資料)。
 東北地方太平洋沖地震による静的応力変化と一般的な摩擦構成則パラメータ値から、関東地方の地震発生数の時間推移を再現できることが示された。首都直下におけるM7以上の地震発生確率の算定は、地震サイズ分布を制御するb値の見積もりが大きく影響し、推定される確率値には大きな幅があることがわかった(京都大学・遠田晋次准教授資料)。

◆第2部 地震テクトニクス,古地震学的研究レビュー

 1921年茨城県南部の地震(M7.1)、1987年千葉県東方沖地震(M6.7)は、フィリピン海プレート東端部にある蛇紋岩化域の西縁で発生したことが示された。1923年関東地震前後のM7クラスの地震の続発は、フィリピン海プレートと蛇紋岩化域西縁での相互作用により定性的に説明できることが紹介された(東北大学・中島淳一准教授資料)。
 トモグラフィ解析による速度構造と反射法地震探査などからフィリピン海プレート上面の等深度分布が得られ、東京湾周辺では、従来考えられていた上面より約10km程度浅いことなどがわかった(東京大学・酒井慎一准教授資料)。
 GEONETを用いた地震間地殻変動解析によると、三浦半島沖から房総半島東方沖まで強いプレート間固着が推定される一方、東京湾北部の固着は弱いことが報告された。房総スロースリップ領域の南半分は固着しており、歪みを蓄積中であることが示された(国土地理院・西村卓也主任研究官資料)。
 震源メカニズム解を利用した震源深さの推定から、1921年茨城県南部の地震や1922年浦賀水道付近の地震などはプレート境界面ではなくフィリピン海プレート内部で発生したことが示された。1894年明治東京地震の波形記録から読み取ったS-P時間をもとに震源位置の推定が試みられた(東京大学・石辺岳男研究員資料)。
 房総半島から三浦半島にかけて見つかっている津波堆積物について報告がなされた。歴史記録と照合すると地震の再来間隔が220〜415年と見積もられることが示された(産業技術総合研究所・藤原治主任研究員資料)。
 房総半島の海岸段丘の調査などから、相模湾を震源域とする大正型の地震は平均400年、大正型震源域に加えて房総半島東方沖までを震源域とする元禄型は平均2300年の再来間隔で発生してきたことが報告された。また元禄型地震の破壊域の東側では、地形・地質データから推定される地震時滑り量と測地データから推定される滑り欠損量の収支に食い違いがあることが示され、外房沖の断層のみで発生する地震のタイプが提案された(産業技術総合研究所・宍倉正展研究チーム長資料)。

4.次回(第196回)重点検討課題「内陸で発生する地震について」の趣旨説明

    

 西日本の活断層で発生する地震を中心に検討が行われる。南海トラフの巨大地震と関連した内陸の地震活動のレビューをしたのち、近畿地方の現在の地震テクトニクスを地史から理解することを主な目的として、招待講演と、これに関連した討議を行う。これに加え、沿岸海域の活断層、短い活断層、東北地方太平洋沖地震の誘発地震である福島県浜通りの地震なども課題として取り上げ、検討が行われる予定である(趣旨説明資料)。

各機関からの提出議題

《地殻活動モニタリングに関する検討》

【1】気 象 庁
1.地殻活動の概況
 a.地震活動
  O 全国M5.0以上の地震と主な地震の発震機構
  S 東海地域の地震活動

2.東北地方太平洋沖地震関連
  S 東北地方太平洋沖地震余震域の地震活動 
  S 福島県浜通りから茨城県北部の地震活動 
  S 福島県沖から茨城県沖の地震活動	 
  S 福島県会津から山形県置賜地方の地震活動

3.プレート境界の固着状態とその変化
 a.日本海溝・千島海溝周辺
  S 福島県沖の地震(2月29日 M5.4)	
  S 岩手県沖の地震(3月5日 M5.1)		  	
  S 青森県東方沖の地震(3月19日 M5.0、4月27日 M5.0) 	
  S 福島県沖の地震(3月30日 M5.1)	 	 	
  S 福島県沖の地震(4月1日 M5.9)		 	 	
  S 宮城県沖の地震(5月6日 M5.2)※期間外 	 	
  S 三陸沖の地震活動(5月19日頃から 最大M6.5)※期間外  	
  S 茨城県沖の地震(3月1日 M5.3)			 	
 b.相模トラフ周辺・首都圏直下
  S 千葉県北西部の地震(2月11日 M4.7) 	 	
  S 茨城県沖の地震活動(2月14日 最大M6.0) 	
  S 埼玉県南部の地震(3月16日 M5.3) 	 	
  S 千葉県北東部の地震(4月25日 M5.5、4月29日 M5.8) 	
  S 東海・南関東地方の地殻変動(3cを含む)
 d.その他
  S 海溝と直交する方向の全国の基線長変化 		  	
  S メキシコ、ゲレロ州の地震(3月21日 Mw7.4)	 	
  S チリ中部沿岸の地震(3月26日 Mw7.1)		 	
  S メキシコ、ミチョアカン州の地震(4月12日 M6.7)	 	
  S メキシコ、バハカリフォリニア州の地震(4月12日 Mw7.0) 	

4.その他の地殻活動等
  S 日高地方西部の地震(4月21日 M4.5)	 		
  S 根室地方南部の地震(5月4日 M4.5)※期間外		
  O 三陸沖の地震(3月14日 M6.9)	 		 	
  S 岩手県沖の地震(3月18日 M5.0)	 	 	
  S 福島県沖の地震(3月25日 M5.2)	 	 	
  S 岩手県沖の地震(3月27日 M6.6、4月30日 M5.6、5月10日 M5.1) 	
  S 福島県沖の地震(4月12日 M5.9)	 	 	
  S 佐渡付近の地震(2月8日 M5.7)			 	
  S 長野県北部の地震(2月14日 M3.6)		 	
  S 東京湾の地震(2月18日 M4.2)			 	
  S 小笠原諸島西方沖の地震(2月29日 M6.0)		
  S 千葉県東方沖の地震(2月29日 M5.9) 		 	
  S 千葉県東方沖の地震(3月14日 M6.1) 		 	
  S 松代における地殻変動連続観測 			 	
  S 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測		
  S 熊本県熊本地方の地震(3月12日 M3.9)		 	
  S 沖縄本島近海の地震(2月28日 M5.6)		 	
  S 台湾付近の地震(2月26日 M6.2)		 	
  S フィリピン諸島の地震(2月6日 Mw6.7)		 	
  S バヌアツ諸島の地震(3月9日 Mw6.7)			 	
  O インドネシア、スマトラ北部西方沖の地震(4月11日 Mw8.6) 	
  S パプアニューギニア、ニューギニア東部の地震(4月17日 Mw6.8)
	 	
【2】国土地理院
1.地殻活動の概況
 b.地殻変動
  O GEONETによる全国の地殻水平変動
  O GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差
  O GNSS連続観測から推定した日本列島の歪み変化
  O 加藤&津村の解析方法による、各験潮場の上下変動
  O 各験潮場間の月平均潮位差とGNSS観測結果の比較

2.東北地方太平洋沖地震関連
  O 東北地方の上下変動(2000年平均成果-2011年度網平均結果)
  O 東北地方太平洋岸 GNSS連続観測時系列
  O 対数関数近似
  O 東北地方太平洋沖地震後の地殻変動ベクトル
  O 基線ベクトルの成分変位と速度グラフ
  O 東北地方太平洋沖地震のプレート境界面上の滑り分布モデル一覧
  O 矢吹&松浦 Q3【モデル1】
  O 時間依存 F3【モデル2】

3.プレート境界の固着状態とその変化
 a.日本海溝・千島海溝周辺
  S 北海道太平洋岸 GNSS連続観測時系列
  S 北海道の地殻変動(猿払固定)
 b.相模トラフ周辺・首都圏直下
  O 3/14千葉県東方沖の地震
  S 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  S 伊豆半島および伊豆諸島の地殻水平・上下変動図
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
  S 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  O 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  O 水準点2595(御前崎市)の経年変化
  O 水準点(140-1,2595)の経年変化
  O 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  O 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS観測の比較
  O 高精度比高観測点の上下変動 水準測量とGNSS観測の比較
  O 御前崎地区高精度比高連続観測
  O 菊川市付近の水準測量結果
  S 御前崎周辺 GNSS連続観測時系列
  S 駿河湾周辺 GNSS連続観測時系列
  S 御前崎長距離水管傾斜計月平均
  S 御前崎・切山長距離水管傾斜計による傾斜変化
  S 御前崎地中地殻活動観測装置観測
  S 東海地方の最近の地殻変動

4.その他の地殻活動等
  S 高度地域基準点測量による水平歪み(東北)
  S 高度地域基準点測量による水平歪み(関東甲信)
  S 伊豆半島東部地区 GNSS連続観測時系列
  S 伊豆諸島地区 GNSS連続観測時系列
  S 高度地域基準点測量による水平歪み(北陸)
  S 阿波池田地区 精密辺長測量結果
  S 硫黄島キャンペーン観測結果
  S VLBI観測結果
  S GEONETの名称変更について

【3】北海道大学

【4】東北大学

【5】東京大学地震研究所

【6】東京工業大学

【7】名古屋大学
2.東北地方太平洋沖地震関連
  S 東北地方の地殻水平歪みの再検討 −基線測量に起因するスケール誤差の可能性−
  S 東北日本太平洋沖地震による中部日本の地震活動変化(その2)

3.プレート境界の固着状態とその変化
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
  O 熊野灘および駿河湾での海底地殻変動観測結果にもとづくプレート境界の固着状態

【8】京都大学防災研究所
4.その他の地殻活動等
  S 近畿地方北部の地殻活動
  S 地殻活動総合観測線の観測結果

【9】九州大学

【10】鹿児島大学

【11】統計数理研究所
2.東北地方太平洋沖地震関連
  O 東北地方太平洋沖地震によって誘発された日本列島の時空間中・長期確率予測
  S 東北沖M9地震の余震活動モニタリング

【12】防災科学技術研究所
3.プレート境界の固着状態とその変化
 a.日本海溝・千島海溝周辺
  O 日本周辺における浅部超低周波地震活動(3cを含む)
 b.相模トラフ周辺・首都圏直下
  S 関東地方のGEONET観測網による地殻変動観測
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
  O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
  S 関東・東海地域における最近の傾斜変動
  S 伊豆地方・駿河湾西岸域の国土地理院・防災科研のGNSS観測網による地殻変動の観測

4.その他の地殻活動等
  S 2012年2月18日千葉県中部の浅発地震
  S 2012年3月14日銚子付近の地震
  S 2012年3月16日埼玉県東部の地震

【13】産業技術総合研究所
3.プレート境界の固着状態とその変化
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
  S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2012年2月-2012年4月)
  S 紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2012年2月-2012年4月)

4.その他の地殻活動等
  S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2012年2月-2012年4月)
  -- 神奈川県温泉地学研究所・産総研
  S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2012年2月-2012年4月) 
  S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2012年2月-2012年4月)
  S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2012年2月-2012年4月)
  --鳥取大学工学部・産総研

【14】海上保安庁
1.地殻活動の概況
 b.地殻変動
  S GPSによる地殻変動監視観測

記載分類は以下のとおりとなっています。
1.地殻活動の概況
 a.地震活動
 b.地殻変動
2.東北地方太平洋沖地震関連
3.プレート境界の固着状態とその変化
 a.日本海溝・千島海溝周辺
 b.相模トラフ周辺・首都圏直下
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 d.その他
4.その他の地殻活動等

・口頭報告(O)
・資料提出のみ(S)

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