地震予知連絡会の活動報告

第169回地震予知連絡会(2006年8月21日) 議事概要

 平成18年8月21日、国土地理院関東地方測量部において第169回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。トピックスとして、「沈み込み帯における非地震性すべり(1)東海スロースリップ」について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、特に目立つ活動はない。M6以上では、6月12日の大分県中部でM6.2の地震が発生し、西日本の広い範囲で震度5弱を観測した。国外では7月28日に台湾付近でM6.2の地震が発生した。(気象庁資料)

2.日本列島の歪変化について

 GPS連続観測データから推定した日本列島の歪変化は北海道地方で2003年十勝沖地震、2004年釧路沖地震に関連する余効的な地殻変動の影響による歪変化がみられる。宮城県地域では、2005年8月16日の宮城県沖の地震(M7.2)による歪みが見られる。また、伊豆諸島周辺の地殻活動に伴う、北東―南西方向の伸びが依然として顕著である。(国土地理院資料

3.東海地域の地殻活動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町〜掛川〜御前崎間では前回の観測結果と比較してほとんど変化は見られない(国土地理院資料)。掛川市の水準点140-1に対する御前崎市の水準点2595の動きは、長期的な沈下の傾向が続いている。網平均結果では前年度と比較して沈下速度が低下したように見えるが、前年度まではスロースリップにより掛川が隆起域に入り、掛川側から見て御前崎側の沈下量が増加して見えるためである(国土地理院資料)。定常時とスロースリップ発生時の水準測量結果を比較すると、御前崎付近の沈下は両者で共通しているが、スロースリップ発生時には浜名湖付近の隆起が目立つ(国土地理院資料)。東海地域の非定常地殻変動(スロースリップ)は2006年7月までで最大で水平、上下共6cm程の変動が観測されているが、トレンドを除いた時系列データを見ると、2005年中頃から非定常変動がほぼ停止しているように見える(国土地理院資料)。非定常すべり分布の推定結果を見ると、2005年中頃からはすべりがほとんど見られない(国土地理院資料)。スロースリップ進行中と停滞後の固着域周辺の地震活動を比較した。スロースリップ発生中は、プレート内で活発であったが、地殻内では静穏な状態である。スロースリップ停滞後、プレート内で静穏化する一方、地殻内では活発化している(気象庁資料)。深部低周波微動活動では、2006年6月に三重県内で南西方向へ微動活動の中心の移動が見られた。傾斜変化から低周波微動に伴う短期的スロースリップの断層モデルが推定され、Mw5.8程度のモーメントが解放されたと考えられる(防災科学技術研究所資料)。

4.宮城県沖の地震活動

 2005年8月16日のM7.2の地震の余震域で7月1日にM5.3の地震が発生したものの、地震活動に特段の変化は見られなかった(気象庁資料)。

5.トピックス「沈み込み帯における非地震性すべり(1)東海スロースリップ」

 地殻変動や地震活動、シミュレーション研究による東海スロースリップについての検討結果が報告された。

 GPS観測から見た東海スロースリップに関して報告があり、プレート境界面上のひずみの解放様式から見ると、地震、長期的スロースリップ、短期的スロースリップ、定常すべりの領域がそれぞれ棲み分けをしているのではないかという仮説が提唱された(国土地理院資料)。また、2006年以降からスロースリップのすべり領域が、南西の渥美、知多、志摩半島付近に移動している可能性が指摘された(国土地理院資料)。地震活動から見た東海地域のプレート間アスペリティ領域について報告があり、固着域の中に大まかに3つほどのアスペリティが存在していると考えられることが報告された。その結果に基づき、地震性すべりの領域、長期的スロースリップ、短期的スロースリップの領域がそれぞれ棲み分けているという東海の階層的な固着構造の仮説が提唱された(防災科学技術研究所)。摩擦構成則及びプレートの形状を考慮したシミュレーション結果について報告があり、スロースリップがプレートの傾斜が小さい領域で発生することが報告された。スロースリップ発生の前にプレート間の固着が弱くなるという結果も報告され、スロースリップがプレート間の固着の変化の指標となり得ることも指摘された。現在のスロースリップ解析は定常的な変動からのずれに基づいて推定が行われているが、長期の地震サイクルを調べるには地殻変動データをそのまま解析するほうが良いという指摘があった。また、使用するパラメータ値によって結果がかなり異なるため、現実を再現するパラメータ範囲はかなり限定されることが指摘され、正確なモデルで巨大地震をモニターできる可能性が指摘された(海洋研究開発機構・京都大学理学部資料)。

 これらの報告に基づき、東海スロースリップについて議論がなされた。スロースリップの研究を通じて、地震の発生メカニズムについて少しずつ色々なことが理解されつつあり、今後さらに研究を進めることで地震の発生メカニズムに肉迫できるのではないかという期待が示された。

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁 (2006年5月〜2006年7月)
 1.日本とその周辺
  C 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

 2.北海道地方とその周辺
  C 根室半島南東沖(5月12日M5.0)の地震活動
  C 十勝支庁中部(6月13日M4.7、7月17日M4.0)の地震活動

 3.東北地方とその周辺
  C 秋田県内陸南部(5月14日M4.4)の地震活動
  C 三陸沖(6月17日M5.7、M5.6)の地震活動
  C 宮城県沖(7月1日M5.3)の地震活動
  C 宮城県沖の地震活動
  C 岩手県沖(7月6日M5.4)の地震活動
  C 宮城県仙台市付近〔宮城県北部〕(7月6日M4.3)の地震活動

 4.関東・中部地方とその周辺
  C 伊豆半島東方沖(5月2日M5.1)の地震活動
  C 千葉県南部(5月20日M4.7)の地震活動
  C 千葉県北西部(6月20日M4.6)の地震活動
  C 新島・神津島近海(7月9日M4.8)の地震活動
  C 東海地域の地震活動
  A1 東海長期的スロースリップ前後の固着域周辺における地震活動変化
  C 東海・南関東地方の地殻変動

 5.近畿・中国・四国地方とその周辺
  C 瀬戸内海中部(5月8日M4.2)の地震活動
  C 和歌山県北部(5月15日M4.5)の地震活動
  C 足摺岬沖(6月12日M4.0)の地震活動
  C 山口県西部(7月11日M4.0)の地震活動

 6.九州地方とその周辺
  C 伊予灘(5月28日M4.3)の地震活動
  C 大分県中部(6月12日M6.2)の地震活動
  C 奄美大島近海(7月2日M4.1)の地震活動

 7.沖縄地方とその周辺
  C 台湾付近〔与那国島近海〕(7月28日M6.2)の地震活動

 8.期間外・海外
  C 父島近海(8月7日M6.2)の地震活動
  C インドネシア(ジャワ島)(5月27日M6.3)の地震
  C インドネシア(ジャワ島南方沖)(7月17日M7.7)の地震

【2】国土地理院
  1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間および3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間、3ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 東海地方の水準測量機平后然歙遏糎譱虻蟯峇泙狹豎っ亙広域
  A2 東海地方の水準測量供糞得郢塢婉瓠
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  C 加藤&津村(1979)解析方法による各験潮場の上下変動
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  A2 GPS連続観測結果 御前崎周辺
  C GPS連続観測結果 愛知・静岡周辺
  C 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計観測結果
  C 地中地殻活動観測装置観測結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  A2 GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区
  A2 伊豆半島東部 地殻水平変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊豆半島東部測距連続観測
  A2 伊豆半島東部 水準測量結果による長期的な地殻変動
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区
  C 伊豆諸島の地殻水平・上下変動

 4.関東地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 館山地殻活動観測場
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果

 5.北海道地方の地殻変動
  A2 北海道の地殻水平変動図(最近3ヶ月、1ヶ月)
  A2 GPS連続観測結果 北海道太平洋岸
  A2 2004年釧路沖の地震以降の地殻変動

 6.東北地方の地殻変動
  A2 2005年宮城県沖の地震に伴う地殻水平・上下変動(地震後)
  A2 GPS連続観測結果 東北太平洋岸
  A2 2005年宮城県沖の地震以降の地殻変動
  C GPS機動観測結果 牡鹿地区

 7.九州地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 大分県中部

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の地震活動
  B 十勝沖・根室沖のb値の時間変化

【4】東北大学
  A4 GPSおよび相似地震解析でとらえた宮城県沖プレート境界における
    非地震性のすべり

【5】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について

【6】東京大学地震研究所
  C 日光・足尾付近の地震活動(2006年5月〜2006年7月)
  C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2006年5月〜2006年7月)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2006年5月〜2006年7月)

【7】名古屋大学
  C 東海地方における地殻変動連続観測
  C 御嶽山周辺での地震活動の推移(1999〜2005)

【8】京都大学防災研究所
  C 近畿北部の地殻活動
  C 歪計で捉えたジャワ沖の地震波形

【9】九州大学理学研究院
  C 九州の地震活動(2006年5月-2006年7月)
  C 九州南部の地震活動(2006年5月-2006年7月)
   −鹿児島大理学部−

【10】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2006年5月〜2006年7月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2006年5月〜2006年7月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測              (2004年11月〜2006年8月)
  B 宮城県沖の地震活動パタン変化
  B 2006年7月6日 茨城県南西部の地震−相似地震解析結果−
  B 2006年7月9日の東京湾における地震活動
  B 東海のTectonic Force Balance(改訂版)
  A4 西南日本の深部低周波微動活動状況(2006年5月〜2006年7月)
  A4 2006年6月の紀伊半島の深部低周波微動に伴う傾斜変化

【11】産業技術総合研究所
 1.東海・伊豆地域
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2006年5月〜2006年7月)
  C 神奈川県西部地域の地下水位観測(2006年5月〜2006年7月)
                     −神奈川県温泉地学研究所・産総研−

 2.中部・東海地域
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2006年5月〜2006年7月)

 3.近畿地域
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2006年5月〜2006年7月)
  C 紀伊半島南部〜四国の地下水観測結果(2006年5月〜2006年7月)

 4.中国・四国地域
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2006年5月〜2006年7月)
                     −鳥取大学工学部・京大防災研・産総研−

【12】海洋情報部
  C 海底基準点における海底地殻変動観測結果
  C GPSによる地殻変動監視観測
  C 平成18年7月17日ジャワ島南西沖の地震による津波観測

【13】統計数理研究所
  B 地震活動異常と地殻変動異常 2004年中越地震と2005年福岡県西方沖の地震の前の
    中期的変化について
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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