地震予知連絡会の活動報告

第166回地震予知連絡会(2005年11月21日) 議事概要

 平成17年11月21日、国土地理院関東地方測量部において第166回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。トピックスとしては、「「宮城県沖地震」と2005年8月16日宮城県沖の地震」について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、8月16日に宮城県沖でM7.2の地震が、11月15日には三陸沖でM7.1の地震が発生している。(気象庁資料)

2.東海地域の地殻活動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町〜掛川〜御前崎間では前回の観測結果と比較して掛川に対して菊川市、御前崎市浜岡周辺だけがわずかに沈降、それより半島の先端に近い地域は変わらず、全体としてほとんど変化がなかった。(国土地理院資料)掛川市の水準点140-1に対する御前崎市の水準点2595の動きは、長期的な沈下の傾向が続いている。また、2004年度の4回の観測は年周変動が大きめである。(国土地理院資料

 東海地域の非定常地殻変動(スロースリップ)は依然として継続している(国土地理院資料)。しかし、2005年に入ってから、平均的な変動からのずれが小さくなってきているように見える。(国土地理院資料)低周波地震に伴って起きる体積歪計や多成分歪計の変化が1999年以降のデータについて調べられ、過去に愛知県東部において短期的なスロースリップが、低周波地震の発生している領域で起きていた事が報告された。また長期的なスロースリップと短期的なスロースリップの推定モーメントの時間変化が報告され、長期に比べて短期的スロースリップの規模が小さい事が示された。(気象庁資料

3.釧路沖地域の地殻変動

 GPSの観測データに基づいて、2004年釧路沖の地震以降のプレート間滑りの状態が推定され、依然として北海道東部太平洋岸地域において、プレート間滑りが起きている事が報告された。(国土地理院資料

 *本資料の「推定モーメントの時間変化」の図で、縦軸のモーメント値の目盛り表示及び相当するモーメントマグニチュードの数値に誤りがありましたので差し替えました。

4.三陸沖の地震活動

 11月15日に三陸沖、日本海溝の東側において、M7.1の地震が発生した。発震機構は東西方向に張力軸を持つ正断層型であり、余震活動は順調に減衰している。(気象庁資料

5.四国西部における微動とスロースリップイベント

 四国西部において、深部低周波微動に同期した短期的スロースリップが2005年5月のイベントから約6ヶ月ぶりに再来した。(防災科学技術研究所資料

6.トピックス「「宮城県沖地震」と2005年8月16日宮城県沖の地震」

 2005年8月16日にM7.2の地震が宮城県沖で発生した。この地震の余震活動は低調ながら継続している。11月現在までの最大余震は10月24日にM4.8の地震が余震分布の北端で発生している(気象庁資料)。また、地震に伴う海底地殻変動が検出され、GPSから推定された断層モデルの計算結果と調和的であることが報告された。(海洋情報部資料)2005年8月16日のM7.2の地震の波形インバージョンの結果が示され、1978年の宮城県沖地震の震源域の一部が2005年の地震で滑った様子が示された(地震研究所資料)。海底地震計のデータを加えて、本震、余震の震源分布が再決定され、周辺の構造との関係が報告された(東北大学資料)。また2005年の宮城県沖の地震は、地震活動が地震前に活性化した領域で発生したという指摘がなされた(防災科学技術研究所資料)。過去の地震波形記録を用いて宮城県沖の地震が固有地震であるかどうかが検証され、その結果、1.1978年の地震は2005年の地震に比べて地震モーメントにおいて3−4.5倍大きい、2.1936年と2005年の地震はほぼ同じサイズで、非常に近い場所で発生した、3.1936年の地震は、1933年と1937年の地震とは異なるグループの地震である。1937年の地震は深く、サイズは小さい、1933年の地震は浅いという結果が報告された。(カリフォルニア工科大学、京大防災研究資料)震度分布から、宮城県沖の地震の短周期エネルギー発生領域が推定され、2005年の地震が1978年の地震の滑り領域の一部を破壊した可能性は否定できないという報告がなされた。(鹿島建設小堀研究室資料)過去4回の宮城県沖地震の余震の再決定が行われ、1978年の宮城県沖地震の余震域中に1933,1936、1937年の宮城県沖地震の余震域が含まれる結果が示された(東北大学資料)。また、地殻変動データから、2005年宮城県沖の地震の余効変動が本震の震源域の若干南側で進行しているというモデルが提出された。(東北大学資料)以上の報告に基づいて、1978年の地震が、1933、1936、1937年のアスペリテイーが同時に破壊したものと見るべきなのか、それともそれより大きい特別なイベントなのかといった論点や、今回も1978年のアスペリテイーの残りの部分がいずれ破壊するかどうかといった点も含め、様々な議論が行われ、今後宮城県沖の地震の固有性に関して、様々な方面からの検討が必要である事が示された。

 (事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁 (2005年8月〜2005年10月)
 1.日本とその周辺
  C 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

 2.北海道地方とその周辺
  C 十勝支庁南部(8月16日M4.6)の地震活動
  C 国後島付近(9月21日M6.0)の地震活動

 3.東北地方とその周辺
  C 青森県東方沖(9月3日M4.9)の地震活動
  C 青森県西方沖(10月18日M5.4)の地震活動
  A1 宮城県沖(8月16日M7.2,8月24日M6.3,三陸沖8月31日M6.3)の地震活動
  C 福島県沖(10月22日M5.6)の地震活動及び固有的な地震活動

 4.関東・中部地方とその周辺
  C 茨城県沖(8月8日M5.6,10月19日M6.3)及び茨城県南部(10月16日M5.1)の地震活動
  C 千葉県北西部(8月7日M4.7)の地震活動
  C 千葉県東方沖(9月9日M5.0)の地震活動
  C 新潟県中越地方(8月21日M5.0)の地震活動
  C 白山付近(石川県加賀地方、10月3日M4.5)の地震活動
  C 日本海中部(10月23日M6.1)の地震活動
  C 松代における地殻変動連続観測
  C 東海地域の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動
  A1 愛知県東部の短期的スロースリップによる歪変化の過去事例調査

 5.近畿・中国・四国地方とその周辺
  C 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測
  C 伊予灘(9月4日M4.3)の地震活動

 6.九州地方とその周辺

   (九州地方とその周辺では今期間特に目立った活動はなかった.)

 7.沖縄地方とその周辺
  C 沖縄本島近海の地震活動
  C 与那国島近海(10月16日M6.5)の地震活動
  C 台湾付近(9月6日M6.0)の地震

 8.海外・期間外
  C 岩手県沿岸北部(11月1日M4.1)の地震
  C 岩手県内陸南部(11月1日M4.6)の地震
  C 紀伊水道(11月1日M4.3)の地震
  C 新潟県沖(11月4日M4.8)の地震
  C パキスタン(10月8日M7.6)の地震

【2】国土地理院

 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間および3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間および3ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 東海地方(森〜御前崎間)の水準測量
  A2 東海地方(菊川市付近)の水準測量
  C 水準点の比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
  C GPS連続観測および水準測量による比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測結果 愛知・静岡周辺
  C 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計観測結果
  C 地中地殻活動観測装置観測結果
  C 切山基線精密辺長測量結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊豆半島東部測距連続観測
  C GPS連続観測結果 伊豆半島東部・伊豆諸島地区

 4.関東地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 館山地殻活動観測場
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果

 5.北海道地方の地殻変動
  A2 北海道の地殻水平変動図(最近3ヶ月、1ヶ月)
  A2 太平洋岸のGPS連続観測結果
  A2 北海道2003年十勝沖・2004年釧路沖地震に関連した地殻変動
  C 北海道北部高精度三次元測量結果

 6.東北地方の地殻変動
  A2 2005年宮城県沖の地震に伴うGPS連続観測結果
  A2 2005年宮城県沖の地震に伴う推定すべり分布
  A2 加藤・津村(1979)の解析方法による各験潮場の上下変動
  A2 釜石、大船渡、鮎川、相馬各験潮場間の月平均潮位差
  A2 利府町〜石巻市〜登米市間の上下変動

 7.北陸地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 中越地方

 8.四国・九州地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 福岡県西方沖周辺
  B GPS連続観測結果 南西諸島

 9.その他
  B 人工衛星によるパキスタン北部地震の地殻変動の検出

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の地震活動
  C 2003年十勝沖地震(M8.0)後の地殻変動
  C 海底地震観測による最近の根室半島沖での地震活動(調査)
  C 2004年留萌支所南部地震と地下構造

【4】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について

【5】東京大学地震研究所
  A4 海底地震計を用いた2005年宮城県沖の地震の緊急余震観測(速報)
  A4 2005年宮城沖地震の震源過程
  C 微小応力変化評価を目的とした精密弾性波連続観測結果
  C 日光・足尾付近の地震活動(2005年8月〜2005年10月)
  C 紀伊半島およびその周辺の地震活動(2005年8月〜2005年10月)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2005年8月〜2005年10月)

【6】名古屋大学
  B 内陸大地震に先行する地殻歪み速度の変化
  C 核燃料サイクル開発機構の縦抗掘削工事に伴う地殻変動−瑞浪観測点−(続報)
  B 2005年7月20−23日深部低周波微動前後の地殻変動(続報)

【7】京都大学防災研究所
  C 丹波山地の地震活動
  C 地殻活動総合観測線観測結果
  C 白山付近の地震活動

【8】九州大学理学研究院
  C 九州の地震活動(2005年8月〜10月)
  C 九州南部の地震活動(2005年8月〜10月) −鹿児島大理学部−

【9】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2005年8月〜10月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2005年8月〜10月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測                  (2004年2月〜2005年11月)
  A4 ITRF2000座標系での東海地域の異常地殻変動について
  A4 宮城県沖M7地震の準備過程として見られる地震活動変化
  A4 2005年10月の茨城県周辺における地震活動
  A4 2005年10月に再発した四国西部の微動とスロースリップイベント

【10】産業技術総合研究所
 1.東海・伊豆地域
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2005年8月〜2005年10月)
  C 神奈川県西部地域の地下水位観測(2005年8月〜2005年10月)
                     −神奈川県温泉地学研究所・産総研−

 2.中部地域
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2005年8月〜2005年10月)

 3.近畿地域
  C 有馬〜高槻〜六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2005年8月〜2005年10月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2005年8月〜2005年10月)
  B 産総研のボアホール歪計による1996-2005年の近畿地方の地殻歪観測結果(2)

 4.中国・四国地域
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2005年8月〜2005年10月)
                     −鳥取大学工学部・京大防災研・産総研−

 5.新潟/中越
  B 2004年新潟県中越地震震源域周辺における地下水温・水質異常と
    地下地質構造の関係について             −新潟大学・産総研−

【11】海洋情報部
  A4 8月16日宮城沖の地震前後の海底地殻変動観測結果
  A4 銭州における地殻変動監視観測
  C GPSによる地殻変動監視観測
    ・伊豆諸島海域におけるGPSを利用した地殻変動監視観測
    ・DGPS局を利用した地殻変動監視観測
  C 11月15日に発生した三陸沖の地震の震源付近における海底地形について
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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