地震予知連絡会の活動報告

第173回地震予知連絡会(2007年5月14日) 議事概要

 平成19年5月14日、国土地理院関東地方測量部において第173回地震予知連絡会が開催された。今後の地震予知連絡会の活動展開についてワーキンググループ設置が承認された後、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。トピックスとして、「連動型巨大地震」について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.地震予知連絡会における今後の活動展開の検討について

 今後の地震予知連絡会の活動展開として、運営の在り方の検討を行うためのワーキンググループの設置が決定された(事務局資料)。

2.全国の地震活動について

 国内で、最近3ヶ月間に発生したM6以上の地震は、2月17日に十勝沖でM6.2、3月8日鳥島近海でM6.0、3月25日能登半島でM6.9、4月20日宮古島北西沖でM6.7の地震であった。また、三重県中部で震度5強を観測したM5.4の地震が発生した。

 国外になるが、日本海北部で3月9日にM6.2の地震が発生した(気象庁資料)。

3.日本列島の歪み変化について

 GPS連続観測データから推定した日本列島の歪み変化図からは、北海道地方で2003年十勝沖地震に関連する余効的な地殻変動の影響による歪み変化がみられる。伊豆諸島周辺の地殻活動に伴う北東―南西方向の伸びが依然として顕著である。2006年1〜5月の伊豆半島東部における地震活動、2006年夏以降の箱根周辺での地殻変動の影響も見られる。2007年3月25日に発生した能登半島地震による歪みが顕著である(国土地理院資料)。

4.東海地域の地殻変動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町に対して掛川市の水準点140-1や御前崎市の水準点2595では前回の観測結果と比較してごくわずかな沈降が見られ、掛川や御前崎市に対して御前崎先端地域ではごくわずかに隆起が見られる。(国土地理院資料)。掛川市の水準点140-1に対する御前崎市の水準点2595の動きは、長期的な沈下の傾向が続いている(国土地理院資料)。

 東海地域の非定常地殻変動(スロースリップ)は、2005年以降停止しているように見える。また、伊勢湾周辺の志摩観測点や浜名湖北東の春野観測点等では2005年以降においても隆起が続いており、スロースリップがこの領域でわずかに続いている可能性があると考えられる(国土地理院資料)。

 GPSデータから推定されるプレート境界面のすべり分布は、2001年1月〜2005年1月間で、南東向きの大きな滑りが推定されていたが、2006年4月〜2007年4月では、伊勢湾周辺と浜名湖北東部にごくわずかな南東向きのすべりが見られる他は、すべりは見られない(国土地理院資料)。

5.三重県中部の地震活動について

 2007年4月15日に三重県中部の深さ16kmでM5.4の地震が発生した。発震機構は北東―南西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。本震の約2分前には、M3.2の前震が観測された。余震活動は次第に減衰している(気象庁資料)。

 DD法により再決定された余震分布は、本震CMT解の西傾斜の節面と調和的な分布をしている。この節面を地表まで延長した場合、千里断層にあたる可能性がある(防災科学技術研究所資料)。

6.平成19年(2007年)能登半島地震について

 平成19年(2007年)能登半島地震の余震活動は次第に減衰している。4月以降、余震域がやや南西側に広がり、4月中の最大余震が、余震域の南西端付近で発生した。5月以降も余震域の北東側と南西側の端でやや大きな余震が発生しているが、余震活動に特段の変化は見られない(気象庁資料)。

 震源域の3次元地震波速度構造の推定から、震源域の北西浅部の下盤側には低速度域が、南東部の上盤側には高速度域が存在しており、余震はこの速度境界近傍に分布することが示された。震央から北東側3kmの北西−南東断面図では、南東傾斜の余震列の他、北西傾斜の浅い余震列が見られ、低速度域と高速度域の境界に並んでいる。この速度境界の浅部延長部は既知の地質断層の位置に一致する。従って、北西傾斜の余震分布と速度境界は、地質断層の深部形状を現していると考えられる。また、余震域の北東端の深さ5km以深には、震源断層近傍に高速度域が存在し、本震の破壊に対して、バリアとして機能した可能性がある(地震研究所資料)。

 海底地形調査の結果、産業技術総合研究所により推定されている断層に沿って、海底面の傾斜の急変箇所が存在していることがわかった(海上保安庁資料)。また、海底面調査の結果、泥火山(液状化現象)や海底表層の堆積層下の岩盤が露出している部分が、上記の断層に沿って発見された(海上保安庁資料)。

 「だいち」SARデータ干渉解析によって能登半島地震に伴う面的な地殻変動が検出された。SARデータ干渉解析とGPS連続観測で検出された地殻変動から能登半島地震の断層すべり分布が推定された。推定されたモデルは、検出された地殻変動を非常に良く再現している(国土地理院資料)。防災科学技術研究所・京都大学防災研究所からも、SARデータ干渉解析の同様な地殻変動及びモデルが提出された(防災科学技術研究所・京都大学防災研究所資料)。

 能登半島地震後に行われたGPS観測結果により、震源近傍で余効変動が起きていることが示された(京都大学防災研究所資料)。

 富来〜門前の西海岸に発達する海成段丘は、北に向かって高度を増しており、SARや生物痕により示された地震に伴う隆起パターンと整合することから、同様の地殻変動が累積してきた可能性が報告された(国土地理院資料)。

7.西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動について

 2007年3月に四国西部及び四国東部で深部低周波微動・超低周波地震活動に伴って、短期的スロースリップイベントが発生していたことが報告された。また、紀伊半島北東部においても低周波微動が活発化し、短期的スロースリップイベントが発生したことが報告された(防災科学技術研究所資料)。

8.トピックス「連動型巨大地震」

 トピックス「連動型巨大地震(世話人:谷岡委員)」に関して様々な視点から報告が行われた。報告は、「東北〜常磐沖と南海沖の巨大津波痕跡」(島崎邦彦地震研究所教授)、「東海から琉球にかけての超巨大地震の可能性」(古本宗充名古屋大学教授)、「古地震学からみた陸上活断層による連動型地震」(金田平太郎産業技術総合研究所活断層研究センター)の3課題である。

 巨大津波痕跡の調査結果から、南海沖で連動型巨大地震が300〜400年の繰り返し間隔で、時折700年の繰り返し間隔で発生していたという仮説が示された。また、同様な手法で三陸沖での過去6000年間の連動型巨大地震の発生時期が示された(地震研究所,島崎資料)。

 チリ地震のような巨大地震は、日本では起きないと考えられてきたが、これは、発生間隔が長いため知られていないだけであるのではないかという仮説が報告された。その根拠として室戸岬・喜界島・御前崎の海成段丘が千年単位の間隔で起きる巨大地震の際に形成されると仮定し、3地点の間欠的な隆起運動の時間的相関からは、東海から南西諸島にかけての超巨大地震の存在を否定できないとの報告があった(名古屋大学,古本資料)。

 海溝型地震だけでなく、内陸地震においても、濃尾地震やランダース地震のように、過去の活動履歴の異なる複数の活断層が連動し、ひとまわり大きな地震が発生することがある。このため、個々の断層の詳細な活動履歴情報に加えて、連動性の解明・評価が必要である。そのためには、連動した事例・連動しなかった事例を再現しうるモデルの構築が必要であることが指摘された。モデルの構成要素としては、断層の幾何学的形態、活動履歴(応力蓄積状態)、破壊開始点と破壊伝播方向が挙げられる(産業技術総合研究所,金田資料)。

 上記報告をもとに、マグニチュード8と9の地震では、根本的に違いがあるのか、それともたまたま連動して起きているだけなのかといった活発な議論が行われた。

(事務局 国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(2007年2月〜2007年4月)
 1.日本とその周辺
  C 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

 2.北海道地方とその周辺
  C 十勝沖(2月17日M6.2、3月18日M5.6、4月27日M5.2)の地震活動
  C 北海道東方沖(3月11日M5.6)の地震活動
  C 十勝支庁南部(3月30日M4.7)の地震活動
  C 国後島付近(3月30日M5.6)の地震活動
  C 胆振支庁中東部(4月19日M5.6)の地震活動
  C 留萌支庁南部(4月23日M4.6)の地震活動
  A1 択捉島南東沖の地震活動静穏化と最近の活発化

 3.東北地方とその周辺
  C 秋田県内陸北部(3月7日M4.2)の地震活動
  C 宮城県沖(3月31日M4.8)の地震活動
  C 仙台湾(4月5日M4.5)の地震活動

 4.関東・中部地方とその周辺
  C 鳥島近海(3月8日M6.0)の地震活動
  A1 平成19年(2007年)能登半島地震(3月25日M6.9)について
  C 八丈島東方沖(4月14日M5.3)の地震活動
  A1 三重県中部(4月15日M5.4)の地震活動
  C 父島近海(4月16日M5.1)の地震活動
  C 岐阜県美濃中西部(4月28日M4.6)の地震活動
  C 最近の大島の地殻変動
  C 松代における地殻変動連続観測
  C 東海地域の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動

 5.近畿・中国・四国地方とその周辺
  C 愛媛県東予(4月26日M5.3)の地震活動
  C 和歌山県北部(4月26日M4.0)の地震活動
  C 最近の西日本の地震活動について
  C 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測

 6.九州地方とその周辺
  C 熊本県熊本地方(3月22日M4.0、23日M4.1)の地震活動

 7.沖縄地方とその周辺
  C 宮古島北西沖(4月20日M6.7)の地震活動
  C 沖永良部島付近(4月21日M5.7)の地震活動

 8.期間外・海外
  C 日本海北部(3月9日M6.2)の地震活動
  C ソロモン諸島(4月2日Ms7.9、Mw8.1)の地震活動
  C 屋久島付近(5月7日M5.1)の地震活動
  C 茨城県南部(5月8日M4.5)の地震活動
  C 広島県北部(5月13日M4.6)の地震活動

【2】国土地理院
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間および3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間、3ヶ月)
  A2 GPS連続観測から推定した日本列島の歪み変化
  C 加藤&津村(1979)解析手法による各験潮場の上下変動

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点2595(御前崎市)の経年変化
  A2 水準点(140−1、2595)の経年変化
  A2 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  A2 菊川市付近の水準測量結果
  C 水準点の比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 伊勢湾・浜名湖周辺
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 御前崎周辺
  C GPS連続観測による基線長・比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測および水準測量による比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 御前崎地区高精度比高連続観測結果
  C 御前崎長距離水管傾斜計月平均
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計による傾斜変化(日平均、時間平均)
  C 御前崎地中地殻活動観測装置観測結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊豆半島および伊豆諸島の地殻水平・上下変動図
  A2 GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区
  C 伊豆半島東部測距連続観測結果
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区

 4.関東・甲信地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 館山地殻活動観測場
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  C GPS連続観測結果 房総半島地区

 5.北海道地方の地殻変動
  C 北海道の地殻水平変動図(最近3ヶ月、1ヶ月)
  C GPS連続観測結果 北海道太平洋岸
  C 基線ベクトル成分の変位量と変化率
  C 2004年釧路沖の地震以降の累積推定すべり分布

 6.東北地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 東北地方太平洋岸

 7.北陸・中部地方の地殻変動
 能登半島地震(2007.3.25)に伴う地殻変動

  A2 能登半島地震(2007.3.25)に伴う地殻変動
  A2 GPS連続観測結果 能登半島地区
  A2 30秒サンプリングGPS解析による能登半島地震に伴う座標変化
  A2 最大余震前後のGPS1秒サンプリングデータ解析結果
  A2 「だいち」合成開口レーダーによる地殻変動分布図
  A2 震源断層面上の推定すべり分布
  A2 観測値と計算値の比較
  A2 「だいち」SARデータ干渉解析で得られた地殻変動と計算値の比較
  A2 過去のGPS連続観測結果比較(1997〜2000,2004〜2007)
  A2 海成段丘の旧汀線高度と接峰面図
  A2 干渉SAR画像にみる輪島市門前町の中野屋の「地震断層」

 8.中国・四国地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 豊後水道地区

 9.九州・沖縄地方の地殻変動
  C 熊本地方で発生した地震(2007.3.22〜23)に伴う地殻変動
  C 宮古島北西沖で発生した地震(2007.4.20)に伴う地殻変動

 10.その他
  C 硫黄島の地殻変動

【3】北海道大学
  B 2007年4月1日ソロモン諸島地震津波緊急調査
  C 北海道とその周辺の地震活動
  C 3月7日に発生した斜里岳付近の地震(M3.5)と4月23日に発生した留萌支庁南部の
    地震(M4.5)の地震について

【4】東京大学大学院理学系研究科
  B 2007年度以降の地球化学観測について

【5】東京大学地震研究所
  A4 平成19年(2007年)能登半島地震合同余震観測による震源分布

【6】東京大学地震研究所地震地殻変動観測センター
  C 日光・足尾付近の地震活動(2007年2月〜2007年4月)

【7】名古屋大学環境学研究科
  A4 4月15日三重県中部の地震(M5.4)について
  B 御嶽山付近の地震活動と地殻変動について

【8】京都大学防災研究所
  A4 能登半島地震に伴う余効変動:GPS緊急観測結果
  C 近畿北部の地殻活動
  C 4月15日三重県中部の地震に伴った地殻変動
  C 総合観測線による地殻変動連続観測結果

【9】九州大学理学研究院
  B 警固断層周辺の地震活動について

【10】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2007年2月〜2007年4月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2007年2月〜2007年4月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による地殻変動観測
                              (2005年8月〜2007年5月)
  A4 宮城県沖の地震活動パタン変化
  A4 浜名湖下スロースリップに伴う静岡県中部の地震活動変化
  A4 2007年4月 仙台湾の地震
  A4 SAR干渉解析結果から推定した2007年能登半島地震に関する断層すべり分布
     (防災科学技術研究所・京都大学防災研究所による解析結果)
  A4 2007年4月15日三重県北部の地震
  A4 2007年4月26日愛媛県北東部の地震
  A4 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況(2007年3月)
  A4 短期的スロースリップに同期して発生した超低周波地震活動(2007年3月)

【11】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2007年2月?2007年4月)
  C 神奈川県西部地域の地下水位観測(2007年2月?2007年4月)
    −神奈川県温泉地学研究所・産総研−
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2007年2月?2007年4月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2007年2月?2007年4月)
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2007年2月?2007年4月)
    −鳥取大学工学部・京大防災研・産総研−
  B 2007年能登半島地震に伴う地下水等変化
  B 2007年4月15日三重県中部で発生した地震(M5.4)の震源域周辺の活断層と地質構造

【12】海上保安庁
  B 「相模湾」海底基準点における海底地殻変動観測結果
  C GPSによる地殻変動監視観測
  A4 能登半島西方沖の海底調査速報
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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