地震予知連絡会の活動報告

第172回地震予知連絡会(2007年4月9日) 議事概要

 平成19年4月9日、国土地理院関東地方測量部において第172回地震予知連絡会が開催された。はじめに第20期地震予知連絡会の構成が決定された後、平成19年3月25日に発生した能登半島地震に関する観測・研究成果の報告および議論がなされた。以下に、その概要について述べる。

1.第20期の地震予知連絡会の構成について

 互選により、大竹委員が会長に選出された。大竹会長により、島崎委員、平原委員が副会長に指名された。また、東日本部会長及び中日本部会長には島崎副会長、西日本部会長には平原副会長、トピックス部会長には平田委員が指名され、部会長がそれぞれの部会の委員を指名した(第20期地震予知連絡会委員名簿)。

2.平成19年能登半島地震について

 2007年3月25日9時41分に能登半島沖でM6.9の地震が発生した。本震の発震機構は西北西—東南東に圧力軸を持ち、右横ずれ成分を持つ逆断層型である(気象庁資料)。余震活動は、本震—余震型で推移しており、北東−南西方向におよそ40kmにわたって分布し、南東側に傾き下がる面上で発生している。このことから、走向が北東−南西方向をもち、南東方向にやや高角度で傾斜する震源断層面が推定されている(気象庁資料)。余震活動を過去の地震と比較すると、2000年鳥取県西部地震より活発で、2004年新潟県中越地震よりは低調なことが報告された(気象庁資料)。能登半島地震及びその余震のモーメントテンソル解が報告され、西北西—東南東に圧力軸を持つ震源メカニズムが示された(防災科学技術研究所資料)。気象庁、防災科学技術研究所、産業技術総合研究所、名古屋大学から地震波形インバージョンの結果が報告されたが、共通認識を得るには至らなかった(気象庁資料防災科学技術研究所資料産業技術総合研究所資料名古屋大学資料)。

 能登半島地震の初動メカニズム解は横ずれ成分が主であるが、モーメントテンソル解は逆断層型の縦ずれ成分が主になっている。この違いが生じた説明として、広域応力場に調和的な右横ずれ断層タイプの初期破壊が主破壊断層面の下部で起こり、この過程での応力集中により既存の弱面が滑り、逆断層タイプの主破壊が発生したというモデルが報告された(地震研究所資料)。

 震源域の3次元地震波速度構造から、震源域の北西浅部の下盤には地震波の低速度域が、南東部の上盤には高速度域が存在しており、余震はこの速度構造境界近傍に分布することから、本震は低速度域と高速度域との境界で発生したことが報告された(地震研究所資料)。

 能登半島地震の震央の北側から西側にかけての海底には、南東側に傾き下がり、北東—南西方向の走向をもつ逆断層が認められる。余震分布はこの断層の南東側に展開し、南東に向かって深くなることから、海底の逆断層の性状に調和的であることが報告された(産業技術総合研究所資料)。

 能登半島地震の周辺活断層への影響が応力変化により推定され、能登半島地震により、その西側の海域の断層で断層運動を加速させることが報告された(産業技術総合研究所資料)。

 能登半島地震に関する地形地質学的な緊急調査が行われ、その結果余震域と一致する地域で最大隆起量約40cm・最大沈降量約10cmの上下変位が生じていることが生物痕跡より発見され、海岸線の上下変動量の分布を説明する震源断層モデルが報告された(産業技術総合研究所資料)。

 国土地理院のGPSによる地殻変動観測では、地震観測の結果と調和的な変動が得られている(国土地理院資料)。地震後の余効変動は現在のところ検出されていない(国土地理院資料)。地殻変動から推定された震源断層と余震分布、海底の逆断層、及び地震の痕跡の空間的な配置が示された(国土地理院資料)。GPS連続観測データからは、この地域では地殻の歪みが小さかったことがわかっている。(国土地理院資料

 本震と最大余震の間にギャップがあるのではないかという指摘がされた。また、震源メカニズムが北東端の最大余震と南西端の最大余震で違い、これらが同じ断層面上にない可能性も報告されたが、これらについては、今後の観測データの集積と詳細な解析に委ねられることとなった。

 また、このような歪みが少ない領域でM7クラスの大地震が発生したことに関して、その意味が何であるのか、繰り返し起きてきたのか、断層の活動履歴を調べていれば、ある程度想定はできたのか等の議論が行われたが、結論を得るにはいたらなかった。

(事務局:国土地理院)