地震予知連絡会の活動報告

第153回地震予知連絡会(2003年8月18日) 議事概要

 平成15年8月18日、国土地理院関東地方測量部において第153回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。なお,宮城県北部の地震については,集中的に報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、日本海北部でM7.1の深発地震が発生した。また、宮城県沖でM7.0の地震、宮城県北部でM6.2の地震が発生した。
 日本とその周辺の地震活動 (2003.05.01−2003.07.31)(気象庁資料)

2.東海地域の地殻活動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町〜掛川〜御前崎間ではほぼ変化が見られない。
 森〜掛川〜御前崎間の上下変動(国土地理院資料)

 掛川市の水準点140-1に対する浜岡町の水準点2595の動きは、最近の2〜3年間は年周変化が小さくなっているが、変動の傾向は今までと変わらない。
 水準点2595(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)

 上下変動の様子を面的に見ると、駿河湾沿岸の沈降、浜名湖周辺の隆起というこれまでの傾向が続いている。
 東海地方の上下変動(国土地理院資料)

 東海地域の異常地殻変動は依然として継続している。2003年に入ってから、平均的な変動からのずれの水平成分の変化が大きくなり、推定されるプレート間すべりの量は以前の量に戻りつつあるようにも見えるが、この期間行われている電子基準点のアンテナ交換等の影響でデータに誤差が含まれている可能性もあり、今後とも注意深く推移を見守る必要がある。
 平均的な地殻変動からのずれ(精密歴)(国土地理院資料)
 1年間で見た東海非定常地殻変動(大潟固定)(国土地理院資料)
 東海地方の地殻変動(国土地理院資料)
 推定滑り分布の時間変化(暫定)(国土地理院資料)

 この異常地殻変動は、防災科学技術研究所の傾斜計でも検出された。
 三ヶ日における傾斜変化と観測強化のための観測施設整備(防災科学技術研究所資料)

 東海地域の地震活動は、浜名湖の東側で静穏化している。
 東海地域の地震活動レベル(気象庁資料)
 浜名湖(フィリピン海プレート内)(気象庁資料)

3.伊豆半島東方沖の地震活動について

 伊豆半島東方沖では6月13日から小規模な地震活動が始まった。震源分布は2002年5月の活動のやや東側に位置する。
 伊豆半島東方沖の地震活動(気象庁資料)

 この活動に伴い、地殻変動が検出されている。検出された地殻変動の大きさに比較して、地震活動は低調であった。
 伊豆半島東部 変動ベクトル図(水平)(国土地理院資料)

4.東海固着域のトリガー作用について

 東海地域の固着域における地球潮汐のトリガー作用について話題提供があった。東海地域の推定固着域において、地球潮汐が地震発生に及ぼす影響について調査を行った結果、中規模地震の発生や地震活動の変化については地球潮汐との相関が見られた。プレート境界の固着が特に強いと考えられる固着域の中央部の地震活動の活性化領域では特に顕著である。(東北大学資料)

5.宮城県北部の地震活動について

 5月26日に宮城県沖でM7.0の地震が発生した。発震機構は太平洋プレートの沈み込む方向に圧力軸を持つ型で、プレート内部で発生した地震である。この地震以降、岩手・秋田県境から山形・宮城県境にかけての陸域浅部で地震活動が活発化した。
 宮城県沖の地震活動(気象庁資料)

 この地震の後、7月26日に宮城県北部でM6.2の地震が発生した。活動は前震−本震−余震型で推移し、余震活動は順調に減衰している。前震および本震の発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であったが、震源域北端で発生した最大余震の発震機構は北東−南西方向に圧力軸を持つ逆断層型であった。なお、本震のCMT解は南北走向、東西圧縮の逆断層型であり、地震波の初動を用いた発震機構解とは異なっている。
 宮城県北部の地震活動(気象庁資料)
 宮城県北部の余震活動(気象庁資料)
 宮城県北部の地震の発震機構分布(気象庁資料)

 震源域近傍で臨時に実施された地震観測により、震源分布が詳細にとらえられた。震源域の北部ではほぼ南北走向で西側へ傾き下がる傾斜面に沿って震源が分布し、傾斜面の中央付近では、それと共役な面に震源が並んでいる。震源域の南部では、北東−南西走向で北西側に傾き下がる面に震源が並んでいる。(東北大学資料)

 7月26日7:13の本震の前には地震活動域が北方へ拡大し、本震後に活動域は東側と北側へ拡大した。(防災科学技術研究所資料)

  地震波形を用いた震源インバージョンの結果によれば、破壊は南部で始まり、浅くなりながら北向きに進み、北部の浅い部分で大きなすべりを起こしたと考えられる。
 2003年7月26日7時13分の宮城県北部の震源過程(暫定)(防災科学技術研究所資料)
 (地震研究所資料)

 この地震に関連して、水準測量、GPS測量、合成開口レーダ等により、地震に伴う地殻変動が詳細にとらえられた。得られた地殻変動データから、南北走向の断層面と、北東−南西走向の断層面の2枚の断層面ですべりが生じたと推定される。推定された断層面は本震の位置とは重ならないが、測地測量から求められる断層面は断層のすべり量が大きい領域を示すものであり、破壊の開始点と必ずしも一致するものではないと考えられる。
 仙台市〜石巻市間の上下変動(国土地理院資料)
 緊急に実施した「GPS測量」により検出した地殻変動(国土地理院資料)
 干渉SARで検出された2003年7月26日宮城県北部の地震に伴う地殻変動(国土地理院資料)
 7月26日7時13分頃 宮城県北部の地震の断層モデル−A(暫定)(国土地理院資料)
 推定された断層(モデル−A)周辺での水平変動及び模式図(国土地理院資料)

 震源域付近では、S波速度が遅い領域が西側深部から延びており、今回の地震の発生と関係している可能性がある。
 宮城県北部地域におけるS波速度構造の東西鉛直断面(東北大学資料)

 震源域近傍には旭山撓曲が存在するが、震源分布から推定される断層面の延長が地表を切る位置とは一致しない。東側に存在する石巻湾断層の北部延長と一致する可能性もあるが、現在のところ判断できない。
 石巻湾の地質構造(産業技術総合研究所資料)
 旭山撓曲周辺の地質断面図(産業技術総合研究所資料)

 この地震に関連して、7月26日には震度6が1日に3回記録された。最大観測震度6が1日に3回あったことはこれまでなく、初めてのことであるが、これは震度観測点が約20倍に増えたことによるものであり、震度観測が気象官署のみで行われていた時期と直接比較することは適当でない。
 「震度6が一日に3回」の謎(防災科学技術研究所資料)

 今回の地震は、M6クラスの地震としては、地震観測データや測地観測データがこれほどそろっているのは史上初めてのことである。地震の直前に震源域を横断する形で水準測量が行われていたが、地震前には特に異常な変動はとらえられていない。この地震については直前に前兆現象は観測されなかったという事実は重要な結果である。 発生した地震が本震か前震かを確率的に識別することが議論されたが、ある程度のデータの蓄積が必要であり、現状で克服すべき技術的困難が少なくない。

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(A1)
 1.全国M5以上の地震と主な地震の発震機構解(A1)

 2.北海道地方とその周辺の地震活動
  C 釧路沖(7月3日M5.8)の地震活動
  C 日本海北部(7月27日M7.1)の深発地震活動
  C 渡島支庁西部(松前沖、5月16日M4.2、7月20日M4.1)の地震活動
  C 北海道南西沖(6月12日M4.6)の地震活動

 3.東北地方とその周辺の地震活動
  C 宮城県沖(5月26日M7.0)の地震活動
  A5 宮城県北部(7月26日M6.2)の地震活動

 4.関東・中部地方の地震活動
  C 茨城県沖(6月16日M5.0)の地震活動
  C 千葉県北東部(5月17日M5.1)の地震活動
  C 千葉・茨城県境付近(5月12日M5.2)の地震活動
  C 神奈川県西部(7月11日M4.1)の地震活動
  C 東海・南関東地方の地震活動
  C 伊豆半島東方沖(6月13〜21日)の群発地震活動
  C 伊勢湾(知多半島付近、7月9日M4.3)の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動
  C 長野県南部(5月18日M4.5、6月13日M4.1)の地震活動
  C 長野県北部の地震活動と松代における地殻変動連続観測

 5.近畿・中国・四国地方の地震活動
  C 高知県中部(5月20日M3.6)の地震活動
  C 伊予灘(5月31日M4.5)の地震活動

 6.九州地方とその周辺の地震活動
  C 大分県中部(6月25日M3.8)の地震活動

 7.沖縄地方とその周辺の地震活動
  C 台湾付近(6月9日M6.0、6月10日M6.2)の地震活動

【2】国土地理院(A2)
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間の地殻水平変動
  A2 GEONETによる最近3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間)
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(3ヶ月)
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点(140-1、2595)の経年変化
  A2 水準点2595(浜岡町)の経年変化
  C 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  A2 静岡〜掛川間の上下変動
  A2 相良〜藤枝間の上下変動
  A2 三ヶ日〜掛川間の上下変動
  A2 舞阪〜浜岡間の上下変動
  C 舞阪〜浜岡〜清水間の上下変動
  C 舞阪〜掛川〜清水間の上下変動
  C 御前崎〜掛川〜清水間の上下変動
  C 東海地方の各水準点の経年変化(7月期)
  C 焼津〜御前崎間の各水準点の経年変化
  C 東海地方の上下変動
  C 渥美半島の上下変動
  A2 水準点2602-1(菊川町)と10333(大東町)及び2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準点2602-1(菊川町)と2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値)
  C 比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺(2)
  A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
  C GPS連続観測による基線長・比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測結果 静岡県西部
  A2 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 御前崎長距離水管傾斜計月平均(E−W)
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計日平均
  C 地中地殻活動観測装置観測結果
  C 御前崎における絶対重力変化

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊豆半島東部測距連続観測日平均結果
  A2 GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区
  C GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区2
  C GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区(ベクトル図)
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区(ベクトル図)

 4.関東・中部地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  C GPS連続観測結果 富士山・箱根周辺

 5.中国・四国・九州地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 日向灘・南海周辺

 6.その他
  C GPS連続観測結果 硫黄島
  A2 つくば〜新十津川基線におけるGPS及びVLBI時系列の比較

 7.東北地方の地殻変動
  A5 GPS連続観測結果 7月26日宮城県北部の地震
  A5 GPS連続観測結果 7月26日宮城県北部の地震(ベクトル図)
  A5 水準測量よる仙台市−矢本町周辺の上下変動
  A5 7月26日宮城県北部の地震の断層モデル
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(1)
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(2)
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(3)−1
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(3)−2
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(4)−1
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(4)−2
  C GPS連続観測結果 5月26日宮城県沖地震(ベクトル図)
  C 5月26日宮城県北部の地震の断層モデル
  C GEONETから推定した東北地方の歪み変化
  C 牡鹿地区機動連続観測結果
  C 加藤&津村の解析方法による各験潮場の上下変化
  C 釜石・大船渡・鮎川・相馬各験潮場間の月平均潮位差

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の地震活動(2003年5月〜7月)
  C 釧路沖の最近の地震活動
  C 摩周岳の地震活動

【4】東北大学
  A5 2003年7月26日宮城県北部の地震について
  B 東海地域推定固着域における地球潮汐の地震トリガー作用

【5】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について

【6】東京大学地震研究所
  A5 宮城県北部地震の震源過程
  C 伊豆半島および伊豆諸島周辺の地震活動(2003年5月〜2003年7月)
  C 日光・足尾付近の地震活動(2003年5月〜2003年7月)
  C 高精度弾性波観測結果について(2003年7月まで)
  C 相良観測点における歪・傾斜観測(2003年5月〜2003年7月)
  C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2003年5月〜2003年7月)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2003年5月〜2003年7月)
  C 宮城県・岩手県地方で期待される起震応力の増加について
  C 2002年鳥取沖-西南日本海陸合同地殻構造探査について
  C 鳥取県西部地震震源域周辺の地震活動(2003年5月〜2003年7月)

【7】東京工業大学
  A5 宮城県沖地震および宮城県北部地震における地震ダイナモ効果

【8】名古屋大学
  C 東海地方における地殻変動連続観測
  C 御岳山麓の群発地震活動の推移

【9】京都大学
  B 5月26日宮城県沖地震および7月26日宮城県北部地震の波形インバージョン結果
  C 丹波山地の地震活動活発化〜その後
  C 島根・広島県境域,三瓶山東麓周辺域の地震活動

【10】九州大学
  C 九州の地震活動(2003年5月〜2003年7月)
  C 九州南部の地震活動(2003年5月〜2003年7月) (鹿児島大)

【11】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2003年5月〜7月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2003年5月〜7月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測                 (2001年8月〜2003年8月)
  A5 2003年7月宮城県北部の地震活動

【12】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2003年5月〜2003年7月)
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2003年5月〜2003年7月)
  C 有馬?高槻?六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2003年5月〜2003年7月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2003年5月〜2003年7月)
  A5 2003.7.26宮城県北部の地震に関する現地調査結果
  A5 宮城県北部の地震と旭山撓曲周辺の地質構造の関係

【13】海洋情報部
  C GPSによる地殻変動監視観測
  A5 仙台湾海底地質構造図
  C 宮城沖の断層分布

【14】統計数理研究所
  A5 2003年宮城県北部の前震活動と余震活動および周辺部の地震活動の統計解析
  B 宮城県沖プレート境界型大地震までの東北地方における地震活動の解析について
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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