地震予知連絡会の活動報告

第158回地震予知連絡会(2004年8月23日) 議事概要

 平成16年8月23日、国土地理院関東地方測量部において第158回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ、議論がなされた。トピックスとしては、応力・メカニズムの現状評価について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、房総半島南東沖でM6.7の地震が発生した。また、千島列島でM6.3のやや深発地震、沖縄本島近海でM6.1の地震、台湾付近でM6.1の地震が発生した(気象庁資料)。

2.東海地域の地殻活動について

 東海地域の水準測量結果によると、森町〜掛川〜御前崎間では前回の観測結果と比較して御前崎側で隆起が見られるが、前々回の観測結果との比較では特に大きな変化はなかった(国土地理院資料)。掛川市の水準点140-1に対する御前崎市の水準点2595の動きは、最近の2〜3年間は年周変化が小さくなっているが、変動の基本的な傾向は今までと変わらない(国土地理院資料)。上下変動の様子を面的に見ると、駿河湾沿岸の沈降、浜名湖周辺の隆起というこれまでの傾向が続いている(国土地理院資料)。

 東海地域の非定常地殻変動(スロースリップ)は依然として継続している.2003年以降、平均的な変動からのずれの水平成分の変化速度が大きくなり、2001年のレベルに近くなっている(国土地理院資料(1)、 資料(2)、 資料(3)、 資料(4)、 資料(5) )。

3.北海道周辺の地震活動について

 7月8日に千島列島ウルップ島付近でM6.3のやや深発地震が発生した(気象庁資料)。

 2003年9月26日に発生した十勝沖地震の余効変動のすべりは最近も続いている(国土地理院資料)。地殻変動の東西成分、南北成分変化率の推移から、余効変動はしばらく継続すると考えられる(国土地理院資料)。

4.岩手県沖の地震活動について

 対象期間外であるが、8月10日に岩手県沖でM5.8の地震が発生し、最大震度5弱を観測した(気象庁資料)。

5.房総半島南東沖の地震活動につい

 5月30日に房総半島南東沖のプレート三重会合点付近でM6.7の地震が発生し、弱い津波を伴った.この付近では5月以降地震回数が増えはじめ、5月16日にはM5.0の地震が発生していた(気象庁資料)。

6.沖縄付近の地震活動について

 沖縄本島近海で7月22日にM6.1の地震が発生した.7月末には余震活動は収まりつつある(気象庁資料)。

 台湾付近で5月19日にM6.1の地震が発生した(気象庁資料)。

7.DDトモグラフィによる震源断層とアスペリティのイメージングについて

 Double-difference tomography 法では、震源域の三次元不均質構造を高分解能でイメージングすることが可能である.このDDトモグラフィ法を兵庫県南部地震などの内陸地震に適用した結果、断層面に沿って低速度領域が存在すること、断層面内の相対的な高速度領域がアスペリティと対応しているように見えることが報告された(東北大学資料)。

8.十勝沖地震前の地震活動度変化について

 地震活動の再検討により、十勝沖地震の発生前に太平洋プレート上面およびプレート内部の地震活動が変化していた領域があったことが報告された(北海道大学資料)。 また、深さ100kmまでのM2.5〜5.0の地震の発生数の検討から、1998年頃から十勝沖地震の震源域において静穏化が起こっていたことがわかった(防災科学技術研究所資料)。

9.近畿北部における最近の地殻活動について

 近畿地方の地震活動度は、2003年1月頃から低下している.4月16日と5月19日にM3.6の地震が発生した後、地震の積算回数グラフの勾配は少し戻ったが、依然として丹波山地全体の活動度は低い(京都大学防災研究所資料)。 また、地震活動度の低下と共に、地殻変動観測にも変化が現れている可能性があるとの報告があったが、降水量との関係を指摘する意見もあった.この件についての結論は出なかったが、丹波山地の地殻活動については、今後議論を深める必要があるとの認識が示された。

10.応力・メカニズムの現状評価について

 今回のトピックスでは、応力・メカニズムの現状評価として、地殻応力測定の現状と今後の展望について議論を行った.(世話人:平田委員)。

 GPS観測により求められる歪や地震のモーメントテンソルインヴァージョンから求められる応力と地殻応力測定により求められる応力との対応関係がはっきりしないことや、観測方法に起因する本質的な問題などのこれまで解決方法がなかった問題点について、最近解決方法が提案されつつある。

 地殻活動を議論する上で地殻応力の実測は不可欠であり、機会あるごとに議論することが必要である(地震研究所資料)。

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(A1)
 1.全国M5以上の地震と主な地震の発震機構(A1)

 2.北海道地方とその周辺の地震活動
  C 千島列島(ウルップ島付近)(7月8日M6.3)の地震活動
  C 十勝沖地震(2003年9月26日M8.0)の余震活動
  C 十勝支庁南部(7月20日M5.0)の地震活動
  C 網走・根室支庁境界付近(4月27日〜)の地震活動

 3.東北地方とその周辺の地震活動
  C 青森県東方沖(7月3日M5.2、7月21日M5.5とM5.4)の地震活動
  C 青森県三八上北地方(7月3日M4.5)の地震活動
  C 岩手県内陸北部(7月9日M4.4)の地震活動
  C 秋田県沖(6月26日M5.0)の地震活動
  C 福島県沖(5月29日M5.9)の地震活動

 4.関東・中部地方の地震活動
  C 房総半島南東沖(7月17日M5.5)の地震活動
  C 房総半島南東沖(5月30日M6.7)の地震活動
  C 八丈島近海(6月20日M5.1)の地震活動
  C 岐阜県美濃中西部(7月27日M4.5)の地震活動
  C 東海地域の地震活動
  C 東海・南関東地方の地殻変動
  C 長野県北部の地震活動と松代における地殻変動連続観測

 5.近畿・中国・四国地方の地震活動
  C 兵庫県南西部(7月12日M3.9)の地震活動
  C 紀伊水道(6月8日M4.5)の地震活動

 6.九州地方とその周辺の地震活動
  C 奄美大島近海(中之島付近)(6月18日M4.5)の地震活動

 7.沖縄地方とその周辺の地震活動
  C 沖縄本島近海(5月20日M5.1)の地震活動
  C 沖縄本島近海(7月22日M6.1)の地震活動
  C 台湾付近(5月19日M6.1)の地震活動

【2】国土地理院
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間の地殻水平変動
  A2 GEONETによる最近3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1年間)
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(3ヶ月)
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点(140-1、2595)の経年変化
  A2 水準点2595(御前崎市)の経年変化
  C 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  A2 静岡〜掛川間の上下変動
  A2 舞阪〜御前崎間の上下変動
  A2 三ヶ日〜掛川間の上下変動
  A2 相良〜藤枝間の上下変動
  C 舞阪〜御前崎〜静岡間の上下変動
  C 御前崎〜掛川〜静岡間の上下変動
  C 舞阪〜掛川〜静岡間の上下変動
  C 渥美半島の上下変動
  C 東海地方の各水準点の経年変化(7月期)
  C 焼津〜御前崎間の各水準点の経年変化
  C 東海地方の上下変動
  C 御前崎地方の上下変動
  A2 水準点2602-1(菊川町)と1033(大東町)及び2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準点2602-1(菊川町)と2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値)
  C 水準点の比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の非定常地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺(2)
  A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
  C GPS連続観測による基線長・比高変化に対する近似曲線の係数変化
  C GPS連続観測結果 静岡県西部
  A2 東海・伊豆地方の水平歪図
  A2 四国地方の水平歪図
  A2 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 東海地方海岸沿いの上下変動
  C 御前崎長距離水管傾斜計月平均(E−W)
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計日平均
  C 御前崎・切山長距離水管傾斜計時間平均
  C 地中地殻活動観測装置観測結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 内浦〜中伊豆〜伊東間の上下変動
  C 熱海〜伊東〜河津間の上下変動
  C 伊豆半島の上下変動
  C 伊豆半島東部測距連続観測日平均結果
  C 川奈地区精密辺長測量結果
  A2 GPS連続観測結果 伊豆半島東部地区
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区
  C GPS連続観測結果 伊豆諸島地区(ベクトル図)

 4.関東地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  C GPS連続観測結果 富士山周辺地区
  C GPS連続観測結果 富士山周辺(ベクトル図)

 5.北海道地方の地殻変動
  A2 GPS連続観測結果 十勝沖周辺
  C 十勝沖地震に伴う地殻変動
  C カルマンフィルターで推定した余効滑り(暫定)

 6.東北地方の地殻変動
  C 牡鹿地区GPS機動観測
  C GPS連続観測結果 2004年8月10日岩手県沖地震(M5.8)

 7.四国・九州地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 日向灘・南海周辺

 8.その他
  C GPS連続観測結果 硫黄島
  C GPS測量による硫黄島の火山性地殻変動


【3】北海道大学
  A4 根室半島沖の地震活動の静穏化と活発化
  C 北海道とその周辺の地震活動
  C 2003年十勝沖地震後の地殻変動
  C 斜里岳の地震活動


【4】東北大学
  A4 DDトモグラフィによる震源断層とアスペリティのイメージング
    −1995年兵庫県南部地震(M7.3)・2000年鳥取県西部地震(M7.3)・
    2003年宮城県北部地震(M6.4)の場合−
  C 2004年8月10日岩手県沖(M5.6)の地震について


【5】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球化学的観測について
  C 伊豆半島における地球化学的観測について
  C 福島県東部における地球化学的観測について


【6】東京大学地震研究所
  C 高精度弾性波測定(2004年7月まで)
  C 日光・足尾付近の地震活動(2004年5月〜2004年7月)
  C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2004年5月〜2004年7月)
  C 九州,日奈久断層域における地殻構造探査


【7】名古屋大学
  C 御嶽山における地震観測とそのシステムの現況


【8】京都大学
 B 近畿北部における最近の地殻活動
  C 山崎断層,夢前町付近の地震(2004年7月12日,Mj=3.9)について


【9】九州大学
  C 九州の地震活動(2004年5月〜7月)
  C 九州南部の地震活動(2004年5月〜7月) (鹿児島大理)


【10】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2004年5月〜7月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2004年5月〜7月)
  C 伊豆半島・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による
    地殻変動観測               (2002年10月〜2004年7月)
  A4 2003年十勝沖地震前の地震活動変化、および東海の活動との対比
  A4 浜名湖下の地震活動とその変化の解釈
  A4 山梨県中央部の地震活動
  A4 大阪湾・和歌山北西部の地震について


【11】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2004年5月〜7月)
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2004年5月〜7月)
  C 有馬−高槻−六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2004年5月〜7月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2004年5月〜7月)
  C 山崎断層夢前町付近の地震(2004年7月12日,Mj=3.9)
    前後の産総研安富・安富北観測点での地殻歪・地下水位の観測結果
  C 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2004年2月〜7月)
   (鳥取大学工学部・京大防災研・産総研)


【12】海洋情報部
  C 島根沖の海底地形・地質構造、重力異常
  C 加賀−福井沖の断層分布
  C 周防灘東部のマルチチャンネル音波探査
  C GPSによる地殻変動監視観測
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
 (A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
 (A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
 (A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
 (A4)各地域についての詳細検討
 (A5)トピックス
 (B) 話題提供
 (C) 資料提出
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