地震予知連絡会の活動報告

第144回地震予知連絡会(2001年8月30日) 議事概要

 平成13年8月20日、国土地理院関東地方測量部において、第144回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動、兵庫県南部地震の前兆と予測可能性などについて観測・研究成果の報告が行われ議論がなされた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間、北海道東方沖、青ヶ島,南西諸島などの地域でM5を越える地震が発生した。
 M5以上の全国の地震 (2001.05.01−2001.07.31)(気象庁資料)

2.東海地域の地殻活動について

 東海地域の推定固着域周辺における地殻内の地震活動に顕著な変化は見られない。フィリピン海スラブ内では,2001年4月に発生した静岡県中部の地震の余震域を除いても地震数が増加傾向にある。
 固着域周辺の地震活動(地殻内 1997年以降)(気象庁資料)
 固着域周辺の地震活動(フィリピン海スラブ内 1997年以降)(気象庁資料)

 水準測量結果によると,最近3ヶ月間に御前崎の先端付近が若干隆起したが,こうした変化はこれまでにも時々見られたものである。
 森〜掛川〜御前崎間の上下変動(国土地理院資料)

 掛川市の水準点140-1に対する浜岡町の水準点2595の動きに特に変化は見られないが,最近は年周変化の傾向が変化したように見える。
 水準点2596(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)

 一方,浜名湖周辺では1年間に10mmを越える顕著な隆起が観測された。この隆起量は通常よりも大きな値であり,GPSで検出された異常地殻変動との関連があると考えられる。
 東海地方の上下変動(国土地理院資料)

 GPS観測で見つかった東海地域の異常地殻変動は7月後半時点でも継続している。また,一連の変化は2000年の伊豆諸島の地殻活動と前後して開始したようにも見える。
 東海地方の地殻変動(国土地理院資料)
 東海地方の地殻変動(国土地理院資料)

 浜名湖−東濃地域の地震活動を調べると,異常地殻変動が生じている地域の周辺でプレート境界上面の地震活動が低下している。また,過去の地震活動を調べると,1980年代後半にも同様な静穏化現象のあったことが明らかになった。
 浜名湖−東濃地域深部地震活動(名古屋大学資料)
 浜名湖−東濃地域深部地震活動(名古屋大学資料)

 この異常地殻変動はGPSの観測精度からは有意と考えられる。プレート境界面のゆっくりとしたすべりによる解釈が現状では最も有力であるが,モデルには様々な不確定要因があり,結論を得るには至っていない。いずれにせよ,今後の推移を注意深く監視していくことが必要である。

3.福島県沖の地殻活動について

 2001年2月25日に福島県沖でM5.8の地震が発生し,沖合に設置されたGPSで地震後半年間にわたる地殻変動が検出された。周辺の地震活動を詳細に検討した結果,この地震はプレート境界で地震活動が活発な地域の一部を震源域として発生しており,翌日に発生した最大余震(M5.4)や1987年に同地域で発生したM6級の地震の破壊領域が互いに重なり合うことなく分布している。今回発生した地震の余震域に20km×40km程度の断層面を仮定すると観測されたGPSの変位を説明することができ,本震の発生後にゆっくりとしたすべりが生じたものと推測される(東北大学資料1資料2)。今後,こうした観測例を増やすことによりプレート境界の挙動が解明されていくものと期待される。

4.箱根周辺の地震活動について

 2001年の6月以降,箱根で地震活動が活発化した。震源はほぼ南北方向の並びと,それに直交する東西の並びに分かれ,震源は5km以下と浅い。
 箱根周辺の地震活動(東京大学地震研究所資料)

 湯河原の堆積歪み計やGPSにも関連した地殻変動が観測されており,火山性の活動と考えられる(気象庁資料,14頁)。
 湯河原体積歪変化と積算降水量(気象庁資料)

5.兵庫県南部地震の前兆と予測可能性について

 トピックスでは,1995年兵庫県南部地震について,活断層,地震活動,地殻変動,地下水,電磁気などの様々な観測事実を現在の知見で見直した場合に,地震発生の予測が可能かどうか,また,予測を実現のためにはどのような問題点があるかについて議論した(世話人:梅田康弘委員)。震災後に行われた活断層調査結果に基づいて考えると,淡路島から有馬−高槻構造線にいたる活断層系のシステマティックな調査が事前に行われていれば、兵庫県南部地震の切迫性に気づいた可能性が高い。琵琶湖西岸断層周辺は現在そのような観点で調査されている(産業技術総合研究所資料)。

 長期的な地震活動データを見ると,兵庫県南部地震も2000年鳥取県西部地震も中規模の地震活動があった地域で発生しており,注意すべき断層の抽出は可能だと考えられる(京都大学資料)。兵庫県南部地震の震源域は事前に空白域として指摘されており,場所の特定は可能であった(京都大学防災研究所資料)。また,周辺地域では本震発生の数ヶ月前から地震活動が静穏化しており,異常の検出は可能であったと考えられる(京都大学防災研究所資料)。こうした解析を行う場合には,複数のパラメータを重ねて見る工夫が重要であり,b値やフラクタル次元に現れた変化は,地殻歪みの変化と同期していたようにも見える(京都大学防災研究所資料)。

 一方,測地測量による地殻変動観測では歪みの絶対量を知ることができないため,地震発生を予測する上であまり効果的でなかった。地殻変動連続観測では近畿地方の広域にわたり異常が検出されていたが,場所の特定は困難だったと思われる。地下水観測では地震前兆と考えられる観測例が3つ報告されたが,これは震源域の真上付近でデータが得られた結果と考えられ,場所の特定が事前になされた場合には有効な観測手段になると期待される。
 地下水観測から検知された地球科学的な前兆現象(東京大学理学部資料)

 電磁気現象についても多数の異常が観測されたが,こうした異常が観測された場合に,それが必ずしも大地震につながるとは限らない点に注意が必要である。また,前兆現象から震源域を特定することは重要かつ困難な問題であり,組織的な観測により異常の原因を絞り込んでいくような体制の整備が重要である。

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(A1)
1.2001年5月〜7月の全国のM5以上の地震と主な地震の発震機構解

2.2001年5月〜7月の北海道地方とその周辺の地震活動
   北海道東方沖の地震活動
   日高支庁南部の地震
   石狩支庁周辺(余市岳付近を含む)の地震活動

3.2001年5月〜7月の東北地方とその周辺の地震活動
   秋田県沖(男鹿沖)の地震
   岩手内陸北部の地震

4.関東・中部地方の地震活動
   青ヶ島南方沖の地震
   栃木・群馬県境の地震
   埼玉県・東京都境付近の地震
   千葉県南部の地震
   伊豆半島東方沖の地震
   三宅島から新島・神津島にかけての地震活動
   富士山の低周波地震
   箱根山の地震
   東海地方の地震活動・地殻変動
   静岡県中部の地震
   長野県北部の地震活動と松代における地殻変動観測
   石川県西方沖から福井県周辺の地震活動
 B 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測(気象研究所)

5.近畿・中国・四国地方の地震活動
   兵庫県北部の地震
   鳥取県西部地震の余震活動(「平成12年(2000年)鳥取県西部地震」)
   和歌山県北部の地震活動
   安芸灘の地震活動(「平成13年(2001年)芸予地震」)

6.九州地方とその周辺の地震活動
   奄美大島近海の地震活動
   大分県西部の地震活動

7.沖縄地方とその周辺の地震活動
   台湾周辺の地震活動

 A5 (トピックス)兵庫県南部地震前後の周辺域の地震活動について(気象庁)
 A5 (トピックス)兵庫県南部地震以前の地震空白域(気象研究所)

【2】国土地理院(A2)
1.日本全国の地殻変動
 A2 GEONETによる最近1年間の地殻水平変動
 A2 GEONETによる最近3ヶ月の地殻水平変動
 A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(3ヶ月)
 A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1ヶ月)
 A2 GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

2.東海地方の地殻変動
 A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
 A2 水準点(410-1、2595)の経年変化
 A2 水準点2595(浜岡町)の経年変化
 C 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
 A2 水準点2602-1(菊川町)と10333(大東町)及び2601(小笠町)の経年変化
 A2 水準点2602-1(菊川町)と2601(小笠町)の経年変化
 A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値)
 C 掛川〜静岡間の上下変動
 C 相良〜藤枝間の上下変動
 A2 三ヶ日〜掛川間の上下変動
 A2 舞阪〜浜岡間の上下変動
 A2 舞阪〜浜岡〜清水間の上下変動
 A2 舞阪〜掛川〜清水間の上下変動
 C 御前崎〜掛川〜清水間の上下変動
 C 東海地方の各水準点の経年変化
 C 焼津〜御前崎間の各水準点の経年変化
 A2 東海地方の上下変動
 A2 名古屋〜三ヶ日〜森間の上下変動
 C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
 A2 東海地方の地殻変動
 A2 GPS連続観測結果 駿河湾周辺
 A2 GPS連続観測結果 駿河湾周辺(2)
 A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
 A2 GPS連続観測結果 静岡県西部
 A2 御前崎地区高精度比高連続観測
 C 御前崎長距離水管傾斜計月平均(E−W)
 C 地中地殻活動観測装置観測結果

3.伊豆地方の地殻変動
 C 熱海〜伊東〜河津間の上下変動
 C 中伊豆〜伊東間の上下変動
 C 修善寺〜河津間の上下変動
 C 内浦〜中伊豆〜伊東間の上下変動
 C 内浦〜沼津間の上下変動
 A2 伊豆半島の上下変動
 A2 伊東市付近の地盤上下変動の推移
 C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
 C 伊東東部連続観測(辺長)日平均結果
 C GPS連続観測結果 伊豆東部周辺
 C GPS連続観測結果 伊豆諸島北部周辺
 C GPS連続観測結果 伊豆諸島北部周辺(ベクトル図)

4.関東地方の地殻変動
 C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
 C 鹿野山精密辺長連続観測結果
 A2 GPS連続観測結果 富士山周辺

5.北海道地方の地殻変動
 C GPS連続観測結果 樽前山周辺

6.東北地方の地殻変動
 C GPS連続観測結果 岩手山周辺
 C GPS連続観測結果 磐梯山周辺
 C GPS連続観測結果 日光周辺

7.近畿・中国・四国地方の地殻変動
 C GPS連続観測結果 兵庫県北部
 C GPS連続観測結果 鳥取県西部
 C GPS連続観測結果 安芸灘周辺
 C GPS連続観測結果 瀬戸内中部

8.その他
 C GPS連続観測結果 硫黄島
 C 国内VLBI観測(国内超長基線測量)観測結果
 C GPSによる日本列島の上下変動速度分布
 A5 (トピックス)兵庫県南部の地殻変動

【3】北海道大学
 C 北海道とその周辺の最近の地震活動(2001年5〜7月)
 C 石狩支庁南部(余市岳付近)の地震活動
 C 6月21日日高支庁中部(静内付近)の地震(M4.4)の周辺の地震活動

【4】東北大学
 A4 福島県沖プレート境界の固着状況の変化
 C 東北地方およびその周辺の微小地震活動(2001年5月〜7月)

【5】東京大学大学院理学系研究科
 A5 (トピックス)地下水観測から検知された地球化学的な直前現象
 C 東海地域における地球科学的観測について
 C 伊豆半島における地球科学的観測について
 C 福島県東部における地球科学的観測について

【6】東京大学地震研究所
 A4 伊豆半島及び伊豆諸島周辺(箱根・青ヶ島)の地震活動(2001年5月〜2001年7月)
 C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2001年5月〜7月)
 C 関東甲信越地域の地震活動(2001年5月〜2001年7月)
 C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2001年5月〜2001年7月)
 C 四国地方の地殻活動について
 C 平成12年度北海道地域地殻構造探査について

【7】名古屋大学
 C 東海地方の微小地震活動(2001年5月〜2001年7月)
 A4 浜名湖ー東濃地域深部地震活動
 C 豊橋・稲武・瑞浪における伸縮変化
 A3 長島温泉における温泉ガス組成の変化
 A4 GEONETデータによる東海地方の地殻変動
 C 東濃地域の地下水位と歪み変化(東濃地震科学研究所)

【8】京都大学
 C 西南日本内陸の地震活動
 C 最近10年の地殻変動連続観測結果−阿武山、逢坂山、屯鶴峯−
 A5 (トピックス)地震活動からみた予測性
 A5 (トピックス)測地・地殻変動からみた予測性
 A5 (トピックス)長期地震活動に関するコメント
 A5 (トピックス)電磁気現象に関するコメント

【9】九州大学
 C 九州の地震活動(2001年5月〜2001年7月)
 C 九州南部の地震活動(2001年5月〜2001年7月)(鹿児島大)

【10】防災科学技術研究所
 C 関東・東海地域における最近の地震活動(2001年5月〜7月)
 C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2001年5月〜7月)
 A4 東海地域想定震源域における地震活動度変化(その7)
 A5 (トピックス)兵庫県南部地震前の地震活動静穏化

【11】産業技術総合研究所
 C 東海・伊豆地域の地下水観測結果(2001年5月〜7月)
 C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2001年5月〜7月)
 C 有馬−高槻−六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2001年5月〜7月)
 C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2001年5月〜7月)
 A5 (トピックス)兵庫県南部地震直前数年間の震源域のb-値低下と
   M7地震発生確率の増加
 A5 (トピックス)震災後の活断層調査結果からみた兵庫県南部地震の予測性について
 B 2001年5月10日〜6月30日におけるe-PISCOの宏観異常情報の日変化について

【12】水路部
 C GPSによる地殻変動監視観測
 C 襟裳岬沖の海底地質構造について
 C 秋田本荘(その1)における地質構造図

【13】通信総合研究所
 A4 VLBIによる首都圏広域地殻変動観測

【14】事務局
 C 中央防災会議「東海地震に関する専門調査会」(第6回)議事概要について
 C 「科学の考え方、学び方」 第1刷及び第11刷地震予知連絡会関連部分
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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