地震予知連絡会の活動報告

第146回地震予知連絡会(2002年2月18日) 議事概要

 平成14年2月18日、国土地理院関東地方測量部において第146回地震予知連絡会が開催され、全国の地震活動、全国の地殻変動などに関する観測・研究成果の報告が行われ議論がなされた。トピックスとしては、海底諸観測の開発状況について報告および議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.全国の地震活動について

 最近3ヶ月間では、北海道東方沖、東北地方内陸南部,南西諸島などの地域でM5を越える地震が発生した。
 M5以上の全国の地震 (2001.11.01−2002.1.31)(気象庁資料)

2.東海地域の地殻活動について

 東海地域の推定固着域周辺では、地殻内で地震数が平均より多い状態が続いている。フィリピン海スラブ内では,すべての地震で見ると平常レベルであるが、M2以上では地震数が少ない。
 固着域周辺の地震活動 (地殻内1997年以降)(気象庁資料)
 固着域周辺の地震活動 (フィリピン海スラブ内1997年以降)(気象庁資料)

 水準測量結果によると,掛川市の水準点140-1に対して浜岡町の水準点2595は隆起も沈降もなかったが、従来から見られるばらつきの範囲内の変動である。
 水準点2595(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)

 東海地域の異常地殻変動は、解析の際に固定する観測点の選び方により変動パターンに違いが見られたため、固定点についての検討を行ったが、従来どおり大潟を固定するのが妥当と考えられる。浜名湖周辺に集中していた異常地殻変動は、時間の経過とともに周囲に広がりつつあるようにも見えるが、観測誤差を越えた有意な変化とは言えない。異常地殻変動は現在も継続しており、プレート境界面のすべりに起因するものと仮定して計算すると、地震モーメントの積算量は1.2×1019Nm程度(Mw6.6〜6.7相当)になる。
 東海地方の異常地殻変動(大潟固定)(1)(国土地理院資料)
 東海地方の異常地殻変動(大潟固定)(2)(国土地理院資料)
 推定滑り分布の時間変化(暫定)(3)(国土地理院資料)

3.岩手県内陸南部の地震について

 2001年12月2日に岩手県内陸南部の深さ約120kmでM6.4の地震が発生した。この地震は沈み込んだ太平洋プレートの二重深発地震面の下面で発生した正断層型の地震であり、余震分布からはほぼ水平な断層面が推定された。
 2001年12月2日岩手県内陸南部の地震(M6.4)について(東北大学資料)

4.茨城県沖の地震活動について

 2002年2月12日に茨城県沖でM5.5の地震が発生した。茨城県沖では2000年7月にもM6.4の地震が発生しており、地震活動が活発化しつつある。過去の地震活動を見ると、茨城県沖では1923年以降に1923〜1924年、1940年代前半、1960年代、1982年の4回活発な活動期があり、最大でM7クラスの地震が発生していた。
 茨城県沖の地震活動の時間間隔について(気象庁資料)

5.伊豆大島における地殻変動と地震活動の関係について

 伊豆大島では、島の膨張が一時的に加速する時期のあることがGPS観測から見出され、この膨張と地震活動に相関のあることが分かった。2000年以降、大島の膨張は停滞傾向が続き、群発地震も起こらない状態が続いていたが、2001年10月頃から膨張傾向が再開し、それに呼応するように2001年12月から群発地震が発生した。
 伊豆大島における地殻変動と地震活動との関係(国土地理院資料)

6.与那国島近海の地震活動について

 2001年12月18日に与那国島近海でM7.3の地震が発生し、南北走向の断層面を震源とする正断層型の震源メカニズムが推定された。周辺のGPS観測点ではこの地震に関連する地殻変動が観測されている。1999年に台湾で発生したM7.7の地震以降に活発化したこの周辺の地震活動の中で発生した地震である可能性がある。
 与那国島近海の地震活動(気象庁資料)

7.海底諸観測の開発状況について

 トピックスでは,海底における地殻変動や地震の観測技術の開発状況について紹介があり、その内容について議論を行った(世話人:金澤敏彦委員)。海底における水平地殻変動の観測にはキネマティック方式のGPS観測と海中の音響測距を結合した方式が用いられており、3,4台の海底音響トランスポンダーを用いて海洋変動の影響をキャンセルする工夫がなされている。また、キネマティックGPSの試験観測では300km程度の基線について1cm程度の水平位置精度を達成できている。こうした方法により、三陸沖の日本海溝付近で海底地殻変動観測を行う計画が進められている(東北大学資料1資料2資料3資料4)。

 一方、海底の上下変動については、海底圧力計による観測が有効であり、2000年三宅島周辺の群発地震域で地震活動に関連する海底の沈降が検出された(東北大学資料5)。

 南海トラフはM8クラスの巨大地震が繰り返し発生している地域であり、プレート境界面の状態を把握するための海底地殻変動観測が必要である。そこで、南海トラフ全域に海底地殻変動観測網を展開する構想がある(名古屋大学資料)。海上保安庁水路部では、日本周辺のプレート境界に沿って海底地殻変動観測のための基準局を展開している。三宅島周辺では数ヶ月間にわたって数cm程度の再現性が得られており、現状の海底地殻変動観測の精度はこの程度と考えられる(海上保安庁水路部資料1資料2)。

 海底地震観測に関しては、自己浮上型海底地震計が完成の域に達している。最近では、恒久的な観測点としての海底孔内地震観測所や自由落下・自己浮上型の広帯域地震計が開発され、良好なデータが取得されている(東京大学地震研究所資料1資料2)。

 海底観測の技術開発は最近10年間に飛躍的な進歩を遂げており、近い将来には、地震予知や固体地球科学に対して多大な貢献をするものと期待される。そのためにも、各研究グループ間の連携を強めていくことが重要であるとの指摘がなされた。

地震予知連絡会在り方検討ワーキンググループの検討結果について(報告)

(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

【1】気象庁(A1)
 1.2001年11月〜2002年1月の全国のM5以上の地震と主な地震の発震機構解

 2.2001年11月〜2002年1月の北海道地方とその周辺の地震活動
   北海道東方沖の地震活動
   釧路沖の地震活動

 3.2001年11月〜2002年1月の東北地方とその周辺の地震活動
   岩手県内陸南部の地震
   三陸沖
   宮城県沖
   宮城県南部(愛子付近の地震活動)
   福島県中通り(那須岳付近)

 4.2001年11月〜2002年1月の関東・中部地方の地震活動
   茨城県南西部および南部の地震
   三宅島から新島・神津島にかけての地震活動
   東海地方の地震活動・地殻変動
   北陸周辺の地震活動
   長野県北部の地震活動と松代における地殻変動観測

 5.2001年11月〜2002年1月の近畿・中国・四国地方の地震活動
   京都府南部の地震活動
   和歌山県北部の地震活動(龍神村付近)
   紀伊半島付近の地震活動
   兵庫県北部の地震
   鳥取県西部地震の余震活動(「平成12年(2000年)鳥取県西部地震」)
   安芸灘の地震活動(「平成13年(2001年)芸予地震」)

 6.2001年11月〜2002年1月の九州地方とその周辺の地震活動
   奄美大島近海の地震活動

 7.2001年11月〜2002年1月の沖縄地方とその周辺の地震活動
   与那国近海の地震
   西表付近の地震活動
   東シナ海の地震

【2】国土地理院(A2)
 1.日本全国の地殻変動
  A2 GEONETによる最近1年間の地殻水平変動
  A2 GEONETによる最近3ヶ月の地殻水平変動
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(3ヶ月)
  A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1ヶ月)
  C GPS連続観測から推定した日本列島の歪変化

 2.東海地方の地殻変動
  A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動
  A2 水準点(140-1、2595)の経年変化
  A2 水準点2595(浜岡町)の経年変化
  C 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
  A2 水準点2602-1(菊川町)と10333(大東町)及び2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準点2602-1(菊川町)と2601(小笠町)の経年変化
  A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値)
  C 比高変化に対する近似曲線の計数変化
  C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差
  A2 東海地方の異常地殻変動
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺
  C GPS連続観測結果 駿河湾周辺(2) 
  A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺
  C GPS連続観測による基線長・比高変化に対する近似曲線の計数変化
  C GPS連続観測結果 静岡県西部
  A2 御前崎地区高精度比高連続観測
  C 御前崎長距離水管傾斜計月平均(E−W)
  C 地中地殻活動観測装置観測結果
  C 御前崎(小笠地区)精密辺長測量結果
  C 御前崎(浜岡地区)精密辺長測量結果

 3.伊豆地方の地殻変動
  C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差
  C 伊東東部連続観測(辺長)日平均結果
  C 川奈地区精密辺長測量結果
  C GPS連続観測結果 伊豆東部周辺
  A2 GPS連続観測結果 伊豆諸島北部周辺

 4.関東地方の地殻変動
  C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差
  C 鹿野山精密辺長連続観測結果
  C 八王子〜厚木〜横浜間の上下変動
  C 藤沢〜水準原点(甲)間の上下変動
  C 水準原点〜大宮〜野田〜船橋〜千葉間の上下変動
  C 我孫子〜船橋間の上下変動
  C 岩槻〜野田・野田〜我孫子間の上下変動
  C GPS連続観測結果 富士山周辺
  C 浅間山周辺の地殻変動について

 5.北海道地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 樽前山周辺

 6.東北地方の地殻変動
  C GPS連続観測結果 岩手山周辺
  C GPS連続観測結果 磐梯・吾妻周辺

 7.中部・近畿地方の地殻変動
  C 中京地方の上下変動
  C 阪神地方の上下変動
  A2 紀伊半島南部の下変動
  C 近畿・中部地方の上下変動
  C GPS連続観測結果 和歌山・奈良県境
  C GPS連続観測結果 兵庫県北部

 8.中国・四国地方の地殻変動
  C 広島市西区〜安佐北区間の上下変動
  C 岩国〜広島〜美原間の上下変動
  C GPS連続観測結果 鳥取県西部
  C GPS連続観測結果 安芸灘周辺
  C GPS連続観測結果 瀬戸内中部

 9.九州・沖縄地方の地殻変動
  C 九州地方の水平歪み
  C 与那国島近海の地震の断層モデル
  C GPS連続観測結果 与那国島

 10.その他
  C GPS連続観測結果 硫黄島

【3】北海道大学
  C 北海道とその周辺の最近の地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  C 2002年1月19日の北海道東方沖地震(M5.6)と阿寒湖付近の地震活動
  C 余市岳付近の地震活動

【4】東北大学
  A4 2001年12月2日岩手県内陸南部の地震(M6.4)について
  C 東北地方およびその周辺の微小地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  A5 (トピックス)海底地殻変動観測システムの開発と試験観測の進捗状況

【5】東京大学大学院理学系研究科
  C 東海地域における地球科学的観測について
  C 伊豆半島における地球科学的観測について
  C 福島県東部における地球科学的観測について

【6】東京大学地震研究所
  C 伊豆半島および伊豆諸島周辺の地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  C 御前崎における絶対重力変化(地震研・国土地理院)
  C 油壺観測壕(旧)における精密弾性波計測と比抵抗比較観測
                          (1998年11月〜2002年2月)
  C 日光・足尾付近の地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  C 相良観測点における歪・傾斜観測(2001年11月〜2002年1月)
  C 富士川・駿河湾地方における地殻変動観測(その26)
  C 紀伊半島およびその周辺域の地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  C 瀬戸内海西部とその周辺の地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  C 四国地方の地殻活動について(2002年2月)
  A5 (トピックス)長期・広帯域海底地震観測の現況

【7】名古屋大学
  A4 上下変動から推定する東海地域のプレート間カップリング
                          (1944年東南海地震以降)
  A4 東海地域GPS記録のべき関数への回帰(その後)
  C 東海地方の地震活動
  A5 (トピックス)観測の技術的課題と観測計画

【8】京都大学
  B 中部地方北西部の最近約30年間の地震発生数の変動について
  C 龍神温泉の温度測定
  C 飛騨山脈北部の微小群発地震

【9】九州大学
  C 九州の地震活動(2001年11月〜2001年1月)
  C 九州南部の地震活動(2001年11月〜2001年1月)(鹿児島大)
  A4 2001年12月9日奄美大島の地震について(鹿児島大)

【10】防災科学技術研究所
  C 関東・東海地域における最近の地震活動(2001年11月〜2002年1月)
  C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2001年11月〜2002年1月)
  A4 東海地域の推定固着域付近における地震活動変化について
    (その9:浜名湖下のスロースリップと地震活動変化)
  A4 埼玉県中部の地震活動について

【11】産業技術総合研究所
  C 東海・伊豆地域の地下水観測結果(2001年11月〜2002年1月)
  C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2001年11月〜2002年1月)
  C 有馬−高槻−六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果
                      (2001年11月〜2002年1月)
  C 近畿地域の地下水・歪観測結果(2001年11月〜2002年1月)
  C 産総研による平成12年度全国主要活断層調査概要

【12】水路部
  C 駿河湾北部から駿河湾南方の変動地形について
  C GPSによる地殻変動監視観測
  A5 (トピックス)観測網展開の計画と進捗状況

【13】通信総合研究所
  A4 VLBIによる首都圏広域地殻変動観測

【14】東京大学生産技術研究所
  A5 (トピックス)観測の技術的課題とその対応
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。
(A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑
(A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑
(A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑
(A4)各地域についての詳細検討
(A5)トピックス
(B) 話題提供
(C) 資料提出
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