地震予知連絡会の活動報告

第189回地震予知連絡会(2011年2月18日) 議事概要

 平成23年2月18日(金)、国土地理院関東地方測量部において第189回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動などに関するモニタリングについての報告が行われ、続いて重点検討課題として「海域のモニタリング技術の動向」に関する報告・議論が行われた。最後に次回の重点検討課題「プレート境界の固着と滑り −わかっていること、まだわからないこと−」に関する趣旨説明が行われた。以下に、その概要について述べる。

1.地殻活動モニタリングに関する検討

1.1地殻活動の概況

(1)全国の地震活動について

 国内で2010年11月から2011年1月までの3ヶ月間に発生したM5以上の地震は46個であった(気象庁資料)。通常より多めであるが、12月22日の小笠原近海の地震の余震が28個含まれているためである。

(2)日本列島の歪み変化

 GPS連続観測データによる最近1年間の日本列島の歪み図からは、北海道では2003年9月26日の十勝沖地震及び2008年9月11日と2009年6月5日の十勝沖の地震の余効変動の影響が見られる。東北地方では、2008年6月14日に発生した平成20年岩手・宮城内陸地震の余効変動の影響が見られる。伊豆諸島周辺では、北東−南西方向の伸びが依然として見られる。また、2008年頃から富士・箱根周辺で、北北東−南南西方向の伸びが見られる。2010年3月14日に発生した福島県沖の地震に伴う地殻変動の影響が見られる。豊後水道周辺ではスロースリップによる地殻変動の影響が見られる。この3ヶ月では新たな現象の追加はない(国土地理院資料)。

(3)日本周辺における浅部超低周波地震活動

 2010年12月末〜2011年1月初旬に十勝沖で小規模な活動があった。また、2011年1月中旬に日向灘で小規模な活動があったものの掲載基準を満たすイベントは僅少であった(防災科学技術研究所資料)。

1.2プレート境界の固着状態とその変化

(1)日本海溝・千島海溝周辺

・宮城県・福島県沖の地震の余効変動

 2005年8月16日の宮城県沖の地震(M7.2)、2008年5月8日の茨城県沖の地震(M7.0)、2008年7月19日の福島県沖の地震(M6.9)及び2010年3月14日の福島県沖の地震(M6.7)の余効変動に関して報告がされ、地震時と地震後のプレート境界面上の滑りの比較が示された。その結果、宮城県沖及び福島県沖では、地震発生域を含む形で地震後の余効滑りの領域とその大きさが推定された。福島県沖の余効滑りは、地震時の滑りよりも大きいことが示された(国土地理院資料)。

(2)相模トラフ周辺・首都圏直下

 2010年11月5日の茨城県南部の地震に関する調査により、プレート境界面上でいくつかの相似地震が発生しており、これらから求められた平均滑り速度はこの付近のフィリピン海プレートの沈み込み速度と矛盾しないことが報告された(気象庁資料)。

(3)南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・東海地方の地殻変動

 東海地方の水準測量結果(年周補正後)において、掛川市の水準点140-1に対し御前崎市の水準点2595は、前回と比較して沈降しており、従来の沈降のトレンド上にある(国土地理院資料)。また、東海地方の最近のすべり欠損は、スロースリップ発生前の状態に次第に戻りつつある(国土地理院資料)。

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況

 短期的なスロースリップを伴う顕著な微動活動が、東海地方では2010年11月13〜19日、紀伊半島北部では2010年11月26〜27日、四国中部から東部では2010年11月9〜22日、四国西部では2010年12月9〜16日及び2011年1月9〜15日にあった。またそれ以外の深部低周波微動活動が、紀伊半島北部で2010年11月15〜23日、四国西部で2010年11月16〜20日にあった(防災科学技術研究所資料)。

・日向灘で繰り返し発生するスロースリップ

 2005年以降、日向灘のプレート境界でスロースリップが繰り返し発生していることが報告された。スロースリップは、1996年の日向灘の地震の余効滑り域の深部側とほぼ同じ領域で起きていることが報告され、検討が行われた(国土地理院資料)。

2.重点検討課題「海域のモニタリング技術の動向」の検討

 本課題の目的は、海域におけるモニタリング技術の動向の把握、およびその高度化に向けた検討を行うことである。議論は、1)海域における地震モニタリング観測、2)海域における地殻変動モニタリング観測、の2部に分けて行われた。

◆第1部 海域における地震モニタリング観測

 長期観測型の海底地震計による繰返し観測について報告がなされ、根室沖から房総沖にかけての震源分布やプレート境界の3次元形状を求めた成果などが紹介された(東京大学地震研究所・山田知朗助教資料)。気象庁によるケーブル式常時海底地震観測システムについて報告があり、海底地震計を用いることにより震源の深さの決定精度が向上する事例が紹介された(気象庁・長谷川洋平地震情報企画官資料)。地震・津波観測監視システム(DONET)によるモニタリングが紹介され、熊野灘の地震(2011/1/8)の観測事例などを通じて、地震・津波の早期検知が可能となることが報告された(海洋研究開発機構・有吉慶介研究員資料)。海底における高密度地震観測のために新規開発された小型のケーブル式海底地震観測システムが紹介され、粟島沖に設置したシステムではノイズの少ない結果が得られていることが報告された(東京大学地震研究所・篠原雅尚教授資料)。

◆第2部 海域における地殻変動モニタリング観測

 宮城県沖のGPS/音響測距による海底地殻変動観測で、地震発生からひずみの蓄積開始までの一連の地殻変動を検出することに成功したことが報告された(海上保安庁海洋情報部・佐藤まりこ主任研究官資料)。名古屋大学のGPS/音響測距観測システムが紹介され、熊野灘および駿河湾の観測でプレートの収束に伴う地殻変動が検出された事例と海上多点方式による海中音速の推定に関する試みが報告された(名古屋大学・田所敬一准教授資料)。観測の自動化・効率化を目指した、AUV(自律型無人潜水機)と海底ケーブル技術を取り入れた新しい海底地殻変動観測システムの開発の取り組みが紹介された(東京大学生産技術研究所・望月将志助教資料)。GPS/音響測距観測において測位精度を低下させる最大の要因である海中音速の水平方向の違いを、海底局を追加することにより推定する試みが紹介された(東北大学・藤本博己教授資料)。

    

3.次回(第190回)重点検討課題「プレート境界の固着と滑り −わかっていること、まだわからないこと−」の趣旨説明

 過去4回にわたって行われてきたプレート境界の固着と滑りに関する検討を振り返る。プレート境界の特徴的な領域や現象を取り上げ、それぞれについて議論を行うことにより、今までにわかったことと、まだわからないことを明らかにすることをめざす。議論は、1)地震発生と余効すべり、2)固着とすべりの測地学的モニタリング、3)固着とすべりの地震学的モニタリング、4)プレート境界すべり域の4つのテーマに沿って行われる予定である。



【その他資料】
第21期重点検討課題のまとめ[PDF:7.6MB]



(事務局:国土地理院)

各機関からの提出議題

《地殻活動モニタリング》


【1】気 象 庁

 1.地殻活動の概況

  a.地震活動

   O 全国M5以上の地震と主な地震の発震機構

   S 東海地域の地震活動

 2.プレート境界の固着状態とその変化

  a.日本海溝・千島海溝周辺

   S 根室半島南東沖の地震(11月19日M4.8)

   S 青森県東方沖の地震(12月6日M5.8)

   S 茨城県沖の地震(11月24日M4.9)

  b.相模トラフ周辺・首都圏直下

   O 茨城県南部の地震(11月5日M4.6)

   S 東海・南関東地方の地殻変動

  c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺

   S 東海・南関東地方の地殻変動

  d.その他

   S チリ中部沿岸の地震(1月3日Mw7.2)

 3.その他の地殻活動等

   S 石狩地方中部の地震(12月2日M4.6)

   S 小笠原諸島西方沖の地震(11月30日M7.1)

   O 父島近海の地震(12月22日M7.4)

   S 新潟県下越沖の地震(1月3日M4.7)

   S 硫黄島近海の地震(1月10日M6.0)

   S 小笠原諸島西方沖の地震(1月13日M6.3)

   S 伊豆大島近海の地震(1月31日M4.2)

   S 徳島県北部の地震(1月16日M4.5)

   S 奄美大島北東沖の地震(2月4日M5.0)

   S 千葉県南東沖の地震(2月5日M5.2)

   S バヌアツ諸島の地震(12月25日Mw7.3)

   S ローヤリティー諸島の地震(1月14日Mw7.0)

   S パキスタン南西部の地震(1月19日Mw7.2)



【2】国土地理院

 1.地殻活動の概況

  b.地殻変動

   O GEONETによる全国の地殻水平変動

   O GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差

   O GPS連続観測データから推定した日本列島の歪み変化 

 2.プレート境界の固着状態とその変化

  a.日本海溝・千島海溝周辺 

     S 北海道太平洋岸 GPS連続観測時系列

   S 基線ベクトルの成分変位と速度グラフ

   S 2004年釧路沖の地震以降の累積推定すべり分布

   S 利府町〜石巻市間の上下変動

     S 東北地方太平洋岸 GPS連続観測時系列

   S 牡鹿地区GPS繰り返し観測

   S 宮城・福島・茨城県太平洋岸 GPS連続観測時系列 

   O 宮城・福島県沖の非定常すべり

  b.相模トラフ周辺・首都圏直下 

   S 館山市〜南房総市間の上下変動

   S 館山市〜勝浦市間の上下変動

   S 君津市〜館山市間の上下変動

   S 富津市〜鴨川市間の上下変動

   S 房総半島南部の上下変動

   S 横浜市〜水準原点(甲)間の上下変動

   S 三浦半島東側の上下変動

     S 館山地殻活動観測場観測結果

     S 鹿野山精密辺長連続観測

     S 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差

   O 伊豆東部の上下変動

   O 静岡〜熱海〜藤沢間の上下変動

     S 伊豆半島および伊豆諸島の地殻水平・上下変動図

   S 精密辺長測量 川奈地区

  c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺

     S 東海地方各験潮場間の月平均潮位差

   O 森〜掛川〜御前崎間の上下変動

   O 菊川市付近の水準測量結果

   S 御前崎周辺 GPS連続観測時系列

   S 駿河湾周辺 GPS連続観測時系列

     S 御前崎長距離水管傾斜計月平均値

     S 御前崎・切山長距離水管傾斜計による傾斜変化

   S 精密辺長測量 切山地区

   S 御前崎地中地殻活動観測装置観測結果

   S 御前崎における絶対重力変化

   O 東海地方の最近の地殻変動及び非定常地殻変動

   O 高知市〜室戸市間の上下変動

   O 豊後水道の地殻変動

   O 豊後水道の地殻変動モデル

   O 豊後水道周辺の深部低周波微動活動と非定常な地殻変動

   O 豊後水道スロースリップに伴う足摺岬周辺の観測値と計算値

   O 異なるモデル領域を用いた場合の推定結果の比較

   O 日向灘で繰り返し発生するスロースリップイベント

 3.その他の地殻活動等

   S 有珠山地区の上下変動

   S 高度地域基準点測量による知床・道東地区の水平歪

   S さいたま市北区〜千代田区間の上下変動

   S 中央区〜君津市間の上下変動

   S 高度地域基準点測量による関東北部・甲信地区の水平歪

   O 静岡〜富士宮〜御殿場間の上下変動

   O 御殿場〜小田原間の上下変動

     S 伊豆半島東部地区 GPS連続観測時系列

   S 伊豆諸島地区 GPS連続観測時系列

   S 柏崎市〜長岡市間の上下変動

   S 中京地方の上下変動

   S 精密辺長測量 跡津川地区

   O 霧島山の変動源による周囲での応力変化(ΔCFF)

   S 父島近海の地震(2010年12月22日M7.4)前後の地殻変動

   O 2010年12月20日イラン南東部の地震InSAR解析結果



【3】北海道大学

   議題提出無し



【4】東北大学

     議題提出無し



【5】東京大学地震研究所

 3.その他

   S 富士川・駿河湾地方における地殻変動観測(その35)

   S 弥彦地殻変動観測所における傾斜観測(1967-2010)



【6】東京工業大学

   議題提出無し



【7】名古屋大学

   議題提出無し



【8】京都大学防災研究所

 3.その他

   S 近畿地方北部の地殻活動

   S 新燃岳の噴火活動に伴う伊佐観測室における歪変動



【9】九州大学

   議題提出無し



【10】鹿児島大学

   議題提出無し



【11】統計数理研究所

   議題提出無し



【12】防災科学技術研究所

 2.プレート境界の固着状態とその変化

  b.相模トラフ周辺・首都圏直下

   S 関東地方のGEONET観測網による地殻変動観測(2008年1月〜2011年1月)

  c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺

   S 関東・東海地域における最近の傾斜変動

   S 伊豆地域・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGPS観測網による地殻変動の観測

                               (2009年4月〜2011年1月)

   S 2010年11月5日 茨城県南西部の地震

   O 日本周辺における浅部超低周波地震活動(2010年11月〜2011年1月)(2aを含む)

   O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況(2010年11月〜2011年1月)



【13】産業技術総合研究所

 2.プレート境界の固着状態とその変化

  c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺

   S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2010年11月〜2011年1月)

   S  紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2010年11月〜2011年1月)

 3.その他の地殻活動等

   S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2010年11月〜2011年1月)

                       -- 神奈川県温泉地学研究所・産総研 --

   S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2010年11月〜2011年1月)

   S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2010年11月〜2011年1月)

   S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2010年11月〜2011年1月)

                     -- 鳥取大学工学部・産総研 --



【14】海上保安庁

 1.地殻活動の概況

  b.地殻変動

   S GPSによる地殻変動監視観測

 2.プレート境界の固着状態とその変化

  a.日本海溝・千島海溝周辺

   O 宮城沖・福島沖における海底地殻変動観測結果

  d.その他

   S 12月22日父島近海の地震の震央域付近の海底地形および地震による津波記録


記載分類は以下のとおりとなっています。

  1.地殻活動の概況

  a.地震活動

  b.地殻変動

  2.プレート境界の固着状態とその変化 

   a.日本海溝・千島海溝周辺

  b.相模トラフ周辺・首都圏直下

  c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 

  d.その他

  3.その他の地殻活動等



(O)口頭発表

(S)資料提出のみ

重点検討課題「海域のモニタリング技術の動向」プログラム

○冒頭説明(趣旨説明者 篠原委員)

 現在、プレート境界では、通常の地震の他に、多様なすべり現象が発見されている。しかしながら、現象が発生している場所の直上にあたる海域におけるデータはほとんどないことから、その発生状況を正確に把握することが難しい状況となっている。そこで、今後行われるであろう予測シミュレーションをも視野に入れて、海域におけるモニタリング技術の動向の把握、およびその高度化に向けた検討を行う。  

第1部 海域における地震モニタリング観測


○長期観測型OBSを用いた繰り返し観測によるモニタリング

   東京大学地震研究所 山田 知朗

○気象庁の海底ケーブル観測システム

   気象庁 長谷川 洋平

○地震・津波観測監視システム(DONET)によるモニタリング

   海洋研究開発機構 有吉 慶介

○新たに開発したインライン式海底地震観測システム

   東京大学地震研究所 篠原 雅尚

第2部 海域における地殻変動モニタリング観測


○海上保安庁のGPS/A観測システムとその結果

   海上保安庁 佐藤 まりこ

○名古屋大学のGPS/A観測システムとその成果

   名古屋大学 田所 敬一

○AUVと海底ケーブルを用いたGPS/A海底地殻変動観測システム

   東京大学生産技術研究所 望月 将志

○GPS/A観測、海底上下変動観測と海底測距観測

   東北大学 藤本 博己

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