地震予知連絡会の活動報告
第116回地震予知連絡会(1995年8月21日) 議事概要
平成7年8月21日、国土地理院関東地方測量部において、第116回地震予知連絡会が開催され、東海地方の地殻活動、兵庫県南部地震の余震活動等について、関係機関、国立大学から観測及び研究結果の報告がなされ、議論が行われました。以下に主な議事の概要を紹介します。
1.東海地方の地殻活動
駿河湾とその周辺の地震活動は、1992年以降駿河湾内の活動が活発化し、それ以前の活動から変化しているように見られる(日大茂木会長資料)。
地震活動と地殻変動を並べてみると、地震活動では1992年以降の発生回数の増加、地殻変動では1992年頃より御前崎の沈降の停滞、静岡側の距離の短縮の停滞が見られ、やはり1992年ころから地殻活動の様相が変化していることが明らかである(日大茂木会長資料)。1986年頃にも地震回数の増加が見られるが、静岡側の距離に短縮が見られるなど、今回とはパターンが異なる。
御前崎の上下変動は、7月の測量によると、4月から御前崎が約8mm、年周変化補正後で約2mm、隆起となる(国土地理院資料)。東海地方全域の測量を行う毎年7月の結果だけで見ても、1992年頃から沈降が停滞していること明らかである。静岡県による短距離水準測量の結果では、1994年半ばに傾斜ベクトルが大きく変動した様子が見られるが(静岡県資料)、基準とした水準点に近接した点の変動が大きく(静岡県資料1,資料1)、更に解析を進める必要がある。
いずれにせよ、多くのデータにパターンの変化が見られるので、今後注意深く見守っていくこととした。
2.兵庫県南部地震の余震活動
兵庫県南部地震の余震活動は、順調に減少しているが、余震域の北東延長にあたる北摂・丹波地方で本震発生直後から、地震活動の活発化が見られ、依然減衰する兆候は見られない(京都大学防災研究所資料)。本震発生前の約10日間、北摂・丹波地方の地震活動の静穏化が見られ、兵庫県南部地震の発生と関連があるものと考えられる。
第116回地震予知連絡会記者発表の概要
1.日 時 平成7年8月21日(月) 18:00〜19:10 2.場 所 第1合同庁舎共用第1会議室 3.出席者 茂木会長、宇津副会長、塚原委員、田中委員、橋本地殻変動解析室長 4.資料説明 (1)東海地方の地震活動と地殻変動の経年変化(茂木会長) (2)最近の駿河湾とその周辺の地震活動(茂木会長) (3)水準点2595(浜岡町)の経年変化(塚原委員・橋本室長) (4)静岡県による水準測量結果(茂木会長) (5)兵庫県南部地震前後の周辺地域における地震活動について(田中委員)
5 質疑の概要
(東海地域の地殻活動と今後の見通しについて)
回答:東海地方の地震活動・地殻変動などが1992年頃から全部変化してきているのは最近なかったことであるが、1987年以前は微小地震の詳しいデータもないのでよくわからない。変動のふらつきを見ているのに過ぎないかもしれないが、注意して見守っていく。今のところ短期的な前兆にあたる異常は見当たらない。
(東海地方の水準測量結果について)
回答:今回(1995年7月)掛川を基準にして浜岡が昨年から隆起したが、隆起量は誤差の範囲である。
(近畿地方の今後の地震活動について)
回答:今後の地震活動については良くわからないが、丹波山地と山崎断層付近で地震活動が増加しており、注意深く見守っていく。南海トラフで発生する大地震の50年位前から、西南日本内陸部でM7クラスの地震が繰り返し発生した例が過去にあり、1946年の南海道地震から約50年経過していることから、関西地方は注意すべき時期にさしかかっていると考えている。
資料報告及び討議内容(目次のみ)
(1)東海地方 1 東海地方の微小地震の分布(1995年5月〜1995年7月) 名大理 2 GPSによる中部・東海地域における地殻変動(1991年〜1995年) 名大理 3 1995年6〜7月駿河湾中部の地震活動 防災科研 4 東海地域想定震源域における発震機構解の変化 防災科研 5 東海地方の重力変化 名大理・京大理・京大防災研・地理院・天文台 6 東海・南関東地域の地震活動 気象庁 7 東海地方における地震活動の変化 気象庁 8 東海・南関東地域における歪観測結果 気象庁 9 東海地方における地球化学的観測 東大理 10 東海地域地下水観測結果(1995年5月〜1995年8月) 地質調査所 11 東海地方の地殻変動 地理院 12 静岡県相良町および静岡市上坂における地殻傾斜連続観測 静岡大・静岡県 13 最近の東海地方の地殻活動について 日大 (2)伊豆地方 1 伊豆半島およびその周辺の地震活動 気象庁 2 伊豆半島付近の地震活動(1995年5月〜1995年7月) 東大地震研 3 伊豆半島の地殻変動 地理院 4 伊豆半島における地球化学的観測 東大理 5 伊豆半島における地磁気・地電流観測 東工大理 6 伊豆地域地下水観測結果(1995年5月〜1995年8月) 地質調査所 (3)近畿地方 1 北摂・丹波山地の地震活動(2) 京大理・京大防災研 2 兵庫県南部地震余震域のメカニズム 京大理・京大防災研 3 兵庫県猪名川町群発地震について 京大理・京大防災研 4 GPS観測による兵庫県南部地震の余効変動 京大理・京大防災研 5 地殻活動総合観測線における観測結果(暫定値) 京大理・京大防災研 6 兵庫県南部地震前後の周辺の地下水・温泉水の変化について(2) 京大理・京大防災研 7 六甲高雄観測室の湧水量とボアホール歪計による観測結果(1993年11月〜1995年7月) 京大理・京大防災研 8 桑名断層および伊勢湾断層の地下構造 京大理・京大防災研 9 近畿地方とその周辺の地震活動 気象庁 10 紀伊半島およびその周辺部の地震活動(1995年4月〜6月) 東大地震研 11 兵庫県南部地震前後の地下水の化学組成変化 東大理 12 兵庫県南東部における短い測点間隔の水準繰り返し観測結果 (1995年3月〜1995年6・7月) 地質調査所 13 近畿地方の地殻変動 地理院 14 兵庫県南部地震前の地震活動(続報) 日大 (4)北海道地方 1 北海道とその周辺の最近の地震活動(1995年5月〜1995年7月) 北大理 2 北海道地方の地殻変動連続観測 北大理 3 北サハリン地震調査報告 北大理 4 北海道地方とその周辺の地震活動 気象庁 5 北海道地方の地殻変動 地理院 (5)東北地方 1 東北地方およびその周辺の微小地震活動(1995年5月〜7月) 東北大理 2 東北地方における地殻変動連続観測 東北大理 3 福島県東部における地球化学的観測 東大理 4 東北地方とその周辺の地震活動 気象庁 5 江刺における地殻変動連続観測 天文台 6 東北地方の地殻変動 地理院 (6)関東・中部地方 1 関東・東海地域における最近の地震活動(1995年5月〜7月) 防災科研 2 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(1995年5月〜7月) 防災科研 3 GPS固定観測網による関東・東海地域の地殻変動(1995年1月〜6月) 防災科研 4 1995年7月30日佐原市付近の地震(M=5.4) 防災科研 5 関東甲信越地域の地震活動(1995年5月〜1995年7月) 地震研 6 南関東地域とその周辺部における連続性地震活動の事例について 地震研 7 長野県白馬村の小群発地震活動 地震研 8 関東・中部地方とその周辺の地震活動 気象庁 9 日本列島内陸部の地震活動空白域の再調査−関東地方・新潟県以西 気象庁 10 相模湾域におけるGPS地殻変動監視観測(平成2年5月〜7年7月) 水路部 11 首都圏広域地殻変動観測システムの観測状況 通総研 12 関東・中部地方の地殻変動 地理院 (7)中国・四国・九州・沖縄地方 1 瀬戸内海西部とその周辺地域の地震活動(1995年5月〜7月) 地震研 2 広島・山口県境付近の地震活動(1995年3月〜7月) 地震研 3 西南日本内帯の地震活動 京大理・京大防災研 4 九州東・南部の地震活動 京大理・京大防災研 5 中国、四国、九州、沖縄地方とその周辺の地震活動 気象庁 6 九州中・北部の最近の地震活動 九大理 7 九州南部の最近の地震活動 鹿児島大理 8 中国・四国・九州地方の地殻変動 地理院 (8)その他 1 日本とその周辺の地震活動 気象庁 2 地磁気永年変化精密観測 気象庁 3 「要注意断層」の再検討 熊本大理 4 100万分の1大陸棚の海の基本図「南西諸島東方」に見る日本南方海域の 島弧海溝系・背弧海盆の特徴 水路部 5 一次基準点測量第2回改測結果 地理院
(事務局:国土地理院)