地震予知連絡会の活動報告

第225回地震予知連絡会(2019年11月22日)議事概要

 令和元年11月22日(金)、国土地理院関東地方測量部において第225回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われ、その後、重点検討課題として「地震発生の予測実験の試行06」に関する報告・議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

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1.地殻活動モニタリングに関する検討

1.1 地殻活動の概況

(1)全国の地震活動について

 国内で2019年8月から2019年10月までの3か月間に発生したM5以上の地震は26回であった(気象庁資料3頁)。

(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動

 期間内に目立った浅部超低周波地震は検出されなかった(防災科学技術研究所資料4頁)。

(3)日本列島のひずみ変化

 GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震及び熊本地震の余効変動、九州北部・四国西部のスロースリップ、種子島近海の地震及び山形県沖の地震の影響が見られる(国土地理院資料5頁)。

1.2 プレート境界の固着状態とその変化

(1)駿河トラフ・南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
 短期的スロースリップを伴う顕著な微動活動が四国中部から東部(9月12日から19日)、四国西部から中部(8月10日から18日)で発生した。それ以外の主な微動活動は、東海地方(8月3日から7日)、紀伊半島南部(8月4日から6日)で発生した(防災科学技術研究所資料6−9頁)。
 GNSS連続観測により、8月上旬から中旬にかけて四国西部から中部で、9月上旬から中旬にかけて四国東部で短期的スロースリップが検出された。プレート間の滑りを推定した結果、四国中部で最大20mmの滑りが、四国東部で最大9mmの滑りが推定された(国土地理院資料10−13頁)。

1.3 その他

(1)福島県沖の地震(8月4日M6.4)

 2019年8月4日に福島県沖の深さ45kmでM6.4の地震(最大震度5弱)があった。発震機構は西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型であり、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した(気象庁資料14頁)。

2.重点検討課題「地震発生の予測実験の試行06」の検討

 前震を用いた確率予測、本震直後の余震の確率予測や最大震度予測、時間・空間の地震活動予測等、短期予測を中心とした課題に関する報告及び議論が行われた(コンビーナ:統計数理研究所・尾形良彦委員資料16-17頁)。

◆群発的地震活動を前震活動と仮定して行う本震の発生予測手法(5): 最近の活動事例による検証とETAS モデルとの比較

 前震活動に基づく予測モデルを用いた発生予測に関するこれまでの結果について報告があった。過去1年では長野県中部と九州中部で、通算では日本海溝3領域と長野県中部で予知率や適中率が下がったことが紹介された。また、ETASモデルによる合成データと実データを利用した検証等を通じて、定常時間ETASモデルや時空間ETASモデルより、前震活動に基づく予測モデルの方が予測率や的中率などが有意に高いことが示された(気象研究所・前田憲二技術専門官(気象庁地震予知情報課から併任)資料18頁)。

◆多様な予測方式に対する前震識別モデルとその予測性能評価

 前震を識別することで将来の本震の発生確率を予測する手法とその性能評価について報告があった。予測方式に応じて予測期間やマグニチュードを適宜調整することにより前震の識別性能を向上させる方法が紹介され、これを適用することで国内外の地震とも良い予測性能を持つこと等が示された(統計数理研究所・野村俊一助教資料19頁)。

◆日本における余震活動のリアルタイム確率予測

 余震活動の確率予測をリアルタイムに行うシステムについて報告があった。統計数理的な手法を用いて余震の検出確率を推定し予測に取り込むことで、自動処理で得られた震源カタログにおいても有効な予測が可能であること等が示された(東京大学生産技術研究所・近江崇宏特任准教授資料20頁)。

◆連続地震計記録を用いた余震による最大振幅の予測について

 地震カタログを使用せず、地震計記録を直接利用することで余震の揺れを予測する手法について報告があった。連続地震計記録の統計的解析を通じて得られた最大振幅の発生確率を用いることで、地震カタログの整備が不十分な時間帯や場所においてもリアルタイムで余震による最大振幅の確率予測が可能になること等が紹介された(防災科学技術研究所・澤崎郁特別研究員資料21頁)。

◆日本周辺の海溝における準リアルタイム群発地震モニタリング

 日本周辺の海溝の地震活動を監視し、準リアルタイムで群発的な地震活動を検出するシステムについて報告があった。2019年4月から運用が開始された本システムは、4時間ごとに日本周辺を解析しており、2019年9月までの約半年間に熊本県芦北町及び種子島東方沖で発生した2つの群発地震を検出したことが紹介された(京都大学防災研究所・西川友章学振研究員資料22-23頁)。

◆群発地震活動の非定常ETASモデルによる検出と測地学データに基づく予測可能性について

 非定常ETASモデルを用いた群発地震の検出及び測地データを用いた群発地震の予測に関する報告があった。房総半島沖や茨城県沖の解析を通じて、常時地震活動を示すパラメータの時間変化を用いて群発地震の検出が可能であり、その多くがスロースリップの発生時期と対応することが示された。また、伊豆東方沖における体積ひずみ計のデータから群発地震活動の規模を予測した研究成果が紹介された(東京大学地震研究所・熊澤貴雄特任助教資料24頁)。

◆階層的時空間ETASモデルによる短期・中期予測と結果

 階層的時空間ETASモデルを用いて20世紀の地震のデータから求めた背景地震活動の空間パターンが21世紀の大地震や歴史被害地震とよく対応し、関東地方を対象とした昨年6月時点の予測とその後のM3以上の地震に対応が見られることが示された(統計数理研究所・尾形良彦委員資料25頁)。

3.次回(第226回)重点検討課題「地表に痕跡を残さない地震」の趣旨説明

 第226回地震予知連絡会の重点検討課題として、「地表に痕跡を残さない地震」を取り上げる。北海道胆振東部地震等を例にして地表に明瞭な痕跡を残さない地震の特徴を整理するとともに、強震動特性の検討等を行う予定である(コンビーナ:北海道大学・高橋浩晃委員資料26頁)。

各機関からの提出議題

《地殻活動モニタリングに関する検討》

【1】気 象 庁
1.	地殻活動の概況
a.	地震活動
   O 全国M5.0以上の地震と主な地震の発震機構
    ・2019年8月〜2019年10月の全国の地震活動概況を報告する。
2.	東北地方太平洋沖地震関連
   S 東北地方太平洋沖地震余震域の地震活動
3.プレート境界の固着状態とその変化
a.日本海溝・千島海溝周辺
   O 福島県沖の地震(8月4日 M6.4)
    ・2019年8月4日19時23分に福島県沖の深さ45kmでM6.4の地震(最大震度5弱)が発生した。
     この地震は、発震機構(CMT解)が西北西−東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、
     太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した。
   S 青森県東方沖の地震(8月29日 M6.1)
   S 青森県東方沖の地震(9月7日 M5.0)
b.相模トラフ周辺・首都圏直下
   S 東海・南関東地方の地殻変動
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 南海トラフ沿いの地震活動
   S 東海地域から豊後水道にかけての深部低周波地震活動
   S 南海トラフ沿いの長期的スロースリップの客観検知
   S 東海・南関東地方の地殻変動
   S 東海の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(8月1日〜8日)
   S 紀伊半島中部の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(8月3日〜7日)
   S 四国の深部低周波地震活動とゆっくりすべり(8月1日〜20日、2018年秋頃〜)
   S 紀伊半島西部の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(9月5日〜8日)
   S 四国の深部低周波地震活動とゆっくりすべり(9月12日〜20日、2018年秋頃〜)
d.その他
   S 全国GNSS観測点のプレート沈み込み方向の位置変化
4.その他の地殻活動等
   S 青森県三八上北地方の地震(8月15日 M5.5、M4.5)
   S 福島県沖の地震(8月24日 M5.6)
   S 福島県沖の地震(11月3日 M5.0)※期間外
   S 千葉県南東沖の地震(10月12日 M5.7)
   S 茨城県沖の地震(11月8日 M4.4)※期間外 
   S 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測 
   S 石垣島近海の地震(8月24日 M5.2)
   S 台湾付近の地震(8月8日 M6.4)

【2】国土地理院 
1.	地殻活動の概況
b.	地殻変動
   O GEONETによる全国の地殻水平変動
   O GEONETによる2期間の地殻変動ベクトルの差
   O GNSS連続観測から推定した日本列島のひずみ変化
2.	東北地方太平洋沖地震関連
   O 地殻変動ベクトル
   O GNSS連続観測時系列
   S 成分変位と速度グラフ
3.	プレート境界の固着状態とその変化
b.	相模トラフ周辺・首都圏直下
   S 伊豆半島・伊豆諸島の水平上下変動
c.	南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 森〜掛川〜御前崎間 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
   S 森〜掛川〜御前崎間 高精度比高観測点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
   S 森〜掛川〜御前崎間 高精度比高観測
   S 御前崎周辺 GNSS連続観測時系列
   S 駿河湾周辺 GNSS連続観測時系列
   S 東海地方の地殻変動
   S 東海地方の非定常地殻変動
   S 静岡県浜松市〜御前崎市〜静岡市間の上下変動 水準測量
   S 渥美半島の上下変動 水準測量
   S 紀伊半島 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
   S 和歌山県田辺市〜串本町間の上下変動 水準測量
   S 和歌山県串本町〜新宮市間の上下変動 水準測量
   S 紀伊半島の各水準点の経年変化
   S 奈良県十津川村〜和歌山県新宮市間の上下変動 水準測量
   S 三重県伊勢市〜紀宝町間の上下変動 水準測量
   S 南海トラフ周辺 GNSS連続観測時系列
   S 南海トラフ沿いの地殻変動
   S 南海トラフ沿いの非定常地殻変動
   O 四国地方の非定常水平地殻変動
    ・四国中部・西部地方及び四国東部において、深部低周波微動と同期したスロースリップをGNSSデータから推定したので、
     その概況を報告する。
   S 室戸岬周辺 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
   O 九州北部の非定常水平地殻変動
    ・2018年春頃から九州北部で、2018年秋頃から四国西部でこれまでの傾向とは異なる地殻変動をGNSSで観測したので、
     その概況を報告する。

4.	その他の地殻活動等
   S 北海道太平洋岸 GNSS連続観測時系列
   S 伊豆東部地区 GNSS連続観測時系列
   S 伊豆諸島地区 GNSS連続観測時系列

【3】北海道大学

【4】東北大学理学研究科・災害科学国際研究所

【5】東京大学地震研究所

【6】東京工業大学

【7】名古屋大学

【8】京都大学理学研究科・防災研究所

【9】九州大学

【10】鹿児島大学

【11】統計数理研究所

【12】防災科学技術研究所
3.	プレート境界の固着状態とその変化
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   O 日本周辺における浅部超低周波地震活動
    ・期間内に本解析で目立った活動は検出されなかった。
   S 南海トラフ周辺における最近の傾斜変動
   O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
    ・短期的スロースリップイベントを伴う顕著な微動活動が、四国東部から中部で9月12日〜19日に、
     四国西部から中部で8月10日〜18日にみられた。
     また、それ以外の主な微動活動が、東海地方で8月3日〜7日に、紀伊半島南部で8月4日〜6日にみられた。
4.	 その他の地殻活動等
   S 2019年6月18日山形県沖の地震による高周波エネルギー輻射量

【13】産業技術総合研究所
3.	プレート境界の固着状態とその変化
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2019年8月〜2019年10月)
   S 紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2019年8月〜2019年10月)
   S 東海・紀伊半島・四国における短期的スロースリップイベント(2019年8月〜2019年10月)
4.	その他の地殻活動等
   S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2019年8月〜2019年10月)
   S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2019年8月〜2019年10月)
   S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2019年8月〜2019年10月)
   S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2019年8月〜2019年10月)

【14】海上保安庁
2.	東北地方太平洋沖地震関連
   S 日本海溝沿いの海底地殻変動観測結果
3.	プレート境界の固着状態とその変化
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 南海トラフ沿いの海底地殻変動観測結果

【15】海洋研究開発機構

【16】その他の機関
記載分類は以下のとおりとなっています。
1.地殻活動の概況
 a.地震活動
 b.地殻変動
2.東北地方太平洋沖地震関連
3.プレート境界の固着状態とその変化
 a.日本海溝・千島海溝周辺
 b.相模トラフ周辺・首都圏直下
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
 d.その他
4.その他の地殻活動等

 ・口頭報告(O)
 ・資料提出のみ(S)