地震予知連絡会の活動報告
第141回地震予知連絡会(2001年2月19日) 議事概要
平成13年2月19日、国土地理院関東地方測量部において、第141回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動の概要の報告及び、北海道、関東、東海・中国・沖縄地方の地殻活動等について、大学、関係観測研究機関より観測・研究成果の報告があり、議論がなされた。次に今回のトピックスとして日本海東縁部の地殻活動に関し、大学・関係各機関からこれまでの観測・調査研究の報告があり、討議が行われた。 以下に観測調査結果の報告と討議の内容についてその概要を述べる。
1.全国の地震活動
日本列島周辺の地震活動については、この3ヶ月間にM5以上の地震が13個発生した。その内、新潟、兵庫県北部地方の活動が目立ったものである。
全国のM5以上の地震活動 (2000.11.01-2001.1.31)(気象庁資料)
2.東海地方の地震活動と地殻活動
御前崎地方の地殻変動については、2001年1月の水準測量の結果によると、浜岡の水準点2595は前回観測よりも10.6mm沈降した。年周変化を取り除いた値では5.4mmの沈降であり、例年の傾向と比較しても通常の範囲の変動と考えられる。過去6年間のGPS観測の結果も定常的な沈降を示している。
水準点2595(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)
東海地方の固着域におけるフィリピン海プレートの地震活動は、上盤側では静穏化が引き続き進行し、下盤側では、昨年後半から地震活動が活発化し通常の活動度に戻るような傾向が観測されている。
東海地方の固着域付近における地震活動度の変化について(1)(防災科学技術研究所資料)
東海地方の固着域付近における地震活動度の変化について(2)(防災科学技術研究所資料)
また遠州灘から熊野灘の地震活動が2000年始めから顕著な低下傾向を示し、その後昨年10月31日にM5.5の三重県中部地震が発生していた事が報告された。
遠州灘〜熊野灘の地震活動(気象庁資料)
3.伊豆諸島の地震活動と地殻変動
2000年6月末から始まった地震活動は、現在ほぼ収まっており、ここ3ヶ月間では、M4以上の地震は殆どみられない。しかしながら、回数積算図から現在の地震発生頻度は2000年伊豆諸島地震前の活動と比べてまだ活発である事が報告された。
三宅島付近から新島・神津島付近にかけての最近の地震活動(気象庁資料)
また三宅、神津島地域の地下速度分布を基にして再決定された地震分布によると、2000年伊豆諸島の地震活動は堆積層より下の深さ5km以深の領域で発生していた事が示された。
2000年伊豆諸島の地震活動(東京大学地震研究所資料)
また、国土地理院のGPS観測結果では、ここ3ヶ月間の地殻変動で新島、神津島間が開く傾向が小さいながらまだ継続していることが示された。
伊豆諸島水平変動ベクトル図(国土地理院資料)
4.伊豆東方沖の地震活動
伊豆東方沖では、地震活動は1998年の活動を最後に落ち着いた状態が続いている。
2000年11月1日〜2001年1月31日の震央分布(気象庁資料)
5.兵庫県北部の地震
2001年1月12日に発生したM5.1の兵庫県北部地震は、地震後群発地震的な活動が続き、複雑な活動域を呈している。全体の活動としては、本震・余震型の活動が2つ重なったものとして解釈され、今後M4以上の地震が発生する確率はまだ残っていると考えられる。また、本震域の活動は北西南東圧縮の横ずれ型であるが、その東の北西に延びる領域ではこの地域でよく見られる東西圧縮の横ずれ型となっている事が報告された。
兵庫県北部の地震活動(気象庁資料)
2000年1月の兵庫県北部の地震活動の発震機構(気象庁資料)
この地域では過去にも地震活動が活発であった時期があることが示された。
鳥取県西部から兵庫県北部の地震活動(京都大学防災研究所資料)
6. 日本海東縁部の地震活動に関連した議論
国土地理院のGPS観測により、日本海東縁部の歪集中帯の存在が明瞭に示された。
GPSによる日本列島の水平地殻変動速度(国土地理院資料)
地殻変動速度東西成分の経度方向プロファイル(国土地理院資料)
また音波探査に基づく海域調査結果から、地質学的にみた日本海東縁部の歪み集中帯に関して報告がなされた。
日本海東縁の活断層について(地質調査所資料)
サハリン南部から北海道北部にかけての地震活動、GPSによる地殻変動調査からこの地域のプレート境界が陸域近くに存在する可能性が指摘された。
北海道北部・南サハリンの地震活動と地殻変動(1)(北海道大学資料)
北海道北部・南サハリンの地震活動と地殻変動(2)(北海道大学資料)
また、日本海中部地震の活動と秋田沖の地震空白域の関係に関し、1983年日本海中部地震で滑ったとされる領域が南に広がる形で、1997年M5.6の地震が発生した事、その領域に接するような形で地震空白域が存在することが報告された。
1983年日本海中部地震(M7.7)および1997年の地震(M5.6)の震源分布(東北大学資料)
M6.5以上の地震活動を日本海側に関して調べた結果、地震活動の活動期の存在が指摘され、かつ東北地域と西南日本地域ではその地震活動が同期しているのではないかという見方も出された。
日本海側のM6.5以上の地震活動(茂木会長資料)
(事務局:国土地理院)
各機関からの提出議題
【1】気象庁(A1) 1.全国M5以上の地震活動と主な地震の発震機構(2000年11月〜2001年1月) 2.北海道とその周辺の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 北海道東方沖の地震活動 国後島付近の地震活動 十勝沖の地震活動 3.東北地方とその周辺の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 福島県沖の地震活動 秋田県内陸南部の地震活動 福島県会津地方(柳津町付近)の地震活動 福島県会津地方(檜枝岐村付近)の地震活動 4.関東・中部地方とその周辺の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 関東東方沖の地震活動 茨城県沖の地震活動 埼玉県南部の地震活動 神奈川・山梨県境付近の地震活動 富士山付近の低周波地震 三宅島・新島・神津島周辺の地震活動 伊豆半島東方沖の地震活動 東海地域の地震活動 新潟県中越地方の地震活動 松代周辺の地震・地殻活動 C 内陸部の地震空白域における地殻変動観測 5.近畿・四国・中国地方周辺の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 兵庫県北部の地震活動 鳥取県西部の地震活動 兵庫県南部地震の余震活動と周辺の地震活動 広島県南西部と伊予灘の地震活動 6.九州地方とその周辺の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 鹿児島県薩摩地方の地震活動 熊本県熊本地方の地震活動 悪石島付近の地震活動 7.沖縄地方とその周辺の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 西表島周辺の地震活動 A5 (トピックス)日本海東縁周辺の地震活動 【2】国土地理院(A2) 1.日本全国の地殻変動 A2 GEONETによる最近1年間の地殻水平変動 A2 GEONETによる最近3ヶ月の地殻水平変動 A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(3ヶ月) A2 GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差(1ヶ月) 2.東海地方の地殻変動 A2 森〜掛川〜御前崎間の上下変動 A2 水準点(140−1、2595)の経年変化 A2 水準点2595(浜岡町)の経年変化 C 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化 A2 水準点2602−1(菊川町)と10333(大東町)及び2601(小笠町)の経年変化 A2 水準点2602−1(菊川町)と2601(小笠町)の経年変化 A2 水準測量(10333及び2601)による傾斜ベクトル(月平均値) C 東海地方各験潮場間の月平均潮位差 C 切山基線精密辺長測量結果 A2 GPS連続観測結果 駿河湾周辺 A2 GPS連続観測結果 掛川・御前崎周辺 C 御前崎地区高精度比高観測 A2 GPS連続観測結果 静岡県西部 C 御前崎長距離水管傾斜計月平均(E−W) C 地中地殻活動観測装置観測結果 C 御前崎における絶対重力変化 3.伊豆地方の地殻変動 C 熱海〜伊東〜河津間の上下変動 C 南伊豆〜河津間の上下変動 C 西伊豆〜南伊豆間の上下変動 C 内浦〜土肥〜西伊豆間の上下変動 C 伊東市付近の地盤上下変動の推移 C 伊東・油壷・初島・真鶴各験潮場間の月平均潮位差 C 伊東東部連続観測(辺長)日平均結果 C GPS連続観測結果 伊東・初島周辺 A2 GPS連続観測結果 伊豆諸島 A2 伊豆諸島水平変動ベクトル図(1ヶ月、3ヶ月) 4.関東地方の地殻変動 C 水準原点〜大宮〜野田〜船橋〜千葉間の上下変動 C 藤沢〜水準原点間の上下変動 C 木祖村〜甲府〜八王子点間の上下変動 C 布良・勝浦・油壷各験潮場間の月平均潮位差 C 鹿野山精密辺長連続観測結果 A2 GPS連続観測結果 富士山周辺 5.北海道地方の地殻変動 C GPS連続観測結果 有珠山周辺 C GPS連続観測結果 北海道駒ヶ岳周辺 6.東北地方の地殻変動 C GPS連続観測結果 岩手山周辺 C GPS連続観測結果 磐梯山周辺 7.北陸地方の地殻変動 A2 GPS連続観測結果 新潟県中越地方 8.中部・近畿地方の地殻変動 C 中京地方の上下変動 C 本宮町〜新宮市〜尾鷲市〜多気町間の上下変動 C GPS連続観測結果 浅間山周辺 9.中国・四国・九州地方の地殻変動 A2 鳥取県西部地方の上下変動 A2 GPS連続観測結果 鳥取県西部 C GPS連続観測結果 鳥取県西部(ベクトル図) A2 2000年鳥取県西部地震の断層モデル A2 GPS連続観測結果 兵庫県北部 C GPS連続観測結果 瀬戸内中部 C GPS連続観測結果 トカラ列島 10.その他 C GPS連続観測結果 硫黄島 C 水準測量から求めた日本列島の100年間の上下変動 A5 (トピックス)日本海東縁部の地殻変動 水準測量から求めた日本列島の上下変動 東北地方の水平歪 全国の水平歪 GPSによる日本列島の水平地殻変動速度 地殻変動速度東西成分の経度方向プロファイル 三角測量とGPSによる東北地方の地殻水平歪 三角測量とGPSによる関東・中部地方の地殻水平歪 日本海東縁部の上下変動 日本における前兆的地殻変動の観測例 【3】北海道大学 C 北海道とその周辺の最近の地震活動−震源分布と地震活動度の低下について A5 (トピックス)日本海東縁部地域の地震活動 【4】東北大学 C 東北地方およびその周辺の微小地震活動(2000年11月〜2001年1月) A5 (トピックス)日本海東縁部地域の地震活動−空白域・プレート境界・活断層− 【5】東京大学大学院理学系研究科 C 東海地域における地球科学的観測について C 伊豆半島における地球科学的観測について C 福島県東部における地球科学的観測について A5 (トピックス)東北日本内帯の主要断層について(試論) 【6】東京大学地震研究所 C 富士川・駿河湾地方における地殻変動観測(その25) B 伊豆諸島の地震活動(2000年11月〜2001年1月) C 伊豆半島東部地域の電磁気観測(2000年2月〜2001年1月) C 関東甲信越地域の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 富士山周辺の地震活動 日光・足尾付近の地震活動 新潟平野静穏化地域周辺の地震活動 C 紀伊半島およびその周辺部の地震活動(2000年11月〜2001年1月) C 瀬戸内海西部とその周辺地域の地震活動(2000年11月〜2001年1月) 【7】東京工業大学 C 伊豆半島東部北東部における全磁力変化 【8】名古屋大学 C 東海地域における微小地震の分布(2000年11月〜2001年1月) A4 2001年1月6日美濃東部地震について A4 兵庫県北部の地震活動と重力異常勾配 【9】京都大学 A4 兵庫県北部の地震活動−過去の微小地震活動歴について− C 徳島県東部に起こったやや大きなマントル地震について(2001.1.25 M4.9 H50km) C 野島断層の800m孔における間隙水圧について 【10】九州大学 C 九州の地震活動(2000年11月〜2001年1月) C 九州南部の地震活動(2000年11月〜2001年1月)(鹿児島大) 【11】防災科学技術研究所 C 関東・東海地域における最近の地震活動(2000年11月〜2001年1月) C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(2000年11月〜2001年1月) A4 東海地域想定震源域における地震活動度変化(その5) A4 東海地域における震源核成長予測のシミュレーション A4 兵庫県北部の地震 B 地震の活動期・静穏期 【12】地質調査所 C 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2000年11月〜2001年1月) C 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2000年11月〜2001年1月) C 有馬−高槻−六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(2000年11月〜2001年1月) C 近畿地域の地下水位・歪観測結果(2000年11月〜2001年1月) C 兵庫県北部の地震(M5.4)前後の周辺の地質調査所観測点における地下水変化 A5 (トピックス)日本海東縁の活断層について 【13】水 路 部 B 三宅島及び神津島におけるGPSを利用した地殻変動監視観測 C DGPS局を利用した地殻変動監視観測 C 伊豆諸島における島嶼・岩礁のGPS観測 A5 (トピックス)日本海東縁部の海底地形と活構造 【14】通信総合研究所 A4 VLBIによる首都圏広域地殻変動観測
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。 (A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑 (A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑 (A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑 (A4)各地域についての詳細検討 (A5)トピックス (B) 話題提供 (C) 資料提出