地震予知連絡会の活動報告
第142回地震予知連絡会(2001年4月13日) 議事概要
平成13年4月13日,国土地理院関東地方測量部において,第142回地震予知連絡会が開催され,第17期の委員による役員選出を行うとともに,2001年芸予地震および静岡県中部の地震について観測・研究成果の報告が行われ議論がなされた.以下に,その概要について述べる.
1.役員の選挙について
委員の互選により,会長に大竹政和東北大学大学院理学系研究科教授が選出され,会長から島崎邦彦東京大学地震研究所教授と岡田義光防災科学技術研究所企画部長が副会長に指名された.さらに島崎副会長は強化地域部会長,岡田副会長は特定部会長に指名され,両部会長より両部会の委員が指名された.また,予知連のあり方について検討するワーキンググループの主査に島崎副会長が任命され,ワーキンググループの委員が指名された.最後に茂木清夫前会長を名誉委員とすることが承認された.
第17期地震予知連絡会委員名簿
2.2001年芸予地震について
2001年3月24日にM6.4の地震が発生した.震源の深さは51kmでフィリピン海プレート内部の地震と考えられ.本震は余震域北端の下限付近に位置している.
安芸灘の地震活動(1)(気象庁資料)
震源メカニズムは東西方向に張力軸を持つ正断層型で,この地域では1905年のM7.3,1949年のM6.2など今回と似たような地震が繰り返し発生している.
安芸灘の地震活動(2)(気象庁資料)
今回の地震は,フィリピン海プレートの沈み込みに伴う地震活動の先端部で発生し,震源域の南西側ではプレートの傾斜が急激に変化している.
図1 震央分布図(東京大学地震研究所資料)
図2 断面図(25km以深の震源分布)(東京大学地震研究所資料)
この地震の発生に伴ってGPSによって1cm程度の地殻変動が検出された.この地殻変動を説明するように推定された断層モデルは他の結果とも調和的であり,モーメントマグニチュードは6.8と推定される.
GEONETにより捉えられた水平地殻変動(3/11-23〜3/25-29)とモデル計算(国土地理院資料)
この地震に関しては,マグニチュード下限の設定によって余震活動状況が異なって見える点,淡路島の800m孔で地震前に観測された歪および水圧の変化,断層面の推定法などに関して議論があった.また,地震発生前にイオン濃度変化が検知されたという報道に関連して,次回までに情報を収集することにした.
3.静岡県中部の地震について
2001年4月3日に静岡県中部でM5.1の地震が発生した.震源の深さは33kmで沈み込むフィリピン海プレート内部の地震と考えられる.震源メカニズム解は初動によるものとCMT解とで食い違うが横ずれ成分を伴った東西張力の正断層型である.
静岡県中部の地震活動(気象庁資料)
この周辺では1996年10月5日にM4.3の地震が発生しているが,震源域は有意に異なっており,震源メカニズムも異なっている.
静岡県中部の地震活動(気象庁資料)
東海地域の推定固着域における地震活動の変化と今回の地震との関連について,固着域がはがれ始めているのではないかという議論があったが,そうであれば地殻変動にも観測されるべきという意見もあり,今後も引き続き検討することにした.
(事務局:国土地理院)
各機関からの提出議題
【1】気象庁(A1) 平成13年度(2001年)芸予地震の地震活動 静岡県中部の2001年4月3日の地震 【2】国土地理院(A2) 1.中国・四国地方の地殻動変動 A2 GPS連続観測結果 安芸灘周辺 A2 2001年3月24日芸予地震(Mj6.4)による地殻変動 A2 西日本の水平歪(一次網2回目−明治〜大正) A2 西日本の水平歪(一次網2回目−一次網1回目) A2 徳山〜広島〜三原の上下変動(1889-1937-1952) A2 宇和島〜今治〜西条の上下変動(1893-1932-1947-1950) A2 下関〜徳山〜広島〜三原の上下変動(1981-1988-1998) A2 指宿〜今治〜善通寺の上下変動(1977-1981-1990-1998) C 徳山−広島・呉・松山各験潮場間の月平均潮位差 2.静岡県中部地方の地殻変動 C 長距離水管傾斜計による傾斜変化(日平均値) C 長距離水管傾斜計による傾斜変化(時間平均値) C 地中地殻活動観測装置観測結果 A2 GPS連続観測結果 静岡県西部 A2 東海・関東地域における2000年6月以降の地殻変動について 【3】東京大学大学院理学系研究科 C 東海地方における地球科学観測について 【4】東京大学地震研究所 A4 2001年芸予地震の震央分布図 A4 2001年芸予地震の断面図 A4 2001年芸予地震の時系列 【5】名古屋大学 C 4月3日の静岡県中部に起こった地震の余震について 【6】京都大学 A4 淡路島800m孔における地殻変動と地下水圧の連続観測結果 A4 2001年芸予地震に関連するクーロン破壊応力(ΔCFF)の変化) 【7】高知大学 C 2001年芸予地震の活動経過について 【8】防災科学技術研究所 A4 2001年芸予地震の地震分布および発震機構解 A4 2001年芸予地震による地表および地中の強震動分布 A4 2001年芸予地震に伴う理論地殻変動 A4 2001年4月3日静岡県中部地震の発震機構解と余震分布 【9】産業技術総合研究所 A4 芸予地震前後の近畿地域の地下水位・地殻歪変化 A4 東海・伊豆地域の地下水観測結果(2001年1月〜2001年3月) 【10】海上保安庁水路部 A4 DGPS観測で捉えた平成13芸予地震に伴う地殻変動
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。 (A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑 (A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑 (A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑 (A4)各地域についての詳細検討 (A5)トピックス (B) 話題提供 (C) 資料提出