地震予知連絡会の活動報告
第133回地震予知連絡会(1999年5月17日) 議事概要
平成11年5月17日、国土地理院関東地方測量部において、第133回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動の概況の報告および東海、伊豆、北海道、中部の地殻活動等について、大学、関係観測研究機関等より観測・研究成果の報告があり、議論がなされた。次に今回のトピックスとして関西地方の最近の地殻活動について関係機関からこれまでの観測・調査結果の報告があり、現在の状況に関する検討・討議が行われた。
以下に、観測調査結果の報告と討議の内容について、その概要を述べる。
1.全国の地震活動と地殻活動
日本列島周辺では、1999年2月〜1999年4月の3ヶ月間にマグニチュード(M)5.0以上の地震が18個発生しているが、M7.0以上の地震はウラジオストック近くで発生した深発地震(M7.2)のみである。
日本とその周辺の地震活動(気象庁資料、1頁)
GPS連続観測による日本列島の地殻水平変動については、神津島周辺の地震活動に関連した変動が見られるが、
その他の特筆すべき変動は見られない。
GEONETによる最近1年間の地殻水平変動(東北日本)(国土地理院資料)
GEONETによる最近1年間の地殻水平変動(中部日本)(国土地理院資料)
GEONETによる最近1年間の地殻水平変動(西南日本)(国土地理院資料)
2.東海地方の地殻活動
御前崎地方の地殻変動については、1999年4〜5月の水準測量結果によると、浜岡の水準点2595は前回観測よりもわずかに隆起したが、年周変化を取り除いた後の値では沈下の傾向を示している。
水準点2595(浜岡町)の経年変化(国土地理院資料)
東海地方ではこの3ヶ月間、特に顕著な地殻活動はみられなかった。静岡県中部で5月7日発生したM4.7の地震については、震源の深さ、メカニズムなどから、陸側プレート内部の地震と考えられる。
東海地方における地震活動の変化(気象庁資料)
静岡県中部の地震活動(気象庁資料)
5月7日の静岡県中部の地震(気象庁資料)
3.関西地方の地震活動
近畿地方では昨年、比較的地震活動の状況が静穏であったが、今年に入ってから規模は大きくないもののM4クラスの地震を含みいくつかの地震活動が見られている。
関西地方の最近の地震活動の概況(気象庁資料)
過去のこの地域の活動として、丹波山地周辺の地域で、1992〜93年にかけて地震活動の低下が見られ、その後94年には活動度が回復してから南西に隣接する場所で兵庫県南部地震(1995年1月、M7.2)が発生している。兵庫県南部地震前の活動経過といくつかの類似する現象が見られるとの報告があった。
近畿地方の地震活動 その1 (京都大学防災研究所資料)
近畿地方の地震活動 その2 (京都大学防災研究所資料)
兵庫県南部地震が起こったため、その延長上にあたる北東部一帯で応力が高まった可能性があり、それを示唆するような地震活動の活発化や静隠化が見られるので、この地域の地殻活動の推移には今後も注目していくこととした。
4.岩手山のSARデータ解析
1998年9月3日に岩手山付近で発生した地震(M6.1)に関連して、SARのデータの解析結果から、98年6月頃から岩手山西側の地下に膨張源があって、9月3日の震源断層を滑りやすくする応力の変化を引き起こしていたと推定されることが報告された。
SAR干渉処理による岩手山周辺の地殻変動(国土地理院資料)
仮定した茂木モデルによるCFFの変化分布図(国土地理院資料)
(事務局:国土地理院)
各機関からの提出議題
【1】気象庁 A1 全国のM5以上の地震活動と主な地震のメカニズム A1 北海道地方とその周辺の地震活動 A1 東北地方とその周辺の地震活動 A1 関東・中部地方の地震活動 A1 近畿地方・中国・四国地方とその周辺の地震活動 A1 九州地方とその周辺の地震活動 A1 沖縄地方とその周辺の地震活動 A5 最近の近畿地方周辺の浅い地震活動の観測 A5 今津観測点石井式3成分歪計で観測された3月16日滋賀県北部の地震の コサイスミックステップ(気象研究所) A5 関西地方の最近の地震活動と地震空白域(気象研究所) 【2】国土地理院 A2 全国の地殻変動 A2 東海地方の地殻変動 A2 伊豆地方の地殻変動 C 関東地方の地殻変動 C 北海道地方の地殻変動 C 東北地方の地殻変動 A2 人工衛星の合成開口レーダーによって捉えられた岩手山の地殻変動 C 北陸・中部地方の地殻変動 C 近畿地方の地殻変動 C 四国地方の地殻変動 A5 近畿地方の地殻変動と地殻歪 【3】北海道大学 C 北海道とその周辺の最近の地震活動 【4】東北大学 C 東北地方およびその周辺の微小地震活動(1999年2月〜1999年4月) C 東北地方における地殻変動連続観測(1999年4月まで) 【5】東京大学理学部 C 福島県東部、伊豆半島、東海地方におけるラドン観測 【6】東京大学地震研究所 C 伊豆半島付近の地震活動(1999年2月〜1999年4月) C 伊豆半島東部地域の全磁力観測(1998年5月〜1999年4月) C 関東甲信越地域の地震活動(1999年2月〜1999年4月) A4 弥彦地殻変動観測所における傾斜観測(1977〜1998) C 紀伊半島およびその周辺部の地震活動(1999年2月〜1999年4月) C 瀬戸内海西部とその周辺地域の地震活動(1999年2月〜1999年4月) B 釜石鉱山における3次元歪・応力連続観測 【7】東京工業大学 C 伊豆半島のおける全磁力変化 【8】名古屋大学 C 東海地方の微少地震の分布 A5 花折断層付近の地震(1999年6月16日)に伴う地下水位・間隙水圧・歪変化 【9】京大理・防災研 A5 1995年兵庫県南部地震の前と類似の現象 C 西南日本内陸部の地震活動 【10】九州大学 C 九州の地震活動(1999年2月〜1999年4月) C 九州南部の地震活動(1999年2月〜1999年4月) 【11】防災科学研究所 C 関東・東海地域における最近の地震活動(1999年2月〜1999年4月) C 関東・東海地域における最近の地殻傾斜変動(1999年2月〜1999年4月) C 関東地域における3成分ひずみ計及びIBOSによる最近の観測結果 (1998年11月〜1999年4月) C 関東・東海地域における電磁界変動観測結果 A4 伊豆半島東方沖における21年間(1978〜1998)の群発地震活動 A4 1997年3月7日の伊豆半島周辺のGPS解析誤差 A4 三宅島周辺に発生する低周波地震 A4 1999年5月7日静岡・山梨県境付近の地震 A5 基盤的調査観測計画による高感度地震観測施設の整備状況 【12】地質調査所 A5 1999年3月16日の滋賀県北部の地震(M4.9)前後における花折観測井と大原観測井での 地殻歪と地下水位の変化 A5 1999年4月17日の山崎断層の地震(M3.9)前後における地下水位・地殻歪の変化 A5 有馬—高槻—六甲断層帯近傍における1995年兵庫県南部地震以降の主歪の変化 B 兵庫県南部地震に伴う地震断層ストリップマップ(縮尺1万分の1、説明書付き) の刊行について C 東海・伊豆地域におけるテレメータによる地下等観測結果(1999年2月〜4月) C 長野県西部・岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(1999年2月〜4月) C 1999年4月5日の長野県南部の地震(M3.8)前後における地質調査所王滝観測井の 観測結果 C 近畿地域の地下水位観測結果(1999年2月〜4月) C 有馬—高槻—六甲断層帯近傍における地殻活動観測結果(1999年2月〜4月) 【13】水路部 B 神津島の地殻変動とその周辺の海底地形について C GPS地殻変動監視観測 【14】通信総合研究所 C VLBI及びGPSによる首都圏地殻変動観測
A1〜Cの分類は以下のとおりとなっています。 (A1)この間における全国の地震活動の報告と質疑 (A2)この間における全国の地殻変動の報告と質疑 (A3)地震活動,地殻変動以外の観測結果の報告と質疑 (A4)各地域についての詳細検討 (A5)トピックス (B) 話題提供等 (C) 資料提出等