地震予知連絡会の活動報告

第226回地震予知連絡会(2020年2月21日)議事概要

 令和2年2月21日(金)、国土地理院関東地方測量部において第226回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われ、その後、重点検討課題として「地表に痕跡を残さない地震」に関する報告・議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

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1.地殻活動モニタリングに関する検討

1.1 地殻活動の概況

(1)全国の地震活動について

 国内で2019年11月から2020年1月までの3か月間に発生したM5以上の地震は23回であった(気象庁資料3頁)。

(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動

 期間内に目立った浅部超低周波地震は検出されなかった(防災科学技術研究所資料4頁)。

(3)日本列島のひずみ変化

 GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震及び熊本地震の余効変動、九州北部・四国西部のスロースリップ、種子島近海の地震及び山形県沖の地震の影響が見られる(国土地理院資料5頁)。

1.2 プレート境界の固着状態とその変化

(1)駿河トラフ・南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
 短期的スロースリップを伴う顕著な微動活動が東海地方から紀伊半島北部(11月10日から19日)、四国西部から豊後水道(11月8日から13日)で発生した。それ以外の主な微動活動は、東海地方(1月12日から14日)、四国東部から中部(12月27日から1月9日)で発生した(防災科学技術研究所資料6−9頁)。(防災科学技術研究所資料6−9頁)。
 GNSS連続観測により、11月上旬から中旬にかけて紀伊半島北部及び四国西部から豊後水道で短期的スロースリップが検出された。プレート間の滑りを推定した結果、紀伊半島北部で最大7mmの滑りが、四国西部から豊後水道で最大16mmの滑りが推定された(国土地理院資料10−13頁)。

・紀伊水道の非定常的な地殻変動
 GNSS連続観測により、2019年4月頃から開始した非定常的な地殻変動が引き続き捉えられた。プレート間の滑りを推定した結果、紀伊水道で最大5cmの滑りが推定された(国土地理院資料12頁)。

・九州北部・豊後水道の非定常的な地殻変動
 2018年秋頃から九州北部・四国西部で観測されていた非定常的な地殻変動は2020年1月までに収束しており、日向灘北部・豊後水道での長期的スロースリップは既に停止していると考えられる(国土地理院資料13頁)。

1.3 その他

(1)宗谷地方北部の地震(12月12日M4.2)

 2019年12月12日に宗谷地方北部の深さ7kmでM4.2の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震は地殻内で発生した。今回の地震の震源付近では、2018年6月20日にM4.1の地震(最大震度3)が発生している(気象庁資料14頁)。

(2)青森県東方沖の地震(12月19日M5.5)

 2019年12月19日15時21分に青森県東方沖の深さ50kmでM5.5の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震は、発震機構が北北東−南南西方向に張力軸を持つ正断層型で、太平洋プレート内部で発生した(気象庁資料15頁)。

2.重点検討課題「地表に痕跡を残さない地震」の検討

 地表に痕跡を残さない地震の共通点や相違、活断層として認知可能な地形形成プロセスの支配要因、地表地震断層が現れない地震の強震動特性、内陸地震の長期評価の現状と課題に関する報告及び議論が行われた(コンビーナ:北海道大学・高橋浩晃委員資料17頁)。

◆北海道胆振東部地震などの地表に痕跡を残さない地震の特徴

 北海道胆振東部地震等に関するこれまでの研究成果が紹介され、震源距離100km以内では一般的な予測式より大きな揺れがあったことや、震源域が地震波速度構造等の境界に位置する等の特徴が示された。潜在断層地震の評価可能性の検討には、他の場所との地下構造の比較や、定常地震活動・地殻歪分布の活用等が必要との指摘があった(北海道大学・高橋浩晃委員資料19頁)。

◆M7震源は上部地殻にどのくらい隠れているか 〜痕跡を残さない地震、痕跡を消される地震、地震を起こさず痕跡だけを残す断層

 日本列島ではM7前後の地震の半数で震源断層相当の地震断層が出現しないことが紹介された。堆積・侵食速度が断層変位速度を上回る地域が多いことから多数の潜在活断層の存在が疑われることやM7前後の地震の震源となり得る短い活断層・潜在活断層は特定の地域に偏在しやすいこと等が指摘された(東北大学・遠田晋次委員資料20−21頁)。

◆力学モデルに立脚した第2ステージの地震による強震動予測のための震源モデル

 地表断層変位を伴う地震では、周期約3秒の揺れが卓越する地震波が地震発生層より浅い層から放出されていることが紹介された。現在、地震調査研究推進本部では、地震発生層内の断層を対象にモデル化して周期約1秒が卓越する強震動を予測しているが、地震発生層よりも浅い断層も考慮した強震動予測手法の確立が必要であることが指摘された(清水建設・壇一男地震動グループ長資料22−24頁)。

◆震源断層の長期評価に向けて

 20世紀以降に発生したM6.5以上の内陸地震の4割では断層が地表に出現せず伏在することや反射法地震探査により平野下の伏在断層の解明が進みつつあること等が紹介された。震源断層の評価には、沈み込みシステムを含む物理モデルを構築し、地殻変動から見積もられる震源断層への載荷応力等から地震発生ポテンシャルを評価することが重要であることが指摘された(地震研究所・佐藤比呂志委員資料25頁)。

3.次回(第227回)重点検討課題「日本列島モニタリングの将来像」の趣旨説明

 第227回地震予知連絡会の重点検討課題として、「日本列島モニタリングの将来像」を取り上げる。日本列島周辺における地殻活動モニタリングに関する現状の課題、その解決法、今後必要とされるモニタリング、そのモニタリングを実現するために必要な技術について議論する予定である(コンビーナ:東京大学地震研究所・小原一成委員資料26頁)。

4.重点検討課題運営部会報告

 重点検討課題名が選定され、第229回は「予測実験の試行(07)−地震活動予測の検証−(仮)」について、第230回は「東北地方太平洋沖地震から10年−この10年で何が起きたか、何がわかったか−(仮)」について、それぞれ議論を行う予定であることが報告された(事務局資料27頁)。

5.令和2年度地震予知連絡会の開催について

 令和2年度の地震予知連絡会の開催日程について報告があった(事務局資料28頁)。

各機関からの提出議題

《地殻活動モニタリングに関する検討》

【1】気 象 庁
1.	地殻活動の概況
a.	地震活動
   O 全国M5.0以上の地震と主な地震の発震機構
    ・2019年11月〜2020年1月の全国の地震活動概況を報告する。2019年11月〜2020年1月の全国の地震活動概況を報告する。
2.	東北地方太平洋沖地震関連
   S 東北地方太平洋沖地震余震域の地震活動
3.プレート境界の固着状態とその変化
a.日本海溝・千島海溝周辺
   S 三陸沖の地震(11月29日 M5.6)
   S 福島県沖の地震(12月11日 M5.3)
   S 千葉県東方沖の地震(1月3日 M5.8)
   S 茨城県沖の地震(1月21日 M4.2)
b.相模トラフ周辺・首都圏直下
   S 茨城県南部の地震(11月22日 M4.5)
   S 茨城県南部の地震(12月3日 M4.7)
   S 茨城県南部の地震(1月14日 M4.8)
   S 千葉県東方沖の地震(2月1日 M5.0)※期間外
   S 茨城県南部の地震(2月1日 M5.3)※期間外
   S 東海・南関東地方の地殻変動
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 南海トラフ沿いの地震活動
   S 東海地域から豊後水道にかけての深部低周波地震活動
   S 南海トラフ沿いの長期的スロースリップの客観検知
   S 紀伊半島北部から東海の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(11月10日〜20日)
   S 東海の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(12月17日〜25日)
   S 東海の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(1月11日〜14日)
   S 四国の深部低周波地震活動とゆっくりすべり(11月8日〜14日、2018年秋頃〜)
   S 四国の深部低周波地震活動とゆっくりすべり(12月28日〜1月8日、2018年秋頃〜)
   S 日向灘の地震(11月22日 M5.2)
   S 沖縄本島近海(沖永良部島付近)の地震(12月18日 M5.1)
d.その他
   S 全国GNSS観測点のプレート沈み込み方向の位置変化
   S 中規模繰り返し相似地震の発生状況と発生確率(2020)
4.その他の地殻活動等
   S 北海道東方沖の地震(11月23日 M5.4)
   O 宗谷地方北部の地震(12月12日 M4.2)
    ・2019年12月12日01時09分に宗谷地方北部の深さ7kmでM4.2の地震(最大震度5弱)が発生した。
      この地震は、地殻内で発生した。この地震の震源周辺にはサロベツ断層帯が存在している。
   S 根室半島南東沖の地震(1月28日 M5.5)
   S 福島県沖の地震(11月3日 M5.0)
   O 青森県東方沖の地震(12月19日 M5.5)
    ・2019年12月19日15時21分に青森県東方沖の深さ50kmでM5.5の地震(最大震度5弱)が発生した。
      この地震は、発震機構(CMT解)が北北東−南南西方向に張力軸を持つ正断層型で、太平洋プレート内部で発生した。
   S 茨城県沖の地震(11月8日 M4.4) 
   S 伊豆大島近海の地震(11月17日 M4.7)
   S 茨城県北部の地震(12月4日 M4.9、12月5日 M4.6)
   S 栃木県北部の地震(12月4日 M4.8)
   S 鳥島近海の地震(12月11日 M6.1) 
   S 瀬戸内海中部の地震(11月26日 M4.6)
   S 沖縄本島近海の地震(1月16日 M4.2)
   S モルッカ海の地震(11月15日 Mw7.1)
   S キューバの地震(1月29日 Mw7.7) 

【2】国土地理院 
1.	地殻活動の概況
b.	地殻変動
   O GEONETによる全国の地殻水平変動
    ・GEONETによるGNSS連続観測から求めた最近1年間及び3か月間の全国の水平地殻変動を報告する。
   O GEONETによる2期間の地殻変動ベクトルの差
    ・最近3か月間の水平方向の地殻変動について、1年前の同時期の水平変動ベクトルとの差を取って
     得られた非定常的な変動の概況を報告する。
   O GNSS連続観測から推定した日本列島のひずみ変化
    ・GNSSデータから推定した日本列島の最近1年間のひずみ変化の概況を報告する。
2.	東北地方太平洋沖地震関連
   O 地殻変動ベクトル
    ・東北地方太平洋沖地震後における水平・上下の地殻変動について、全期間の累積及び
     最近3か月間の変動の概況を報告する。
   O GNSS連続観測時系列
    ・東北地方太平洋沖地震後の東日本におけるGNSS連続観測の時系列の概況を報告する。
   S 成分変位と速度グラフ
3.	プレート境界の固着状態とその変化
b.	相模トラフ周辺・首都圏直下
   S 水準原点〜油壺験潮場間の上下変動 水準測量
   S 三浦半島の各水準点の経年変化
   S 伊豆半島・伊豆諸島の水平上下変動
c.	南海トラフ・南西諸島海溝周辺
  【森〜掛川〜御前崎間の上下変動】
    S 森〜掛川〜御前崎間 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
    S 高精度比高観測点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
    S 高精度比高観測
    S 森〜掛川〜御前崎間の上下変動 水準測量
    S 水準点2595(御前崎市)の経年変化
    S 水準点(140-1・2595)の経年変化
    S 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化
    S 御前崎地方の上下変動 水準測量
   S 御前崎周辺 GNSS連続観測時系列
   S 駿河湾周辺 GNSS連続観測時系列
   S 東海地方の地殻変動
   S 東海地方の非定常地殻変動
   S 静岡県浜松市〜掛川市〜静岡市間の上下変動 水準測量
   O 紀伊半島北部の非定常水平地殻変動
    ・紀伊半島北部において、深部低周波微動と同期したスロースリップをGNSSデータから推定したので、
      その概況を報告する。
   O 紀伊半島西部・四国東部の非定常水平地殻変動
    ・2019年4月頃から紀伊半島西部及び四国東部において、これまでの傾向とは異なる地殻変動をGNSSで観測したので、
      その概況を報告する。
   S 紀伊半島 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
   S 南海トラフ周辺 GNSS連続観測時系列
   S 南海トラフ沿いの地殻変動
   S 南海トラフ沿いの非定常地殻変動
   O 四国地方の非定常水平地殻変動
    ・四国西部において、深部低周波微動と同期したスロースリップをGNSSデータから推定したので、
      その概況を報告する。
   S 室戸岬周辺 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測
   S 高知県香南市〜室戸市間の上下変動 水準測量
   S 徳島県美波町〜高知県室戸市間の上下変動 水準測量
   S 室戸岬の各水準点の経年変化
   S 愛媛県宇和島市〜高知県土佐清水市間の上下変動 水準測量
   S 高知県黒潮町〜いの町間の上下変動 水準測量
   O 九州北部の非定常水平地殻変動
    ・2018年春頃から九州北部で、2018年秋頃から四国西部でこれまでの傾向とは異なる地殻変動をGNSSで観測したので、
      その概況を報告する。
4.	その他の地殻活動等
   S 北海道太平洋岸 GNSS連続観測時系列
   S 伊豆東部地区 GNSS連続観測時系列
   S 伊豆諸島地区 GNSS連続観測時系列
   S 静岡県静岡市〜熱海市〜神奈川県横浜市間の上下変動 水準測量
   S 島根県松江市〜大田市間の上下変動 水準測量

【3】北海道大学

【4】東北大学理学研究科・災害科学国際研究所

【5】東京大学地震研究所

【6】東京工業大学

【7】名古屋大学

【8】京都大学理学研究科・防災研究所
4.その他の地殻活動等
   S 近畿地方北部の地殻活動
   S 震度データベースによる地震予測
【9】九州大学

【10】鹿児島大学

【11】統計数理研究所

【12】防災科学技術研究所
3.	プレート境界の固着状態とその変化
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   O 日本周辺における浅部超低周波地震活動
    ・期間内に本解析で目立った活動は検出されなかった。
   S 南海トラフ周辺における最近の傾斜変動
   O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
    ・短期的スロースリップイベントを伴う顕著な微動活動が、東海地方から紀伊半島北部で11月10日〜19日に、
      四国西部から豊後水道で11月8日〜13日にみられた。
      また、それ以外の主な微動活動が、東海地方で1月12日〜14日に、四国東部から中部で12月27日〜1月9日にみられた。

【13】産業技術総合研究所
3.	プレート境界の固着状態とその変化
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2019年11月〜2020年1月)
   S 紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2019年11月〜2020年1月)
   S 東海・紀伊半島・四国における短期的スロースリップイベント(2019年11月〜2020年1月)
4.	その他の地殻活動等
   S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2019年11月〜2020年1月)
   S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2019年11月〜2020年1月)
   S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2019年8月〜2019年10月)
   S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2019年8月〜2020年1月)

【14】海上保安庁
2.	東北地方太平洋沖地震関連
   S 日本海溝沿いの海底地殻変動観測結果
3.	プレート境界の固着状態とその変化
c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
   S 南海トラフ沿いの海底地殻変動観測結果

【15】海洋研究開発機構

【16】その他の機関
記載分類は以下のとおりとなっています。
1.地殻活動の概況
 a.地震活動
 b.地殻変動
2.東北地方太平洋沖地震関連
3.プレート境界の固着状態とその変化
 a.日本海溝・千島海溝周辺
 b.相模トラフ周辺・首都圏直下
 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺
 d.その他
4.その他の地殻活動等

 ・口頭報告(O)
 ・資料提出のみ(S)