地震予知連絡会の活動報告
地震予知連絡会強化地域部会(2002年12月5日) 議事概要
平成14年12月5日、国土地理院関東地方測量部において地震予知連絡会強化地域部会(平成14年度第1回)が開催され、東海地域の地殻活動に関する観測・研究成果の報告および議論が行われた。以下、その概要について述べる。
1.東海地域の地殻活動について
掛川〜御前崎間の水準測量では、6月から9〜10月の間に御前崎付近が若干隆起したことが懸念されていたが、11月に再度行われた測量では9〜10月に見られた隆起を打ち消すような沈降が観測され、6月と比較してこれまでと同様の変化傾向にあることが確認された(国土地理院資料、国土地理院資料)。
GPSで検出された東海地域の異常地殻変動は依然として継続している。定常的な変動からの残差で見ると、2002年9月以降は北向きの変動が見られるが、これは季節的な変動成分に対する補正が不十分なためと考えられる。このデータからプレート境界面における断層すべり分布を推定すると、一番最近の期間では御前崎の南側に僅かなすべりが生じているという結果が得られる。しかし、この結果は現段階で有意と言えず、今後の推移を注意深く監視していく必要がある(国土地理院資料、国土地理院資料、国土地理院資料)。
東海地域では、伊豆諸島の地殻活動が一段落した2000年9〜10月頃から、浜名湖直下や推定固着域の上盤側で地震活動が静穏化する一方、推定固着域の下盤側では活発化しており、この頃に異常地殻変動が開始したと推測される(防災科学技術研究所資料)。フィリピン海プレート内における1990年以降の地震発生パターンに注目すると、地震発生数が減少傾向にあること、2000年および2002年の地震発生パターンが1999年以前の平均的なパターンと比べて大きく変化していることが分かる(気象庁資料)。こうした変化はプレート境界の準静的なすべりに関係するものと推測され、こうした変化を説明するモデルの検討も行われている。
東海地域の異常地殻変動は、これまでGPSでのみ捉えられていたが、三ケ日における傾斜計のデータを解析したところ、2000年以降に東上りの明瞭な変化が見られることが分かった。この変化は異常地殻変動を捉えたものだと考えられる(防災科学技術研究所資料)。
東海地域を含むフィリピン海プレート北端部周辺の地殻変動速度を1997〜1999年および2001〜2002年という2つの期間について比較すると、東海地域だけでなく伊豆半島や房総半島などでも地殻変動パターンが変化していることが分かる。こうした変化の原因としては、東海地域のプレート境界面における準静的な断層すべりに加え、2000年の伊豆諸島周辺の地殻活動以後、広域的な場の変化が生じた可能性も考えられる。このため、より広い視点から観測データを見直すことが必要である(国土地理院資料)(国土地理院資料)。一方、現在すべりが生じていると推測される領域において、過去にエネルギーが蓄積されていたかどうかは重要な問題であり、プレート境界の固着状態に関するモデルについても詳細に再検討する必要がある。
最近の東海地域における様々な地殻活動異常は観測データが揃った1980年以降の中で特筆すべきものであり、プレート境界の固着が部分的にはがれて局所的な地震活動の静穏化や活発化が現れるという考え方と定性的に符合している。しかし、こうした現象が東海地震直前の最終段階を示すものか、自然現象の中に現れるゆらぎで今後以前の状態に戻ってしまうのかを判断することは、観測データが20年程しかない現時点では難しい(防災科学技術研究所資料)(防災科学技術研究所資料)。
(事務局:国土地理院)