重点検討課題を中心とした議論の紹介
1.地震予知連絡会と「重点検討課題」
1.1 「重点検討課題」のテーマ
地震予知連絡会では,「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の推進について」(平成20年7月17日建議)に示された,地震現象予測のための観測研究の推進を図るために,地震活動・地殻変動等に関するモニタリング結果を中心とした情報交換を行い,モニタリング手法の高度化を検討することとして,地震予知研究にとって特に検討すべき課題を「重点検討課題」として選定し,これについて集中的に検討しています.重点検討課題のテーマは,主に以下のような観点や課題に留意して選定しています.
重点検討課題の主なテーマ
① 地震予知実現のために重大な課題となっている事項の洗い出しと、その観測手法について
課題例:すべりの収支、海底地殻変動観測、活断層のモニタリング
② 注目すべき現象と地震発生との関係解明について
課題例:短期的・長期的スロースリップ、広域的な地震活動の静穏期・活動期
③ 観測方法を発展させるために集中してやるべきことについて
課題例:現象を有効に捉える観測網、効果的な観測方法
④ 新たに発生した被害地震等の主要な地震に関する解釈、その地震を予知するためには何をすればよいのか
課題例:平成23 年(2011 年)東北地方太平洋沖地震
⑤ 新たな観測や解析手法の開発
課題例:活動度指数、広域の相互作用、モニタリングのターゲット等
そして,第21期(2009年4月〜2011年3月)では,モニタリング手法の高度化に関連する最新の観測・解析・研究結果について,第22期(2011年4月〜2013年3月)では,東北地方太平洋沖地震やその他のプレート境界等に関する最新の観測・解析・研究結果について,第23期(2013年4月〜2015年3月)では,主に地震発生の予測実験の試行に関する現状や評価について,第24期(2015年4月〜2017年3月)では,主に地震発生の予測実験の試行に関する取り組みについて,「重点検討課題」を設定して,毎回の連絡会で報告,議論を行ってきました.
第26期 重点検討課題 | 開催日 |
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第223回「西南日本日本海側の地殻活動」 【223回の会議全体の議事概要】 【223回の重点検討課題の概要】 【会報 第102巻】資料番号12-7〜12-11 | 2019年 5月22日 |
第25期 重点検討課題 | 開催日 |
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第222回「南西諸島の地殻変動」 【222回の会議全体の議事概要】 【222回の重点検討課題の概要】 【会報 第102巻】資料番号12-01〜12-06 | 2019年 2月22日 |
第221回「予測実験の試行05」 【221回の会議全体の議事概要】 【221回の重点検討課題の概要】 【会報 第101巻】資料番号12-07〜12-12 | 2018年11月30日 |
第220回「千島海溝・北海道東方沖と三陸北部における巨大地震」 【220回の会議全体の議事概要】 【220回の重点検討課題の概要】 【会報 第101巻】資料番号12-1〜12-06 | 2018年 8月24日 |
第219回「地震と水」 【219回の会議全体の議事概要】 【219回の重点検討課題の概要】 【会報 第100巻】資料番号 12-9〜12-15 | 2018年 5月25日 |
第218回「熊本地震で見えてきた課題」 【218回の会議全体の議事概要】 【218回の重点検討課題の概要】 【会報 第100巻】資料番号 12-1〜12-8 | 2018年 2月23日 |
第217回「予測実験の試行 04」 【217回の会議全体の議事概要】 【217回の重点検討課題の概要】 【会報 第99巻】資料番号 12-8〜12-14 | 2017年11月22日 |
第216回「首都圏直下地震」 【216回の会議全体の議事概要】 【216回の重点検討課題の概要】 【会報 第99巻】資料番号 12-1〜12-7 | 2017年 8月21日 |
第215回「海域モニタリングの進展」 【215回の会議全体の議事概要】 【215回の重点検討課題の概要】 【会報 第98巻】資料番号 12-7〜12-13 | 2017年 5月19日 |
第24期 重点検討課題 | 開催日 |
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第214回「予測実験の試行 03」 【214回の会議全体の議事概要】 【214回の重点検討課題の概要】 【会報 第98巻】資料番号 12-1〜12-6 | 2017年 2月20日 |
第213回「南海トラフ地震」 【213回の会議全体の議事概要】 【213回の重点検討課題の概要】 【会報 第97巻】資料番号 12-8〜12-14 | 2016年11月11日 |
第212回「余効変動と粘弾性 −日本列島広域地殻活動予測に向けて−」 【212回の会議全体の議事概要】 【212回の重点検討課題の概要】 【会報 第97巻】資料番号 12-1〜12-7 | 2016年8月22日 |
第211回「平成28年(2016年)熊本地震」 【211回の会議全体の議事概要】 【211回の重点検討課題の概要】 【会報 第96巻】資料番号 12-7〜12-26 | 2016年5月18日 |
第210回「予測実験の試行02」 【210回の会議全体の議事概要】 【210回の重点検討課題の概要】 【会報 第96巻】資料番号 12-1〜12-6 | 2016年2月22日 |
第209回「東北地方太平洋沖地震がもたらす広域地殻活動」 【209回の会議全体の議事概要】 【209回の重点検討課題の概要】 【会報 第95巻】資料番号 12-7〜12-12 | 2015年11月27日 |
第208回「予測実験の試行について」 【208回の会議全体の議事概要】 【208回の重点検討課題の概要】 【会報 第95巻】資料番号 12-1〜12-6 | 2015年8月21日 |
第207回「予測の根拠となるモニタリングデータと処理方法」 【207回の会議全体の議事概要】 【207回の重点検討課題の概要】 【会報 第94巻】資料番号 12-7〜12-11 | 2015年5月22日 |
第23期 重点検討課題 | 開催日 |
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第206回「兵庫県南部地震から20年 活断層研究の進展と課題」 【206回の会議全体の議事概要】 【206回の重点検討課題の概要】 【会報 第94巻】資料番号 12-1〜12-6 | 2015年2月16日 |
第205回「物理モデルに基づいた地震発生予測研究 その2」 【205回の会議全体の議事概要】 【205回の重点検討課題の概要】 【会報 第94巻】資料番号 12-8〜12-12 | 2014年11月28日 |
第204回「地震・地殻変動予測能力の現状評価」 【204回の会議全体の議事概要】 【204回の重点検討課題の概要】 【会報 第93巻】資料番号 12-1〜12-7 | 2014年8月22日 |
第203回「日本列島の長期広域変動について」 【203回の会議全体の議事概要】 【203回の重点検討課題の概要】 【会報 第92巻】資料番号 12-8〜12-12 | 2014年5月19日 |
第202回「地震・津波即時予測とリアルタイムモニタリング」 【202回の会議全体の議事概要】 【202回の重点検討課題の概要】 【会報 第92巻】資料番号 12-1〜12-7 | 2014年2月17日 |
第201回「物理モデルに基づいた地震発生予測研究」 【201回の会議全体の議事概要】 【201回の重点検討課題の概要】 【会報 第91巻】資料番号 12-7〜12-10 | 2013年11月22日 |
第200回「地震の短期予測の現状と評価」 【200回の会議全体の議事概要】 【200回の重点検討課題の概要】 【会報 第91巻】資料番号 12-1〜12-6 | 2013年8月21日 |
第199回「日本海で発生する地震と津波」 【199回の会議全体の議事概要】 【199回の重点検討課題の概要】 【会報 第90巻】資料番号 12-8〜12-14 | 2013年5月30日 |
第22期 重点検討課題 | 開催日 |
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第198回「東北地方太平洋沖地震に関する検討(まとめ)」 【198回の会議全体の議事概要】 【198回の重点検討課題の概要】 【会報 第90巻】資料番号 12-1〜12-7 | 2013年2月18日 |
第197回「世界の巨大地震・津波」 【197回の会議全体の議事概要】 【197回の重点検討課題の概要】 【会報 第89巻】資料番号 12-6〜12-16 | 2013年11月21日 |
第196回「内陸で発生する地震について」 【196回の会議全体の議事概要】 【196回の重点検討課題の概要】 【会報 第89巻】資料番号 12-1〜12-5 | 2012年8月29日 |
第195回「プレート境界に関するわれわれのイメージは正しいか? (その3)相模トラフ周辺・首都圏直下」の検討 【195回の会議全体の議事概要】 【195回の重点検討課題の概要】 【会報 第88巻】資料番号 12-9〜12-20 | 2012年5月30日 |
第194回「プレート境界に関するわれわれのイメージは正しいか? (その2)千島海溝」の検討 【194回の会議全体の議事概要】 【194回の重点検討課題の概要】 【会報 第88巻】資料番号 12-1〜12-8 | 2012年2月17日 |
第193回「東北地方太平洋沖地震に関する検討(その3)」 【193回の会議全体の議事概要】 【193回の重点検討課題の概要】 【会報 第87巻】資料番号 12-8〜12-16 | 2011年11月18日 |
第192回「プレート境界に関するわれわれのイメージは正しいか? (その1)南海トラフ・南西諸島海溝」の検討 【192回の会議全体の議事概要】 【192回の重点検討課題の概要】 【会報 第87巻】資料番号 12-1〜12-6 | 2011年8月22日 |
第191回「東北地方太平洋沖地震に関する検討(その2)」 【191回の会議全体の議事概要】 【191回の重点検討課題の概要】 【会報 第86巻】資料番号 12-16〜12-20 | 2011年6月13日 |
第190回「東北地方太平洋沖地震に関する検討」 【190回の会議全体の議事概要】 【190回の重点検討課題の概要】 【会報 第86巻】資料番号 12-10〜12-15 | 2011年4月26日 |
第21期 重点検討課題 | 開催日 |
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第21期重点検討課題のまとめ[PDF:7.6MB] | |
第189回「海域のモニタリング技術の動向」の検討 【189回の会議全体の議事概要】 【189回の重点検討課題の概要】 【会報 第86巻】資料番号 12-1〜12-9 | 2011年2月18日 |
第188回「プレート境界すべり現象に関する今後のモニタリング戦略」の検討 【188回の会議全体の議事概要】 【188回の重点検討課題の概要】 【会報 第85巻】資料番号 12-14〜12-24 | 2010年11月19日 |
第187回「地震活動について」の検討 【187回の会議全体の議事概要】 【187回の重点検討課題の概要】 【会報 第85巻】資料番号 12-1〜12-13 | 2010年8月20日 |
第186回「プレート境界の固着とすべりのシミュレーション − モニタリングによって何が検知されると期待されるのか?」の検討 【186回の会議全体の議事概要】 【186回の重点検討課題の概要】 【会報 第84巻】資料番号 12-10〜12-17 | 2010年5月21日 |
第185回「内陸地震準備過程のモニタリング」の検討 【185回の会議全体の議事概要】 【185回の重点検討課題の概要】 【会報 第84巻】資料番号 12-1〜12-9 | 2010年2月15日 |
第184回「地震波干渉法」の検討 【184回の会議全体の議事概要】 【184回の重点検討課題の概要】 【会報 第83巻】資料番号 12-9〜12-16 | 2009年11月20日 |
第183回「プレート境界浅部の固着とすべりのモニタリング」の検討 【183回の会議全体の議事概要】 【183回の重点検討課題の概要】 【会報 第83巻】資料番号 12-1〜12-8 | 2009年8月21日 |
第182回「プレート境界深部すべりに係わる諸現象」について検討 【182回の会議全体の議事概要】 【182回の重点検討課題の概要】 【会報 第82巻】資料番号 12-1〜12-10 | 2009年5月15日 |
1.2 プレート境界を対象とした「重点検討課題」
プレート境界における諸現象とそのモニタリング手法については,最近十余年で地震,地殻変動の観測網が充実したこともあり多くの知見がもたらされています.「重点検討課題」では,この関連テーマについて第21期の8回の定例会のうち5回をかけて,さまざまな角度からの検討を行い,期の終了時にあたる2011年2月の第189回地震予知連絡会終了後には,それまでの重点検討課題での報告・討議事項について取りまとめた資料に基づき,プレート境界の状況に関する最新の知見と,そのモニタリング手法などについて公開発表を行いました.
しかしながら,2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,これまで解明されてきたことが,私たちが知らない大きな自然の枠組みの一部分にしか過ぎなかったことを改めて突きつけてきました.地震予知連絡会ではこの事実を重く受け止め,2011年4月からの第22期においては,重点検討課題として東北地方太平洋沖地震の発生を受けての観測・解析・研究結果の報告検討を当該領域のプレート境界の状況のモニタリングの視点から行いました.さらに他の地域についても「プレート境界に関する我々のイメージは正しいか?」をテーマとした検討を行ってきました.これらの内容については,第2章で解説します.
第2章はこちら
1.3 地震発生の予測実験の試行に関する「重点検討課題」
第23期から,地震発生の予測実験の試行に関するテーマでの報告・検討が行われています.
・第21期に地震活動のモデル開発とその予測性能評価を行う国際プロジェクトCSEP(Collaboratory for the Study of Earthquake Predictability)を中心とした地震活動の統計処理と大地震の予測可能性についても報告・検討されました.
・地震の短期予測に関して、地震の誘発作用や統計モデルの現状や評価等についてレビューをし、今後の方向性について報告・検討されました.
第3章はこちら
1.4 その他の「重点検討課題」
第21期では,プレート境界が主要なテーマではありましたが,8回のうち2回は,以下のテーマでの報告・検討が行われてました.
・内陸における地震は,その発生の場である活断層について,地下の構造などに関する知見が深まりつつあることが報告・検討されました.
・地震活動のモデル開発とその予測性能評価を行う国際プロジェクトCSEP(Collaboratory for the Study of Earthquake Predictability)を中心とした地震活動の統計処理と大地震の予測可能性についても報告・検討されました..
・地震波干渉法は,地下の構造を詳細にモニタリングする新たな手法として報告・検討されました.
これらについては第4章で解説します
第4章はこちら