地震予知連絡会の活動報告

第160回地震予知連絡会(2004年11月4日) 議事概要

 平成16年11月4日、国土地理院関東地方測量部において第160回地震予知連絡会が開催され、10月23日に発生した平成16年(2004年)新潟県中越地震に関する観測・研究成果の報告および議論がなされた。以下に、その概要について述べる。

1.新潟県中越地震について

 2004年10月23日17時56分に新潟県中越地方でM6.8の地震が発生した.この地震の後、18時03分にM6.3、18時11分にM6.0、18時34分には最大余震となるM6.5の地震が相次いで発生した。地震の発震機構は北西—南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、震源分布は北西下がりを示す(気象庁資料)。余震分布を詳細に見ると、本震と最大余震のそれぞれに対応する高角の北西下がりの2枚の断層面と27日に本震の南東側で発生したM6.1の余震に対応する比較的低角の南東下がりの断層面が見られる(気象庁資料京都大学防災研究所・九州大学大学院理学研究院資料地震研究所資料)。震源分布の時間変化を見ると、本震の直後は本震に対応する面上での活動のみであったが、最大余震の発生後は本震の断層面の下盤側に形成された下面での活動が活発になった。その後、27日に発生した余震に伴い南東下がりの断層面が形成され、非常に複雑な活動を示している(京都大学防災研究所・九州大学大学院理学研究院資料)。

 本震を含む地震のメカニズムは主に北西—南東圧縮の逆断層型であるが、場所によってはそれとは異なるメカニズムの地震も発生している(防災科学技術研究所資料)。

 本震、最大余震、10/27の余震に関してΔCFFによる検討が行われた。本震によるΔCFFの増加域に最大余震の断層面が位置し、10/27の余震についても本震によるΔCFFの増加域に位置している。最大余震の影響を含めた場合も、破壊が深部から破壊したとすれば整合することが分かった(地震研究所資料)。

 一般に、断層面上でのすべり量が大きい領域と余震の発生領域は相補的であるといわれるが、本震の断層面と考えられる上面ではそれほど明瞭ではない。断層面が深さ10km付近で折れ曲がっていることが影響している可能性がある。それに対し、最大余震の断層面と考えられる下面ではすべり量と震源分布は相補的である(気象庁資料)。

 10/23の本震および10/27の余震に伴って地殻変動が観測された。観測された地殻変動を説明する断層モデルは本震が北西下がりの断層面、27日の余震が南東下がりの断層面であり、震源分布と調和的である。しかし、推定された断層面は地震の震源分布よりも西側にずれる(国土地理院資料)。

 今回の震源域の中西部では西傾斜の六日町盆地西縁断層帯、小平尾断層、震源域北部では東傾斜の悠久山断層が推定されている(地震研究所資料)。震源域周辺には東山丘陵、魚沼丘陵が位置するが、震源域近傍に向斜、背斜構造が集中して分布している。震央付近には東山背斜が位置し、これを横切るトンネルが背斜軸付近で変形したという報告があった。また、小平尾断層に沿って段差や舗装の変形などが観察されている(産業技術総合研究所資料)。震源分布と地質構造を対応させると、最大余震により形成された断層面の地上への延長は六日町盆地西縁断層帯と一致すると考えられるが、本震の断層面の地上延長は小平尾断層とは必ずしも一致しない(地震研究所資料)。

 余震域近傍の地震活動は2004年初め頃から低調になっていたが、2000年頃にも低調な時期が見られる(気象庁資料)。ただし、2004年初めからは地震の発生数が低調になっただけでなく、b値にも変化が見られる(防災科学技術研究所資料)。

 GPS連続観測データから、この地域では歪みが集中していることがわかっている(国土地理院資料)。今回の震源域を含む日本海東縁部は、プレート境界が形成されつつあるとも考えられており、過去に大きな地震が帯状に発生している。今回の地震は大きな地震が発生していない空白地域で発生したが、今回の地震の南側や新潟地震の南側など未破壊の地域もあり、注意する必要がある(会長資料)。

 全国的に見ると、1978年以降に発生したM6.7以上の内陸地震はすべて地震予知連絡会の観測強化地域、特定観測地域に指定された地域内で発生している(防災科学技術研究所資料)。

 その他、内陸地震に先行するM5クラスの地震に関する調査の報告、干渉SAR解析により面的に捉えられた地殻変動に関する報告、地形・地質調査で小平尾断層に沿って見られた変形が時間の経過とともに累積しているなどの報告があった。また、震源域付近で観測されている傾斜計にはノイズレベルを超える変化は見られなかったことが報告された。

 今回の地震はマグニチュードが大きめの余震が多く発生している。複雑に破砕された地域で発生する地震では規模の大きな余震が起こりやすいが、これは今回の地震のように複数の断層面で発生していることによる可能性がある。過去の事例では分からなかったが、近年の観測網の発達により震源近傍の詳細が見えるようになってきたために分かるようになったといえる。

 また、今回の地震ではM5クラスの先行地震、b値の変化、静穏化が見られた。これらについて調査を進める必要がある。

 今回のような内陸での地震と、活断層との関係について議論がなされたが、活断層だけではなく、活褶曲などを含めた活構造に関する更なる調査が必要であるとの認識が示された。

(事務局:国土地理院)