地震予知連絡会の活動報告
第227回地震予知連絡会(2020年5月20日〜22日)議事概要
令和2年5月20(水)から22日(金)に、メールによる書面会議形式で第227回地震予知連絡会が開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われた。以下に、その概要について述べる。なお、予定していた重点検討課題「日本列島モニタリングの将来像」の検討については、次回以降に延期となった。
記者発表資料一括ダウンロード
記者発表資料(PDF:8.6MB)
※記者会見資料に関する注意事項「ゆっくりすべり(SSE)の地震モーメント推定の修正について」をご参照ください。
※記者会見資料P. 9のすべり分布図(観測値・計算値の図含む)について凡例の矢印の数値を10mmから20mm又は1cmから10mmへ修正しました。(2022年6月14日)
※記者会見は実施しなかったため、説明映像(YouTube動画)はありません。
1.地殻活動モニタリングに関する検討
1.1 地殻活動の概況
(1)全国の地震活動について
日本とその周辺で2020年2月から2020年4月までの3か月間に発生したM5以上の地震は29回であった(気象庁資料3頁)。
(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動
十勝沖で2月中旬から下旬に浅部超低周波地震活動を検出した。また、掲載基準以下ではあったが、観測波形の目視確認から、日向灘周辺海域で2月下旬、3月中旬及び4月上旬に超低周波地震活動があったことを確認した(防災科学技術研究所資料4頁)。
(3)日本列島のひずみ変化
GNSS 連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震及び熊本地震の余効変動、九州北部・四国西部のスロースリップ、種子島近海の地震及び山形県沖の地震の影響が見られる(国土地理院資料5頁)。
1.2 プレート境界の固着状態とその変化
(1)駿河トラフ・南海トラフ・南西諸島海溝周辺
・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
短期的スロースリップ活動を伴う顕著な微動活動が四国中部から西部において2月10日から24日に発生した。これ以外の主な深部低周波微動活動は、紀伊半島北部から西部(3月7日〜23日)、四国東部(3月15日〜17日、3月20日〜24日、4月18日〜26日)、四国西部から豊後水道(2月7日〜10日)で観測された(防災科学技術研究所資料6−7頁)。(防災科学技術研究所資料6−7頁)。
GNSS 連続観測により、3月上旬から中旬頃にかけて紀伊半島北部から中部で、2月上旬から下旬頃にかけて四国西部で短期的スロースリップが検出された。プレート間のすべりを推定した結果、紀伊半島北部から中部で最大7mm のすべりが、四国西部で最大2cm のすべりが推定された(国土地理院資料8−9頁)。
・南海トラフ孔内観測で捉えた浅部ゆっくりすべり
2020年3月18日頃から25日頃までにかけてSSEに起因すると考えられるゆっくりとした間隙水圧変動が観測された(図b)。また、2020年3月23日から24日にかけて超低周波地震および低周波微動が観測されたが、その後は低調となった(図d)(海洋研究開発機構資料10頁)。
・紀伊水道の非定常的な地殻変動
2019 年春頃から紀伊水道で観測されていた非定常的な地殻変動は、最近では停滞しているように見える(国土地理院資料11-13頁)。
・志摩半島の非定常的な地殻変動
GNSS 連続観測により、2019 年中頃から志摩半島を中心とした非定常的な地殻変動が観測されている。プレート間のすべりを推定した結果、志摩半島及びその周辺に最大4cm程度のすべりが推定された(国土地理院資料14頁)。
1.3 その他
(1)石川県能登地方の地震(3月13日 M5.5)
2020年3月13日2時18分に石川県能登地方の深さ12kmでM5.5の地震(最大震度5強)が発生した。この地震は、地殻内で発生した。この地震の発震機構(CMT解)は、西北西−東南東方向に圧力軸をもつ逆断層型である。この地震は、「平成19年(2007年)能登半島地震」(M6.9、最大震度6強)の活動域の東端で発生した。(気象庁資料15頁)。
(2)長野県中部の地震(4月23日 M5.5)
2020年4月23日13時44分に長野県中部の深さ3kmでM5.5の地震(最大震度4)が発生した。この地震は、地殻内で発生した。この地震の発震機構は、北西−南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である。この地震の震源付近では4月22日からM3.0を超える地震が発生しており、この地震の発生以降、地震活動がより活発になった。
この付近では、1998年にも地震活動が活発になった事例があり、同年8月12日にM5.0の地震、16日にM5.6の地震が発生するなど、活発な地震活動が続いた。(気象庁資料16-17頁)。
各機関からの提出議題
《地殻活動モニタリングに関する検討》
【1】気 象 庁 1. 地殻活動の概況 a. 地震活動 O 全国M5.0以上の地震と主な地震の発震機構 ・2020年2月〜2020年4月の全国の地震活動概況を報告する。 2. 東北地方太平洋沖地震関連 S 東北地方太平洋沖地震余震域の地震活動 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 S 千葉県東方沖の地震(2月1日 M5.0) S 浦河沖の地震(3月28日 M5.0) S 宮城県沖の地震(4月20日 M6.2) S 青森県東方沖の地震(4月24日 M5.2) S 茨城県沖の地震(5月11日 M5.8)※期間外 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 S 茨城県南部の地震(2月1日 M5.3) S 千葉県北東部の地震(2月20日 M4.3) S 茨城県南部の地震(4月12日 M5.0) S 茨城県南部の地震(4月26日 M4.8) S 千葉県北西部の地震(5月4日 M5.6)※期間外 S 千葉県北西部の地震(5月6日 M5.0)※期間外 S 東海・南関東地方の地殻変動 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 南海トラフ沿いの地震活動 S 東海地域から豊後水道にかけての深部低周波地震活動 S 南海トラフ沿いの長期的スロースリップの客観検知 S 紀伊半島北部から東海の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(3月8日〜23日) S 東海・南関東地方の地殻活動 S 四国の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(2月6日〜3月9日) S 四国中部から西部の深部低周波地震活動と短期的ゆっくりすべり(2月10日〜3月9日) d.その他 S 全国GNSS観測点のプレート沈み込み方向の位置変化 4.その他の地殻活動等 S 択捉島南東沖の地震(2月13日 M7.2) S 釧路地方中南部の地震(2月20日 M4.6) S 福島県沖の地震(2月12日 M5.4) S 秋田県内陸南部の地震(3月11日 M4.4) S 青森県東方沖の地震(4月30日 M5.3) O 石川県能登地方の地震(3月13日 M5.5) ・2020年3月13日02時18分に石川県能登地方の深さ12kmでM5.5の地震(最大震度5強)が発生した。 この地震は、地殻内で発生した。この地震の発震機構(CMT解)は西北西−東南東方向に圧力軸をもつ逆断層型である。 S 長野県北部の地震(4月13日 M4.2) S 小笠原諸島西方沖の地震(4月18日 M6.8) O 長野県中部の地震(4月23日 M5.5) ・2020年4月23日13時44分に長野県中部の深さ3kmでM5.5の地震(最大震度4)が発生 した。 この地震は、地殻内で発生した。この地震の発震機構は北西−南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である。この地震の震源付近では4月22日からM3.0を超える地震が発生しており、この地震の発生以降、地震活動がより活発になった。 S 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測 S 豊後水道の地震(3月9日 M4.7) S 薩摩半島西方沖の地震(5月3日 M6.2)※期間外 S フィリピン付近の地震(4月11日 M6.1) S 千島列島東方(北西太平洋)の地震(3月25日 Mw7.5) 【2】国土地理院 1. 地殻活動の概況 b. 地殻変動 O GEONETによる全国の地殻水平変動 ・GEONETによるGNSS連続観測から求めた最近1年間及び3か月間の全国の水平地殻変動を報告する。 O GEONETによる2期間の地殻変動ベクトルの差 ・最近3か月間の水平方向の地殻変動について、1年前の同時期の水平変動ベクトルとの差を取って 得られた非定常的な変動の概況を報告する。 O GNSS連続観測から推定した日本列島のひずみ変化 ・GNSSデータから推定した日本列島の最近1年間のひずみ変化の概況を報告する。 2. 東北地方太平洋沖地震関連 O 地殻変動ベクトル ・東北地方太平洋沖地震後における水平・上下の地殻変動について、全期間の累積及び 最近3か月間の変動の概況を報告する。 O GNSS連続観測時系列 ・東北地方太平洋沖地震後の東日本におけるGNSS連続観測の時系列の概況を報告する。 S 成分変位と速度グラフ 3. プレート境界の固着状態とその変化 b. 相模トラフ周辺・首都圏直下 S 伊豆半島・伊豆諸島の水平上下変動 c. 南海トラフ・南西諸島海溝周辺 【森〜掛川〜御前崎間の上下変動】 S 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測 S 高精度比高観測点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測 S 高精度比高観測 S 御前崎周辺 GNSS連続観測時系列 S 駿河湾周辺 GNSS連続観測時系列 S 東海地方の地殻変動 S 東海地方の非定常地殻変動 O 紀伊半島西部・四国東部の非定常水平地殻変動(長期的SSE) ・2019年春頃から紀伊半島西部及び四国東部において、これまでの傾向とは異なる地殻変動をGNSSで観測したので、 その概況を報告する。 O 志摩半島の非定常水平地殻変動(長期的SSE) ・2019年中頃から志摩半島において、これまでの傾向とは異なる地殻変動をGNSSで観測したので、その概況を報告する。 O 紀伊半島北部〜中部の非定常水平地殻変動(短期的SSE) ・紀伊半島北部〜中部において、深部低周波微動と同期したスロースリップをGNSSデータから推定したで、その概況を報告する。 S 紀伊半島 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測 S 南海トラフ周辺 GNSS連続観測時系列 S 南海トラフ沿いの地殻変動 S 南海トラフ沿いの非定常地殻変動 O 四国地方の非定常水平地殻変動(短期的SSE) ・四国西部において、深部低周波微動と同期したスロースリップをGNSSデータから推定したので、 その概況を報告する。 S 室戸岬周辺 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測 4. その他の地殻活動等 S 北海道太平洋岸 GNSS連続観測時系列 S 伊豆東部地区 GNSS連続観測時系列 S 伊豆諸島地区 GNSS連続観測時系列 S 測地VLBI観測(超長基線測量) 【3】北海道大学 【4】東北大学理学研究科・災害科学国際研究所 【5】東京大学地震研究所 【6】東京工業大学 【7】名古屋大学 【8】京都大学理学研究科・防災研究所 【9】九州大学 【10】鹿児島大学 【11】統計数理研究所 【12】防災科学技術研究所 3. プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 O 日本周辺における浅部超低周波地震活動 ・十勝沖で2月中旬から下旬に浅部超低周波地震活動を検出した。 また、掲載基準以下ではあったが、観測波形の目視確認から、 日向灘周辺海域で1月下旬、3月中旬及び4月上旬に超低周波地震活動があったことを確認した。 S 南海トラフ周辺における最近の傾斜変動 O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況 ・短期的スロースリップ活動を伴う顕著な微動活動が四国中部から西部において2月10日から24日に発生した。 これ以外の主な深部低周波微動活動は、紀伊半島北部から西部(3月7日〜23日)、 四国東部(3月15日〜17日、3月20日〜24日、4月18日〜26日)、四国西部から豊後水道(2月7日〜10日)で観測された。 【13】産業技術総合研究所 3. プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2020年2月?2020年4月) S 紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2020年2月?2020年4月) S 東海・紀伊半島・四国における短期的スロースリップイベント(2020年2月?2020年4月) 4. その他の地殻活動等 S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2020年2月?2020年4月) S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2020年2月?2020年4月) S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2020年2月?2020年4月) S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2019年11月?2020年4月) 【14】海上保安庁 1. 地殻活動の概況 b.地殻変動 S 下里水路観測所におけるSLR観測 3. プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 南海トラフ沿いの海底地殻変動観測結果 【15】海洋研究開発機構 3. プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 O 南海トラフ孔内観測で捉えた浅部ゆっくりすべり 【16】その他の機関
記載分類は以下のとおりとなっています。 1.地殻活動の概況 a.地震活動 b.地殻変動 2.東北地方太平洋沖地震関連 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 d.その他 4.その他の地殻活動等 ・口頭報告(O) ・資料提出のみ(S)