地震予知連絡会の活動報告

第235回地震予知連絡会(2022年5月11日~16日)議事概要

 令和4年5月16日(月)、国土地理院関東地方測量部において第235回地震予知連絡会がWeb会議併用形式で開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われ、その後、重点検討課題として「東北日本日本海側の地殻活動」に関する報告・議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

記者発表資料一括ダウンロード
 記者発表資料(PDF:13.6MB)
 ※記者発表資料p.11の推定すべり分布の図について、最大すべり量の数値を22cmから21cmへ修正しました(2022年7月1日)

記者会見での説明映像(YouTube動画)


1.地殻活動モニタリングに関する検討

1.1 地殻活動の概況

(1)全国の地震活動について

 日本とその周辺で2022年2月から4月までの3か月間に発生したM5.0以上の地震は59回であった。このうち、最大震度5弱以上を観測した地震は4回発生した(資料2頁・気象庁)。

(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動

 掲載基準を満たす活動は検出されなかったが、2月上旬に四国~紀伊水道の沖で、4月上旬には種子島沖以南で超低周波地震活動が発生したとみられる(資料3頁・防災科学技術研究所)。

(3)日本列島のひずみ変化

 GNSS 連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震及び熊本地震の余効変動の影響が見られる。また、福島県沖の地震及び石川県能登地方の地震活動の影響が見られる(資料4頁・国土地理院)。

1.2 プレート境界の固着状態とその変化

(1)駿河トラフ・南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
 短期的スロースリップイベントを伴う顕著な微動活動が、四国中部から豊後水道において、3月30日から4月11日に発生した。これ以外の主な深部低周波微動活動は、東海地方(3月17日から21日)、豊後水道(2月8日から10日)で観測された(資料5-6頁・防災科学技術研究所)。GNSS連続観測により、2022年3月下旬から4月上旬にかけて四国中部から西部で短期的スロースリップが検出された。プレート間のすべりを推定した結果、最大16mmのすべりが推定された(資料7頁・国土地理院

・室戸沖~紀伊水道沖の浅部低周波微動
 2021年12月下旬から始まった室戸沖~紀伊水道沖付近の微動活動は、2月8日をピークに低下し、2月15日頃に概ね収束した。2月上旬には、主な活動域が室戸沖から紀伊水道沖に遷移する様子が観測された(資料8頁・防災科学技術研究所)。

・紀伊半島西部・四国東部の非定常的な地殻変動
 GNSS連続観測により、紀伊半島西部・四国東部で2020年夏頃から開始した非定常的な地殻変動が引き続き捉えられた。プレート間のすべりを推定した結果、最大11cmのすべりが推定された(資料9頁・国土地理院)。

・四国中部の非定常的な地殻変動
 GNSS連続観測により、四国中部で2019年春頃から開始した非定常的な地殻変動が引き続き捉えられた。プレート間のすべりを推定した結果、四国中部で最大21cmのすべりが推定された(資料10頁・国土地理院)。

・九州地域の非定常的な地殻変動
 GNSS連続観測により、2020年夏頃から九州南部で観測されている非定常的な地殻変動は、最近は停滞している(資料11頁・国土地理院)。

1.3 その他

(1)福島県沖の地震(最大規模の地震:3月16日 M7.4)(4月6日 M5.2)(3月16日からの地震活動)

 2022年3月16日23時36分に福島県沖の深さ57kmでM7.4の地震(最大震度6強)が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレート内部で発生した。この地震により、宮城県の石巻港(国土交通省港湾局)で31cm(暫定値)の津波を観測するなど、青森県から茨城県にかけての太平洋沿岸で津波を観測した。この地震の震源付近では、この地震が発生する約2分前の23時34分にM6.1の地震(最大震度5弱)が発生するなど、3月16日から4月30日までに震度1以上を観測する地震が125回発生した(資料12-14頁・気象庁)。この地震に伴い、震央北の宮城県牡鹿半島のGNSS連続観測点で北方向に最大約3cmの地殻変動が観測された。震源断層モデルを推定したところ、北北東-南南西走向で東南東に傾き下がる断層面上における逆断層すべりが求まった(資料15-19頁・国土地理院)。

(2)岩手県沖の地震(3月18日 M5.6、3月30日 M4.9)

 2022年3月18日23時25分に岩手県沖の深さ18kmでM5.6の地震(最大震度5強)が発生した。また、3月30日00時18分にほぼ同じ場所の深さ17kmでM4.9の地震(最大震度4)が発生した。これらの地震は陸のプレートの地殻内で発生した。3月18日の地震の発震機構(CMT解)は北北西-南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、3月30日の地震の発震機構は北北西-南南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型である(資料20頁・気象庁)。

(3)石川県能登地方の地震活動(最大規模の地震:2021年9月16日 M5.1)

 石川県能登地方では、2018年頃から地震回数が増加傾向となり、2020年12月から地震活動が活発になった。2022年4月末現在もその傾向は継続している。2020年12月から2022年4月30日までに震度1以上を観測した地震が122回発生した。このうち最大規模の地震は、2021年9月16日に発生したM5.1の地震(最大震度5弱)である(資料21頁・気象庁)。この地震活動の開始以降、震源域に近い能登半島のGNSS連続観測点で南南西方向に最大1cmを超える水平変動や、最大3cmを超える隆起などの地殻変動が観測されている(資料22-23頁・国土地理院)。また、最近までに明らかになった群発地震の各地域の解析結果について報告がなされた(資料24頁・統計数理研究所)。

(4)茨城県北部の地震(4月19日 M5.4)

 2022年4月19日08時16分に茨城県北部の深さ93kmでM5.4の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した。発震機構は東北東-西南西方向に圧力軸を持つ型である(資料25頁・気象庁)。

(5)京都府南部の地震活動(最大規模の地震:3月31日・5月2日 M4.4)

 京都府南部では、2022年3月31日から地震活動が活発となり、5月9日までに震度1以上を観測する地震が14回発生している(2022年5月10日現在)。このうちM4.0以上の地震は4回発生しており、最大規模の地震は、3月31日及び5月2日にともに深さ13kmで発生したM4.4の地震(ともに最大震度4)であった。これらの地震は地殻内で発生した。これらの地震の発震機構は、東西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である(資料26頁・気象庁)。

(6)沖縄本島北西沖の地震活動(最大規模の地震:3月17日 M5.9)

 この地震活動の開始以降、震源域に近い久米島のGNSS連続観測点で南南東方向に最大約1cmの地殻変動が観測されている(資料27頁・国土地理院)。


2.重点検討課題「東北日本日本海側の地殻活動」の検討

 東北日本日本海側の震源断層モデルの構築とリスクコミュニケーション、強震動予測、津波予測、プレート間相互作用による震源断層への応力蓄積に関する報告が行われ、2020年12月以降に能登半島で活発化している地震活動の解釈や東北日本日本海側における地殻活動の今後の研究課題についての議論が行われた(コンビーナ:資料29頁・コンビーナ:東京大学地震研究所・石山達也委員)。

◆東北日本背弧域での震源断層モデルの構築と実施したリスクコミュニケーション会議

 日本海と沿岸域で発生する地震・津波災害の予測の基礎となる震源断層モデルを反射法・地震探査データを基軸として構築したこと、震源断層の形状・特性には、日本海形成期の造構プロセスの影響が大きいこと、日本海沿岸の9道府県で、国・地方自治体、ライフライン事業者等の防災関係機関の担当者が参加した、リスクコミュニケーション会議を開催したことが報告された(資料31頁・東京大学・佐藤比呂志名誉教授)。

◆東北日本背弧域の震源断層モデルに基づく強震動予測

 構築された北海道沖、青森沖~佐渡沖、富山沖、福井沖~鳥取沖、島根沖~五島列島沖、各沿岸地域等の震源断層モデルに対する強震動予測が行われた。また日本海側堆積平野等で微動アレイ観測等により地下構造モデルの高度化がすすめられた。また、自治体震度波形データを収集し地震波サイト増幅特性の評価が行われた(資料32頁・京都大学防災研究所・岩田知孝教授)。

◆東北日本背弧域の震源断層モデルに基づく確定論・確率論的津波予測

 東北日本背弧域の震源断層モデルについて、津波シミュレーションを実施した。日本海で発生した20世紀の地震(1983年日本海中部地震、1964年新潟地震)について、観測された津波波形や遡上高分布との比較がなされた。津波予測の確定論的(シナリオ型)予測については、用いるスケーリング則や断層の形状によって、すべり量や津波高に違いが出ること、確率論的津波予測では、日本海沿岸の中で東北地方が最も大きな津波高を示すことが示された(資料33頁・東京大学地震研究所・佐竹健治教授)。

◆日本海溝におけるプレート間相互作用による東北日本背弧域の震源断層への応力蓄積

 日本列島域の構造を考慮した有限要素モデルによる東北日本の地殻変動データ解析を行い、東北日本背弧域の震源断層において2011年東北沖地震前後のクーロン応力を計算した結果、震源断層上のクーロン応力は、2011年以前のM7内陸地震の頻発と2011年以降の静穏化を概ね説明できることがわかった(資料34頁・海洋研究開発機構・橋間昭徳特任副主任研究員)。


3.次回(第236回)重点検討課題「光ファイバーセンシング技術の地震・測地学への応用」の趣旨説明

 光ファイバーセンシングとは、光ファイバー自身をセンサーとして用いて、歪や振動を検知する技術である。このうち、分散型音響センシング(DAS: Distributed Acoustic Sensing)計測は、セキュリティー監視やパイプラインのモニタリングを目的に使われ始め、続いて資源探査の分野において地震探査に応用され、さらに海域や陸上における自然地震観測にも適用されはじめている。しかしながら、国内におけるDAS計測による地震探査や地震観測の事例はまだ少なく、計測データの評価やデータ処理手法についての検討が必要、S/N改善や測地帯域への応用のためのさらなる技術開発が必要、といった課題がある。こうした状況を踏まえ、次回はDAS計測の火山分野、地震分野及び探査分野への応用、地殻変動観測に向けた光ファイバーセンシング技術開発について報告し、光ファイバーセンシング技術は、測地・地震帯域において高感度化が可能か、どのような観測に有効か、従来の測地・地震学の手法・解釈を光計測技術にどこまで応用可能か、また生成される大量のデータをどのように処理するか等について議論を行う予定である(資料35頁・コンビーナ:東京大学地震研究所・篠原雅尚委員)。


4.地震予知連絡会「予測実験WG」の設置について

 地震予知連絡会の予測実験WGの設置が全会一致で承認された(資料36頁・事務局)。


各機関からの提出議題

  地殻活動モニタリングに関する検討 提出議題一覧(PDF:209KB)