地震予知連絡会の活動報告
第120回地震予知連絡会(1996年8月19日) 議事概要
平成8年8月19日、国土地理院関東地方測量部において、第120回地震予知連絡会が開催され、国立大学、関係観測機関等から地震活動、地殻活動の観測データの報告があり、議論が行われました。
以下に主な議事の概要を紹介します。
1.宮城・秋田・山形県境付近の地震活動
平成8年8月11日に発生した宮城・秋田・山形県境付近の地震活動は、3時12分に発生したM5.9の地震を皮切りに、M5級の地震が数個発生する活発な活動となった。余震は、M5.9の地震発生直後は南北に並んだが、8時10分のM5.7の余震はこの配列から東にはずれて発生した。さらに、8月13日のM5.1の余震は西側に発生し、これに伴う活動は主たる余震の配列に直交し西へ伸びる配列を形成した(東北大学資料)。今回の活動は、周辺地域の直前の活動に重ならないように発生しており、西へ伸びる配列の周辺にもこれまで活動は見られなかった(東北大学資料)。余震活動は本震−余震型の推移を示し、大森公式に従って順調に減衰している(気象庁資料)。今後、M5級の地震が発生する可能性も残されているが、活動としては終息に向かっているものと考えられる。
GPS連続観測により、この地震活動に伴う地殻変動が検出された(国土地理院資料1,資料2)。震源に近い、新庄、鳴子及び皆瀬の観測局が1cm程度移動している(地殻水平変動図)。基線長では、新庄−鳴子間が最も大きく、1cm程度縮んだ(基線長変化図)。
2.東海地方の地殻活動
駿河湾周辺の地震活動は、特に大きな変化は見られず、依然として駿河湾南部の活動が低調な状態が続いている(気象庁資料)。森〜掛川〜御前崎間の水準則量結果によると、4月〜7月の間は変動が小さい(国土地理院資料1,資料2)。浜岡町の水準点2595の高さの経年変化を見ると、1994〜1995年に年周変化の振幅が大きくなるとともに、それまでの傾向からはずれる様子が見られたが、1996年になって元の傾向に戻りつつあるように見える(水準点2595の経年変化)。東海地方全域の水準測量結果では、1995年〜1996年の変化は浜名湖側も沈降するパターンになっているが、1994年からの2年間では浜名湖側の隆起、御前崎・焼津側の沈降が顕著となっている(国土地理院資料)。
3.房総半島東部の地殻活動
房総半島東部は普段でも活発なところであるが、ややまとまった地震活動が1996年5月に見られた(気象庁資料)。地震はせいぜいM4程度であり、5月の活動は深さ約25kmのところのほぼ水平面上に分布している(防災科学技術研究所資料)。この活動と時期を同じくして、GPS連続観測により地殻変動が捉えられた。防災科学技術研究所のGPS連続観測では、1995年の後半の半年に、北西に移動していた市原観測局が、今回の活動を挟んだ時期では反転して、南東へ移動している(防災科学技術研究所)。国土地理院のGPS連続観測網でも変動が捉えられているが、地域・基線によって変動の開始時期、変動のパターンが異なるのが特徴である(国土地理院資料1,資料2,資料3,資料4)。今回のイベント前後の期間のデータの比較により、変動ベクトルを求めると、房総半島東岸の太平洋側で1cmを越える南東方向への水平変動が見られる(国土地理院資料)。今回のイベントは、地震の規模に比して地殻変動は大きく、地震を伴わないゆっくりとしたすべりが発生した可能性も議論された。
(事務局:国土地理院)