地震予知連絡会の活動報告
第208回地震予知連絡会(2015年8月21日)議事概要
説明資料の一括ダウンロードはこちら。
説明資料(PDF:25MB)
記者レクチャーでの説明映像はこちら。
「地殻活動のモニタリングに関する検討」資料説明映像 (24MB,約13分)
「重点検討課題に関する検討」資料説明映像 (27MB,約18分)
※一部音声に乱れがあります。
※アドオンを実行してご覧下さい。
1.地殻活動モニタリングに関する検討
1.1 地殻活動の概況
(1)全国の地震活動について
国内で2015年5月から2015年7月までの3か月間に発生したM5以上の地震のうち、主なものとして、5月13日の宮城沖の地震(M6.8)、5月30日の小笠原諸島西方沖の深発地震(M8.1)、5月31日の鳥島近海の地震(M6.6)、6月11日の岩手沖の地震活動(最大M5.9)があった(気象庁資料3頁)。
(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動
5月から7月にかけて日向灘及び足摺岬沖で超低周波地震活動があった。5月上旬に日向灘で活動が開始し、6月上旬までに足摺岬の南方沖に到達した後、7月上旬までには活動がほぼ終息した。足摺岬沖における顕著な活動は、豊後水道のスロースリップと同期して発生した2010年以来である(防災科学技術研究所資料4頁)。
(3)日本列島のひずみ変化
GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震後の余効変動や長野県北部の地震の影響が見られる(国土地理院資料5頁)。
1.2 東北地方太平洋沖地震関連
東北地方太平洋沖地震以降の累積水平変動には、東北地方から関東甲信越にかけて東向きの変動が見られ、岩手川崎A観測点で最大約123cmに達している。また、上下変動には、宮城県から千葉県にかけての太平洋沿岸と関東甲信越地方及び青森県から北海道の襟裳岬付近にかけた地域に隆起が、岩手県沿岸と奥羽脊梁山脈付近に沈降が見られる。M牡鹿観測点で最大約40cmの隆起が観測されている(国土地理院資料6−7頁)。
1.3 プレート境界の固着状態とその変化
(1)日本海溝・千島海溝周辺
・宮城県沖の地震
2015 年5月13 日に宮城県沖の深さ46kmでM6.8 の地震(最大震度5強)が発生した。この地震は発震機構が東西方向に圧力軸を持つ逆断層型で太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した(気象庁資料8項)。この地震の発生域では、M6クラスの地震が繰り返し発生してきたことが報告された(気象庁資料9項)。この地震に伴う地殻変動から、プレート境界における西傾斜の逆断層滑り(Mw6.8)が推定された(国土地理院資料10項)。
(2)南海トラフ・南西諸島海溝周辺
・南海トラフ沿いの海底地殻変動観測結果
東北地方太平洋沖地震の影響を除去した海底地殻変動のデータには、アムールプレートに対する年間最大5.8cmの速度の北西向きの変動が見られる(海上保安庁資料11項)。
・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
短期的スロースリップを伴う顕著な微動活動が、四国西部(5月26日から6月2日)で発生した。それ以外の主な微動活動が、紀伊半島北部(5月4日から10日及び7月17日から25日)、紀伊半島南部(6月4日から8日)、四国中部(5月31日から6月5日)で発生した(防災科学研究所資料12項)。
1.4 その他の地殻活動
(1)小笠原諸島西方沖の地震
2015 年5月30日に小笠原諸島西方沖の深さ682kmでM8.1の地震が発生した。この地震は、東西方向に張力軸を持つ型で、太平洋プレート内部で発生した。深さ500km程度の場所では定常的に地震活動が見られているが、今回の震源付近は、これまで地震の発生が見られない領域であった(気象庁資料13頁)。
2.重点検討課題「予測実験の試行について」の検討
前回に引き続き、「予測実験の試行」に関する検討が行われた。今回は、定式化された手法を過去のデータに適用して、現在までの状況を予測する事例が紹介され、議論が行われた(趣旨説明者:国土地理院・今給黎哲郎委員資料17頁)。
◆CSEPに基づく地震活動予測の検証
将来の地震の数を予測する地震活動予測モデルを、地震カタログを基に比較・検証するCSEPの事例が紹介された。地震予測結果を評価するためには、予測領域の分割の仕方や地震が起きない情報の活用等が重要であることが指摘された。また、東北地方太平洋沖地震後については、地震数の評価が重要であり、ETASモデルあるいは改良大森公式による外挿処理が効果的であることが報告された(東京大学地震研究所・鶴岡弘准教授資料18頁)。
◆気象庁における繰り返し地震の調査の取り組み
宮古島の繰り返し地震の発生予測等に関する報告がなされた。一例として、地震波形の相似性を基に区分された宮古島周辺の繰り返し地震のうち1つのタイプについて、BPT分布モデルを用いた分析から、2015年3月14日時点で、次の地震が2017年3月〜2018年1月の期間に70%の確率で発生すると予測されることが紹介された(気象庁・橋本徹夫委員資料19頁)。
◆前震活動に基づく地震発生の経験的予測
前震活動を伴いやすい3つの領域(日本海溝沿、伊豆半島沖、長野県北中部)について、本震を予測するための有効な前震候補の選択条件及びそれを基にした事後予測の結果が紹介された。本手法を適用することにより、3領域の地震予測に関して高い確率利得が得られた。適中率(前震候補のうち真の前震の割合)はそれぞれ約22%、22%、11%であり、予知率(予測された本震の割合)は約27%、68%、45%であったことが報告された。(気象研究所・前田憲二委員・弘瀬冬樹研究官資料20頁)。
◆東北地方太平洋沖地震の余効変動の予測実験
東北地方太平洋沖地震の余効変動の関数近似による予測実験が紹介された。余効変動時系列について、対数関数と指数関数を組み合わせたモデルによって良好な近似や短期的予測結果が得られること等が報告された。また、粘弾性緩和と余効滑りの分離は現状では困難なことや定常速度成分が予測結果を左右すること等が指摘された(国土地理院・飛田幹男委員資料21頁)。
◆平常的な地震活動と「予測」の価値 −当たり前の地震について−
予測の価値について平常的な地震活動を基にした考察が報告された。ポワソン過程による確率を用いることで、対象とする事象の予測の価値を評価する事例が紹介された。研究者にとっては当たり前の結論でも社会に伝えていく必要性があることが指摘された(国土地理院・今給黎哲郎委員資料22頁)。
3.次回(第209回)重点検討課題「東北地方太平洋沖地震がもたらす広域地殻活動」の趣旨説明
東北地方太平洋沖地震前後の地殻変動や地震等のデータを列島規模で比較し、超巨大地震がもたらした広域的な地殻活動の変化の特徴について整理を試みる予定である
(コンビーナ:北海道大学・高橋浩晃委員資料23頁)。
各機関からの提出議題
《地殻活動モニタリングに関する検討》
《地殻活動モニタリングに関する検討》 【1】気 象 庁 1. 地殻活動の概況 a.地震活動 O 全国M5.0以上の地震と主な地震の発震機構 ・2015年05月〜07月の全国の地震活動概況を報告する。 S 東海地域の地震活動 2.東北地方太平洋沖地震関連 S 東北地方太平洋沖地震余震域の地震活動 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 S 福島県沖の地震(5月3日 M5.0) O 宮城県沖の地震(5月13日 M6.8) ・2015年5月13日に発生した宮城県沖のM6.8の地震について前回報告時以降、近地強震波形による震源過程解析や、 強震波形相関解析などの解析を行ったので、その結果を紹介する。 S 福島県沖の地震(5月15日 M5.0) S 青森県東方沖の地震(6月8日 M5.6、6月23日 M4.6) S 三陸沖の地震(6月11日 M5.9) S 岩手県沖の地震(7月9日 M5.1) S 福島県沖の地震(8月3日 M5.1、8月5日 M5.0) ※期間外 S 茨城県沖の地震(8月6日 M5.2) ※期間外 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 S 茨城県南部の地震(6月9日 M4.4) S 茨城県南部の地震(7月10日 M4.4) S 東海・南関東地方の地殻変動 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 東海地域から豊後水道にかけての深部低周波地震活動 S 東海・南関東地方の地殻変動 S 東海地域の長期的ゆっくりすべり(平成25年はじめ頃〜) S 愛知県の深部低周波地震活動とひずみ変化(4月25日〜5月6日) d.その他 O 海溝と直交する方向の全国の基線長変化 ・紀伊水道付近の基線に、2014年後半から伸びの変化が見られた。2006年から2009年のデータから推定したトレンド を除去した2014年7月から2015年7月の水平変位を見たところ、紀伊水道付近で南から南東向きの非定常変位が見ら れた。2014年後半から紀伊水道において小規模な長期的スロースリップが発生している可能性がある。 4.その他の地殻活動等 S 網走地方の地震(6月4日 M5.0) S 北海道東方沖の地震(7月7日 M6.3) S 岩手県内陸北部の地震(7月10日 M5.7) S 鳥島近海の地震(5月3日 M5.9) S 鳥島近海の地震(5月11日 M6.3) S 埼玉県北部の地震(5月25日 M5.5) S 茨城県南部の地震(5月30日 M4.8) O 小笠原諸島西方沖の地震(5月30日 M8.1) ・2015年5月30日20時23分に、小笠原諸島西方沖の深さ682kmでM8.1の地震が発生した。この地震は、太平洋プレート 内部で発生した。発震機構は、東西方向に張力軸を持つ型である。今回の地震の震央周辺の深さ500km程度の場所 では定常的な地震活動が見られるが、今回の地震の震源付近ではこれまで地震活動が見られていなかった。今回の 地震のように深さが600kmを超えるM8程度の地震は、世界で発生した地震を見てもあまり知られていない。 S 鳥島近海の地震(5月31日 M6.6) S 小笠原諸島西方沖の地震(6月23日 M6.8) S 八丈島近海の地震活動(7月14日〜 最大M4.7)) S 愛媛県南予の地震(7月24日 M4.6) S 奄美大島近海の地震(5月22日 M5.1) S 大分県南部の地震(7月13日 M5.7) S パプアニューギニア、ニューブリテンの地震(5月1日 Mw6.8、5月5日 Mw7.5) S ブーゲンビル−ソロモン諸島の地震(5月7日 Mw7.0) S ネパールの地震(5月12日 Mw7.2) S ソロモン諸島の地震(7月10日 Mw6.7)、サンタクルーズ諸島の地震(7月18日 Mw6.9) S インドネシア、パプアの地震(7月28日 Mw7.0) 【2】国土地理院 1.地殻活動の概況 b.地殻変動 O GEONETによる全国の地殻水平変動 O GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差 O GNSS連続観測から推定した日本列島のひずみ変化 2.東北地方太平洋沖地震関連 O 東北地方太平洋沖地震後の地殻変動ベクトル O GNSS連続観測時系列 S 成分変位と速度グラフ O 余効変動の予測実験 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 O 2015年5月13日 宮城県沖の地震 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 S 伊豆半島・伊豆諸島の地殻水平・上下変動図 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 O 森〜掛川〜御前崎間の上下変動 O 水準点2595(御前崎市)の経年変化 O 水準点(140-1・2595)の経年変化 S 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化 S 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測 S 高精度比高観測点の上下変動 水準測量とGNSS連続観測 S 高精度比高観測 S 御前崎地方の上下変動 S 菊川市付近の水準測量結果 O 浜松〜御前崎〜静岡間の上下変動 O 水準測量による東海地方の上下変動 S 東海地方の各水準点の経年変化(7月期) S 1979年を基準とした東海地方各水準点の経年変化(固定点:J60) S 御前崎周辺 GNSS連続観測時系列 S 駿河湾周辺 GNSS連続観測時系列 S 御前崎長距離水管傾斜計月平均 S 御前崎・切山長距離水管傾斜計による傾斜変化 S 御前崎地中地殻活動観測施設 S 東海地方の地殻変動 S 東海地方の非定常的な地殻変動 4.その他の地殻活動等 S 2014年11月22日長野県北部の地震の余効変動 S 伊豆東部地区 GNSS連続観測時系列 S 伊豆諸島地区 GNSS連続観測時系列 S 2015年7月3日中国・新疆の地震に関する合成開口レーダー解析結果 【3】北海道大学 【4】東北大学災害科学国際研究所 【5】東京大学地震研究所 【6】東京工業大学 【7】名古屋大学 【8】京都大学防災研究所 4.その他の地殻活動等 S 近畿地方北部の地殻活動 【9】九州大学 【10】鹿児島大学 【11】統計数理研究所 【12】防災科学技術研究所 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 O 日本周辺における浅部超低周波地震活動 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 O 日本周辺における浅部超低周波地震活動 O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況 S 関東・東海地域における最近の傾斜変動 4.その他の地殻活動等 S 2015年5月25日埼玉県北部の地震 S 2015年5月30日小笠原諸島西方沖の地震 S 2015年6月 4日網走地方の地震 S 2015年7月13日大分県南部の地震 【13】産業技術総合研究所 3.プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2015年5月?2015年7月) S 紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2015年5月?2015年7月) S 東海・紀伊半島・四国における短期的スロースリップイベント(2015年5月?2015年7月) 4.その他の地殻活動等 S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2015年5月?2015年7月) -- 神奈川県温泉地学研究所・産総研 S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2015年5月?2015年7月) S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2015年5月?2015年7月) S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2015年2月?2015年7月) --鳥取大学工学部・産総研 【14】海上保安庁 1.地殻活動の概況 b. 地殻変動 S GPSによる地殻変動監視観測 2.東北地方太平洋沖地震関連 O 東北地方太平洋沖地震後の海底地殻変動観測結果 ・海上保安庁が日本海溝沿いで実施している海底地殻変動観測について、東北地方太平洋沖地震後の観測結果を報告する。 3.プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 O 南海トラフ沿いの海底地殻変動観測結果 ・海上保安庁が南海トラフ沿いで実施している海底地殻変動観測についての観測結果を報告する。 【15】海洋研究開発機構
記載分類は以下のとおりとなっています。 1.地殻活動の概況 a.地震活動 b.地殻変動 2.東北地方太平洋沖地震関連 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 d.その他 4.その他の地殻活動等 ・口頭報告(O) ・資料提出のみ(S)