地震予知連絡会の活動報告
第201回地震予知連絡会(2013年11月22日) 議事概要
平成25年11月22日(金)、国土地理院関東地方測量部において第201回地震予知連絡会が開催された。はじめに、地震予知連絡会の将来検討ワーキンググループに関する報告が行われた。次に、全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われ、続いて重点検討課題として「物理モデルに基づいた地震発生予測研究」に関する報告・議論が行われた。最後に次回の重点検討課題「地震・津波即時予測とリアルタイムモニタリング」に関する趣旨説明等が行われた。以下に、その概要について述べる。
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「将来検討ワーキンググループに関する報告」資料説明映像(19MB,約9分)
「地殻活動のモニタリングに関する検討」資料説明映像 (19MB,約9分)
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1.地震予知連絡会将来検討ワーキンググループの報告
地震予知連絡会の役割の再確認と今後の活動の方向性を示すことを目的に第197回地震予知連絡会で設置された将来検討ワーキンググループにおいて検討された内容の報告が行われ、報告書が会長に提出された(地震予知連絡会将来検討ワーキンググループ資料)。
2.地殻活動モニタリングに関する検討
2.1 地殻活動の概況
(1)全国の地震活動について
国内で2013年8月から10月までの3か月間に発生したM5以上の地震のうち、主なものとして、9月20日に福島県浜通りで発生した地震(M5.9)、10月26日に福島県沖で発生した地震(M7.1)が挙げられた(気象庁資料)。
(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動
2013年9月上旬および9月下旬から10月上旬に十勝沖周辺で、9月中旬から10月中旬に日向灘周辺で超低周波地震活動があった(防災科学技術研究所資料)。
(3)日本列島の歪み変化
GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震の余効変動の影響が見られる(国土地理院資料)。
2.2 東北地方太平洋沖地震関連
東北地方太平洋沖地震後、現在までの水平変動の累積には、東北地方から関東甲信越にかけて東向きの変動が見られる。また、上下変動には、宮城県から千葉県にかけての太平洋沿岸と関東甲信越地方及び青森県から北海道の襟裳岬付近にかけた地域に隆起が、岩手県沿岸と奥羽脊梁山脈付近に沈降が見られる(国土地理院資料)。
東北地方太平洋沖地震後の海底地殻変動のデータには、釜石沖1,2及び宮城沖1の観測点に西向きの変動が見られる(海上保安庁資料)。
過去3か月間の東北地方のひずみ変化には、依然として東北地方太平洋沖地震の影響が見られる(国土地理院資料)。
余効変動から推定した太平洋プレート上面の滑り分布には、滑り域の顕著な移動は見られず、モーメントの解放速度が時間と共に小さくなっていることが示された(国土地理院資料)。
2.3 プレート境界の固着状態とその変化
(1)南海トラフ・南西諸島海溝周辺
・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
顕著な深部低周波微動が、東海地方(8月3日から12日、9月29日から10月7日)、紀伊半島北部(9月6日から12日)、紀伊半島南部(10月26日から11月1日)、四国中部(8月14日から18日、10月1日から4日)、四国西部から豊後水道(10月25日から11月3日)、豊後水道(7月29日から8月4日)で発生した(防災科学技術研究所資料)。
2.4 その他の地殻活動等
・10月26日の福島県沖の地震
10月26日に福島県沖で東西方向に張力軸を持つ正断層型の地震(M7.1)が、日本海溝の東側の太平洋プレートの内部で発生した(いわゆる、アウターライズ地震)。この地震により、岩手県から福島県の沿岸で津波が観測された(気象庁資料)。
3.重点検討課題「物理モデルに基づいた地震発生予測研究」の検討
物理モデルに基づいたプレート境界地震の発生予測に向けた研究の現状と課題について議論が行われた。
◆地震発生の物理に基づく予測シミュレーション
地震の予測シミュレーションは、プレート相対運動・断層構成関係・滑り応答関数の3つの要素で構成される発生サイクルモデルにより実現されることが説明された。有効な地震発生シナリオを作成するためには、地震の発生サイクルを数値シミュレーションにより再現し、観測データ・解析から得られる実際の発生サイクルを元に検証を重ねることが課題であることが指摘された(名古屋大学・橋本千尋准教授資料)。
◆プレート境界滑り時空間変化の推移予測
1つのシナリオに従う決定論的な滑りの推移予測ではなく、シミュレーションに基づいて複数のシナリオを作成し、観測データとの比較に基づいて各シナリオの重み付けを行って推移を予測することの重要性が説明された(海洋研究開発機構・堀高峰地震津波・防災研究プロジェクトサブリーダー資料)。
◆「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」における物理モデルに基づく地震発生予測
「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」(平成25年建議)において、物理モデルに基づいた数値シミュレーションを利用して地震発生の長期評価手法の高度化や地震活動予測を目指す研究課題が立案されていることが紹介された。地震発生予測に向けた研究では複数の研究要素が連携していることが示され、シミュレーションの基礎となる物理モデルの高度化のためには、観測で得られる実際の滑り現象の多様性や相互作用等についての理解が重要であることが説明された。また、東北沖地震や豊後水道のスロースリップなどを対象とした予測の試行が重要である一方で、その試行にはデータ同化(数値シミュレーションに観測データを取り入れる手法)の方針や予測結果の非唯一性等に課題があることが指摘された(東北大学・日野亮太教授資料)。
4.次回(第202回)重点検討課題「地震・津波即時予測とリアルタイムモニタリング」の趣旨説明
地震・津波の即時予測に関して、リアルタイムモニタリングによる震源や波動場の即時推定及び処理手法・システム現状や今後の技術開発の展望について議論が行われる予定である(趣旨説明資料)。
各機関からの提出議題
《地殻活動モニタリングに関する検討》
《地殻活動モニタリングに関する検討》 【1】気 象 庁 1.地殻活動の概況 a.地震活動 O 全国M5.0以上の地震と主な地震の発震機構 S 東海地域の地震活動 2.東北地方太平洋沖地震関連 S 東北地方太平洋沖地震余震域の地震活動 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 S 日高地方東部の地震(8月22日 M4.8、10月21日 M4.6) S 岩手県沖の地震(10月10日 M4.4) S 宮城県沖の地震(10月20日 M5.1) S 茨城県沖の地震(9月13日 M4.4、9月30日 M4.4) S 茨城県沖の地震(10月12日 M4.8、10月20日 M4.3) b.相模トラフ周辺・首都圏直下 S 東海・南関東地方の地殻変動(3cを含む) c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 東海地域から豊後水道にかけての深部低周波地震活動 S 愛知県西部の深部低周波地震活動とひずみ変化(8月3日〜12日) S 愛知県の深部低周波地震活動とひずみ変化(9月29日〜10月6日) O 宮古島近海の繰り返し地震(10月19日 M3.9) d.その他 O 海溝と直交する方向の全国の基線長変化 S アリューシャン列島アンドリアノフ諸島の地震(8月31日 Mw6.9) 4.その他の地殻活動等 S 宮城県沖の地震(8月4日 M6.0) S 福島県会津の地震(8月30日 M3.9、9月15日 M3.5) O 福島県浜通りの地震(9月20日 M5.9) O 福島県浜通りから茨城県北部の地震活動 S 福島県沖の地震(10月22日 M5.3) O 福島県沖の地震(10月26日 M7.1) S 遠州灘の地震(8月3日 M4.9) S 鳥島近海の地震(9月4日 M6.8) S 茨城県北部の地震(9月9日 M4.4) S 松代における地殻変動連続観測 S 和歌山県南方沖の地震(8月30日 M4.4) S 内陸部の地震空白域における地殻変動連続観測 S 奄美大島近海の地震(10月3日 M5.1) S 台湾付近の地震(10月31日 M6.5) S パキスタンの地震(9月24日 Mw7.6、9月28日 Mw6.8) S ペルー沿岸の地震(9月26日 Mw7.0) S フィリピン諸島、ミンダナオの地震(10月15日 Mw7.1) S ソロモン諸島の地震(10月16日 Mw6.8) 【2】国土地理院 1.地殻活動の概況 b.地殻変動 O GEONETによる全国の地殻水平変動 O GEONETによる2期間の地殻水平変動ベクトルの差 O GNSS連続観測から推定した日本列島のひずみ変化 O 加藤&津村の解析方法による、各験潮場の上下変動 2.東北地方太平洋沖地震関連 S 浪江町〜相馬市間の上下変動 O 東北地方太平洋沖地震後の地殻変動ベクトル O 対数関数近似 O GNSS連続観測時系列 S 成分変位と速度グラフ O 東北地方太平洋沖地震後のプレート境界面上の滑り分布モデル一覧 O 時間依存 F3【モデル1】 O 矢吹&松浦 F3+海底地殻変動観測点【モデル2】 O 3つの期間における上下変動と滑り分布 O 粘弾性緩和による変動の見積もり 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 S 北海道太平洋岸 GNSS連続観測時系列 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 S 伊豆半島・伊豆諸島の地殻水平・上下変動図 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 水準点2595(御前崎市)の経年変化 S 掛川〜御前崎間の各水準点の経年変化 S 電子基準点の上下変動 水準測量とGNSS観測の比較 S 高精度比高連続観測 S 菊川市付近の水準測量結果 S 御前崎周辺 GNSS連続観測時系列 S 駿河湾周辺 GNSS連続観測時系列 S 御前崎長距離水管傾斜計月平均 S 御前崎・切山長距離水管傾斜計による傾斜変化 S 御前崎地中地殻活動観測施設 S 御前崎における絶対重力変化 S 東海地方の地殻変動 O 新宮市〜十津川村間の上下変動 O 田辺市〜串本町間の上下変動 O 串本町〜新宮市間の上下変動 O 1928年を基準とした紀伊半島西側の各水準点の経年変化 O 1931年を基準とした紀伊半島東側の各水準点の経年変化 O 宿毛市〜土佐清水市間の上下変動 d.その他 4.その他の地殻活動等 S 伊豆東部地区 GNSS連続観測時系列 S 伊豆諸島地区 GNSS連続観測時系列 S 柏崎市〜長岡市間の上下変動 S 小松市〜津幡町間の上下変動 S フィリピン・ボホール島の地震に伴う地殻変動 【3】北海道大学 【4】東北大学 【5】東京大学地震研究所 【6】東京工業大学 【7】名古屋大学 3.プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 菊川ひずみ計によるひずみ速度の変化について 【8】京都大学防災研究所 4.その他の地殻活動等 S 近畿地方北部の地殻活動 S 地殻活動総合観測線の観測結果 S 飛騨山脈穂高岳付近の2013年の地震活動について 【9】九州大学 【10】鹿児島大学 【11】統計数理研究所 2.東北地方太平洋沖地震関連 O 東北地方太平洋沖地震のアウターライズ周辺での余震活動について 4.その他の地殻活動等 S 2013年4月13日淡路島の地震(M6.3)の余震活動(2011.4.13 - 2013.11.8) 【12】防災科学技術研究所 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 O 日本周辺における浅部超低周波地震活動(2013年8月〜10月)(3cを含む) b.相模トラフ周辺・首都圏直下 S 関東地方のGEONET観測網による地殻変動観測 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 O 西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況(2013年8月〜10月) S 関東・東海地域における最近の傾斜変動 S 伊豆地域・駿河湾西岸域の国土地理院と防災科研のGNSS観測網による地殻変動観測 【13】産業技術総合研究所 3.プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S 東海・伊豆地域における地下水等観測結果(2013年8月〜2013年10月) S 紀伊半島〜四国の地下水・歪観測結果(2013年8月〜2013年10月) S 東海・紀伊半島・四国における短期的スロースリップイベント(2013年8月〜2013年10月) 4.その他の地殻活動等 S 神奈川県西部地域の地下水位観測(2013年8月〜2013年10月)- 神奈川県温泉地学研究所・産総研 S 岐阜県東部の活断層周辺における地殻活動観測結果(2013年8月〜2013年10月) S 近畿地域の地下水・歪観測結果(2013年8月〜2013年10月) S 鳥取県・岡山県・島根県における温泉水・地下水変化(2012年5月〜2013年10月)--鳥取大学工学部・産総研 【14】海上保安庁 1.地殻活動の概況 b.地殻変動 S GPSによる地殻変動監視観測 2.東北地方太平洋沖地震関連 O 東北地方太平洋沖地震後の海底地殻変動観測結果 【15】海洋研究開発機構 3.プレート境界の固着状態とその変化 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 S DONETで同時期に観測された地震活動変化と圧力変動
記載分類は以下の通りとなっています。 1.地殻活動の概況 a.地震活動 b.地殻変動 2.東北地方太平洋沖地震関連 3.プレート境界の固着状態とその変化 a.日本海溝・千島海溝周辺 b.相模トラフ周辺・首都圏直下 c.南海トラフ・南西諸島海溝周辺 d.その他 4.その他の地殻活動等 ・口頭報告(O) ・資料提出のみ(S)