地震予知連絡会の活動報告
地震予知連絡会特定部会(2003年6月6日) 議事概要
平成15年(2003年)6月6日、国土地理院関東地方測量部において地震予知連絡会特定部会(平成15年度第1回)が開催され、5月26日に発生した宮城県沖の地震に関する観測・研究成果の報告および議論が行われた.以下に、その概要について述べる.
1.平成15年(2003年)5月26日の宮城県沖の地震について
2003年5月26日に宮城県沖でM7.0の地震が発生した。震源分布から、この地震は沈み込む太平洋プレート内部で発生したと考えられる。
2003年5月26日の宮城県沖の地震(M7.0:最大震度6弱)(気象庁資料)
宮城県沖の地震の余震分布(再計算震源による、Mすべて)(気象庁資料)
この地震に伴う余震活動は順調に減衰している。
宮城県沖の地震活動(余震活動M3.6以上)(気象庁資料)
この地震による揺れは、兵庫県南部地震と比較するとかなり短周期成分が卓越していた。
今回の地震と1995年兵庫県南部地震における揺れの周波数特性(気象庁資料)
この地震に伴い広域にわたる地殻変動が観測されている。
5月26日宮城県沖の地震 水平ベクトル図(国土地理院資料)
宮城県沖地震(1)地区 GPS連続観測基線図(国土地理院資料)
成分変化グラフ(国土地理院資料)
成分変化グラフ(国土地理院資料)
観測された地殻変動から震源断層モデルが推定されており、断層面は高角でやや横ずれ成分を伴った逆断層性のすべりであったと考えられる。また、推定されたモーメントマグニチュードは6.9である。
2003年5月26日宮城県沖を震源とする地震の地殻変動モデル(国土地理院資料)
地殻変動から推定した2003年5月26日宮城県沖を震源とする地震のモデル(国土地理院資料)
今回の地震の東側では2002年11月3日にM6.1の地震が発生しており、その後本震と同程度の規模のプレート間すべりが発生していたことが推定されている。
2002年11月3日の地震前後の地殻変動データから推定される暫定的なプレート間滑りのモデル(国土地理院資料)
このプレート間すべりによるクーロン応力変化は小さく、今回の地震に及ぼす影響は小さいと考えられる。
今回の地震の地震波形から、断層面上でのすべり分布が推定されている。この地震では、主要なすべりが10秒程度の間に2回あったと考えられる。また、この地震のモーメントマグニチュードは7.0と推定された。
Miyagi-oki03/05/26(地震研究所資料)
今回の地震が1978年宮城県沖地震の震源断層面に与える影響は、地震発生を加速する方向には働くものの、その大きさは潮汐による応力変化とほぼ同程度であり、実際にはほとんど影響しないものと考えられる。
測地インバージョン断層モデル(国土地理院,2003)を用いて計算した三陸南地震による仮想プレート境界面沿いのすべりに与えるクーロン応力変化(産業技術総合研究所資料)
遠地実体波インバージョン断層モデル(菊地,山中,2003)を用いて計算した宮城県沖地震のすべりに与えるクーロン応力変化(産業技術総合研究所資料)
今回の地震を含む地域の震源分布から、1978年の宮城県沖地震の約4ヶ月前に発生したM6.7の地震は、今回の地震とは異なり、沈み込むプレート内に水平にのびる断層面で発生したと考えられる。今回の地震が発生した領域は、従来から活動度が高い領域ではあるが、今回の断層面に沿った面上での活動があったようには見えない。1978年の宮城県沖地震のすべり量が大きい領域では、震源の並びに段差があり、この領域が周りと異なる可能性が考えられる(東北大学資料)。
今回の地震が想定される宮城県沖地震の発生を早める方向に影響するかについては、地震発生を多少加速する方向に働くものの、量的には潮汐による応力変化レベルであると推定されることから、ほとんど影響がないと考えられる。今回の地震が地震の準備過程の中でどのように位置づけられるかについても議論があったが、現時点での判断は難しい。
(事務局:国土地理院)