地震予知連絡会の活動報告

第240回地震予知連絡会(2023年8月31日)議事概要

 令和5年8月31日(木)、国土地理院関東地方測量部において第240回地震予知連絡会がオンライン会議併用形式にて開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリング、地殻活動の予測についての報告が行われ、その後、重点検討課題として「関東地震100周年」に関する報告・議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

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1.地殻活動モニタリングに関する検討

1.1 地殻活動の概況

(1)全国の地震活動

 日本とその周辺で2023年5月から7月までの3か月間に発生したM5.0以上の地震は54回であった。このうち、5月に発生した地震は28回と発生回数は多いものの、これまでも1~2年に一度程度の頻度で観測されている。日本国内で震度5弱以上を観測した地震は7回発生した(資料2頁・気象庁)。

(2)日本周辺における浅部超低周波地震活動

 4月中旬以降、種子島東方沖、大隅半島南東沖、日向灘及び宮崎県東方はるか沖で超低周波地震活動を観測した。5月には足摺岬の南に到達した活動は、6月中旬に収束した(資料3-4頁・防災科学技術研究所)。

(3)日本列島のひずみ変化

 GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島のひずみには、東北地方太平洋沖地震及び熊本地震の余効変動の影響が見られる。また、石川県能登地方で2020年12月から活発になっている地震活動とほぼ同期した地殻変動の影響によるひずみが見られる(資料5頁・国土地理院)。

1.2 プレート境界の固着状態とその変化

(1)日本海溝・千島海溝周辺

・千葉県東方沖の地震(5月26日 M6.2)
 2023年5月26日19時03分に千葉県東方沖の深さ50kmでM6.2 の地震(最大震度5弱) が発生した。この地震により、住家一部損壊1棟の被害が生じた(2023年6月5日17時00分現在、総務省消防庁による)。また、6月16日21時24分に千葉県北東部の深さ49kmでM4.9の地震(最大震度4)が発生した。これらの地震は発震機構が東西方向の圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境界で発生した(資料6頁・気象庁)。この地震に伴い、GNSS連続観測点でごくわずかな地殻変動が観測された(資料7頁・国土地理院)。

(2)南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況
 短期的スロースリップイベントを伴う顕著な微動活動が、四国西部において5月18日~22日に発生した。これ以外の主な深部微動活動は、紀伊半島中部から西部(7月15日~22日)、四国東部(7月19日~22日)、四国東部から西部(6月18日~7月9日)において観測された(資料8-9頁・防災科学技術研究所)。

・四国中部の非定常的な地殻変動
 GNSS連続観測により、四国中部で2019年春頃から南東向きの非定常的な地殻変動が見られている。2019年1月1日~2023年7月18日の期間では、すべり量の最大値は43cm、モーメントマグニチュードは6.6と求まった(資料10頁・国土地理院)。

・九州地域の非定常的な地殻変動
 GNSS連続観測により、九州南部で2023年初頭から南向きの非定常的な地殻変動が見られている。2022年7月1日~2023年7月20日の期間では、日向灘南部のすべり量の最大値は12cm、モーメントマグニチュードは6.4と求まった(資料11頁・国土地理院)。

1.3 その他

(1)苫小牧沖の地震(6月11日 M6.2)

 2023年6月11日18時54分に苫小牧沖の深さ136kmでM6.2の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震は太平洋プレート内部(二重地震面の下面)で発生した。発震機構は太平洋プレートの傾斜方向に張力軸を持つ型である。この地震により、軽傷1人の被害が生じた(2023年6月19日17時00分現在、総務省消防庁による)(資料12頁・気象庁)。

(2)石川県能登地方の地震活動(最大規模の地震:2023年5月5日 M6.5)

 石川県能登地方では、2018年頃から地震回数が増加傾向にあり、2020年12月から地震活動が活発になり、2021年7月頃からさらに活発になっている。2023年5月~7月も活発な状態が継続しており、活動の全期間を通じた最大規模であるM6.5の地震(最大震度6強)が2023年5月5日14時42分に発生した。M6.5の地震発生後、地震活動はさらに活発になっていたが、時間の経過とともに地震の発生数は減少している(資料13頁・気象庁)。2023年5月5日の地震により、2022年7月下旬に臨時に設置した2点の可搬型GNSS連続観測装置(REGMOS)で特に顕著な地殻変動が検出され、M珠洲笹波観測点で南西方向に9㎝程度の水平変位、震央の東側のM珠洲狼煙で13cm程度の隆起など、能登半島北東部で地殻変動が観測された。5月5日の地震後、M珠洲狼煙で約0.5cmの東向きの水平変動及びわずかな沈降、M珠洲笹波で約0.7cmの西南西方向の水平変動及び約1cmの沈降など、震源域近傍で地殻変動が見られている。7月以降は地震後のゆっくりとした変動が小さくなり、5月5日の地震前の傾向にほぼ戻っているように見える(資料14-22頁・国土地理院)。また、オンライン早期予測を目的とするために、敢えて検出された余震データの全てを考慮して、5月5日のM6.5の地震直後の余震活動について解析を試みた。その結果、背景地震活動度の変化を説明するためには、流体圧が本震後に上がってその後収束しているのではという解釈が提唱された(資料23-24頁・統計数理研究所)。

(3)千葉県南部の地震(5月11日 M5.2)

 2023年5月11日04時16分に千葉県南部の深さ40kmでM5.2の地震(最大震度5強)が発生した。この地震はフィリピン海プレート内部で発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に張力軸を持つ型である。この地震により、軽傷9人、住家一部破損17棟の被害が生じた(2023年5月18日17時00分現在、総務省消防庁による)(資料25頁・気象庁)。

(4)新島・神津島近海の地震活動(5月22日 M5.3)

 新島・神津島近海では、2023年5月22日から地震活動が活発となった。5月22日16時42分には深さ11kmでM5.3の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震の発震機構は北西-南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である。これらの地震はフィリピン海プレートの地殻内で発生した(資料26頁・気象庁)。この地震に伴い、GNSS連続観測点でわずかな地殻変動が観測された(資料27頁・国土地理院)。

(5)トカラ列島近海の地震活動(口之島・中之島付近)(5月13日 M5.1)

 トカラ列島近海(口之島・中之島付近)では、2023年4月1日頃からややまとまった地震活動があり、5月11日以降、地震活動が活発となった。このうち最大規模の地震は、5月13日16時10分に発生したM5.1の地震(最大震度5弱)である。この地震は陸のプレート内で発生した。発震機構(CMT解)は、南北方向に張力軸を持つ正断層型である(資料28-29頁・気象庁)。

(6)沖縄本島近海の地震活動(2023年5月1日 M6.4)

 この地震に伴い、沖縄本島のGNSS連続観測点でごくわずかな地殻変動が観測された(資料30頁・国土地理院)。

(7)硫黄島近海の地震(5月30日 M6.5)

 2023年5月30日09時52分に硫黄島近海の深さ12km(CMT解による)でM6.5の地震(震度1以上を観測した地点はなし)が発生した。この地震の発震機構(CMT解)は北北東-南南西方向に圧力軸を持つ逆断層型である(資料31頁・気象庁)。

(8)日本海北部の地震(6月28日 M6.3)

 2023年6月28日08時38分に日本海北部の深さ518kmでM6.3の地震(最大震度3)が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した。発震機構(CMT解)は太平洋プレートが沈み込む方向に圧力軸を持つ型である。今回の地震では、震央から離れた北海道や東北地方の太平洋側でも震度3~1の揺れを観測しており、この現象は「異常震域」と呼ばれている(資料32頁・気象庁)。

1.4 地殻活動の予測

(1)地殻変動予測:東北地方太平洋沖地震の余効変動

 東北地方太平洋沖地震の余効変動について時空間モデルを構築し、その予測精度を定量的に評価すると共に、予測からのずれを説明するプレート間滑りモデルについて報告された(資料34頁・国土地理院)。


2.重点検討課題「関東地震100周年」の検討

 2023年は、1923年関東大震災の発生から100年であり、この間に様々なことがわかってきた。本課題では、関東地方の地下構造・地震活動、測地観測とプレート間カップリング、1923年関東地震の被害と強震動、1923年関東地震の津波、歴史地震と変動地形に関して報告が行われ、関東地方の地下構造モデルの発展に伴う想定震源域に関する知見の変化、相模トラフ沿いのカップリングとSSEの発生領域との関連、プレート間カップリングと過去の地震の収支の矛盾、1923年関東地震の震度分布の特徴及び地形・地質との相関、津波・測地データに基づく最新の1923年関東地震の震源モデル、関東地震の発生履歴の知見の変化等について議論が行われた(資料36頁・コンビーナ:東京大学地震研究所・佐竹 健治 委員)。

◆関東地方のプレート構造と地震活動

 観測網の進展等により新たなフィリピン海プレートのモデルが提案され、用いられてきた。2013年の内閣府の想定では、プレートモデルが改訂され、フィリピン海プレートが浅くなり、従来想定されていた「東京湾北部地震」の震源域は、1923年関東地震の時に同時に破壊されたとされた。現在、フィリピン海プレートの形状について、新知見が得られており、従来よりもプレート境界深度が浅い可能性が指摘されている。こうした知見は、プレート境界付近での地震発生の仕組みを理解し、強震動の発生を予測することに貢献する(資料38頁・東京大学・平田 直 委員)。

◆測地観測による1923年関東地震とその後の地殻変動―地震時すべり、プレート間固着及びスロースリップ―

 1923年の関東地震に伴う地殻変動は、約50年後に断層モデルの推定等の地震像の解明に役立てられた。地震後の100 年間で地震時地殻変動の約1/4 が回復し、現在のGNSS データからは関東地震の震源域から房総半島南東沖まで強く固着していると推定される。房総半島南東沖では、Mw6.5を超えるSSE(房総SSE)が凖周期的に発生しており、さらに沖合でも大規模なSSEが発生している。一方、これらのSSE発生領域と1923年関東地震の震源域の間には複数のギャップがあり、これらの地域の地震発生ポテンシャルは現在のところ不明である(資料39頁・京都大学防災研究所・西村 卓也 委員)。

◆1923年関東大震災と南関東の強震動

 関東大震災の住家被害と人的被害について、被害数の単位をそろえた統一的な指標のデータベースが作成された。関東大震災の特徴として、住家被害の57%、死者数の87%をもたらした大火災を関東大震災の中心と見て間違いない。一方で、関東大震災はあらゆる震災が首都圏を含む南関東全域で一度に発生した歴史的な災害と言える。住家全壊率から強震動を推定すると、震源域直上から埼玉県東部の沖積低地に震度6弱から震度7に至る高震度地帯が認められ、地形や地質等の地盤条件が地震動の大きさに影響している可能性が高い。大火災の主要因は台風の余波による風速10~15m/秒の強風であったが、この程度の強風は特殊な気象条件と言えず、大地震との同時発生も想定すべき事象であると考えられる(資料40頁・(株)J-POWER設計コンサルタント・諸井 孝文 様)。

◆津波から見える1923年関東地震の震源過程

 1923年関東地震のすべり量分布を震源近傍の検潮所で記録された津波波形と地殻変動データから推定し、これまでの推定結果とよく似た2つの大すべり域が推定された。しかし、西側相模トラフ近傍に、これまでの結果とは異なる大きなすべり約9mが推定された。推定されたすべり分布を用いると、これまで説明できないとされてきた、伊豆半島沿岸の大きな津波調査結果と整合的な結果が得られることがわかった(資料41頁・北海道大学・谷岡 勇市郎 教授)。

◆関東地震の履歴の再評価

 元禄型関東地震について地形・地質学から再評価した結果、過去の発生回数は4回と変わらないもの、痕跡の年代が変わったことで発生間隔がかなりばらつくことが確認された。また、歴史上の関東地震について、津波、隆起の地質痕跡を再調査し、1293年正応(永仁)地震は、国府津―松田断層が同時に活動した可能性があること、1703年元禄地震は相模湾西部にあまり影響していない可能性があることなどが報告された(資料42頁・産業技術総合研究所・宍倉 正展 国内連携グループ長)。


3.次回(第241回)重点検討課題「予測実験の試行(09)-地震活動の中期予測の検証」の趣旨説明

 「予測実験の試行」は、将来検討WG(平成24年度から平成25年度)の「地殻活動・地震活動のモニタリングとして何が重要かを検討し、今の予測能力の実力を把握・提示するためには、今後予測実験の試行を行うことが有効である。」との提言(平成25年11月)を受けて始まった。そして、「予測実験の試行」は、これまでの約7年間に重点検討課題に8回取り上げられ、課題検討の中では、延べ45名からの報告が行われた。多岐にわたる研究成果が示された中から、相応に確立された4つの予測手法に関する半年から1年間の予測と観測結果の比較検証については、第233回(令和3年11月)地震予知連絡会より、「試行」から「実施」に踏み出すこととなった。これを受けて、令和4年5月に運営検討部会の傘下に「予測実験WG」が設置された。このWGでは、(1)定例会における報告方法、(2)報告する予測事項の選定、(3)報告された予測の評価・とりまとめ、(4)新たな予測実験項目の提案・選定、の検討を行っている。その後、WGからの提案、本会議での承認を経て、第238回(令和5年2月)地震予知連絡会より「地殻活動モニタリングに関する検討」枠の中で、「地殻活動の予測に関する報告」として毎回1課題ずつ報告が実施されている。現状の定期報告は、数か月から1年にターゲットを絞ったものであるが、5年から10年といったより長期の検証が必要な予測手法もある。こうした状況を踏まえ、次回は、中期的視点(数年程度の期間を想定)でなければ議論できない予測手法についての検証と課題整理を行う。第221回(平成30年11月)の重点検討課題での報告内容(北海道東方沖の静穏化と現状について)の検証、日本海溝の繰り返し地震に関するレビュー、能登半島群発地震のETASモデルによる2年半の予測と検証等について報告し、数年規模の中期予測についての総括の必要性、過去の長期間のデータを用いた後ろ向き評価の重要性、中期変動と短期予測との組み合わせや複数の異常現象の検討などの既往モデルの組み合わせの必要性、等についての議論を行う予定である(資料43-44頁・コンビーナ:東北大学災害科学国際研究所・遠田晋次 委員、共同コンビーナ:海洋研究開発機構・堀 高峰 委員)。


4.運営検討部会報告

 令和6年度前期の重点検討課題名が選定され、第243回は「トルコ地震(仮)」、第244回は「スラブ内地震(仮)」について、それぞれ議論を行う予定であることが報告された(資料45頁・運営検討部会)。


各機関からの提出議題

  地殻活動モニタリングに関する検討 提出議題一覧(PDF:312KB)