地震予知連絡会の活動報告

第250回地震予知連絡会(2026年2月20日)議事概要

 令和8年2月20日(金)、国土地理院関東地方測量部において第250回地震予知連絡会がオンライン会議併用形式にて開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われ、その後、重点検討課題として「熊本地震から 10 年 -地震像と今後の課題-」に関する報告・議論が行われた。以下に、その概要について述べる。

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1.第29期地震予知連絡会委員の追加について

 令和8年1月15日付で地震調査研究推進本部地震調査委員会委員長に就任した 小原 一成 氏が新たに第29期地震予知連絡会委員に就任した。


2.地殻活動モニタリングに関する検討

2.1 地殻活動の概況

(1)全国の地震活動について

 日本とその周辺で2025年11月から1月までの3か月間に発生したM5.0以上の地震は88回であった。このうち日本国内で震度5弱以上を観測した地震は4回発生した。(気象庁・資料2頁

(2)日本列島のひずみ変化

 GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島には、2025年11月9日に発生した三陸沖の地震及び2025年12月8日に発生した青森県東方沖の地震に伴うひずみ、能登半島を中心に令和6年能登半島地震の余効変動の影響によるひずみが見られる。そのほか、北海道南部から東北地方にかけて平成23年東北地方太平洋沖地震後の余効変動の影響によるひずみ、九州では2024年8月8日に発生した日向灘の地震後の余効変動や2025年1月13日に発生した日向灘の地震、2025年4月2日に発生した大隅半島東方沖の地震の影響によるひずみが見られる。また、山口県北部の地震活動に伴う地殻変動やトカラ列島近海の地震活動に伴うひずみが見られる。(国土地理院・資料3-4頁

(3)2025年12月8日 M7.5 青森県東方沖地震の余震活動の多様性について

 日本海溝帯は地震活動が非常に活発であると同時に、地質学的・応力環境的に多様な地震活動様式を示す地域である。本報告では、青森県東方沖を震源として発生したマグニチュード7.5の大地震(以下「本震」)の余震系列を対象に、定常・非定常ETASモデルによるモデル選択を適用し、余震活動が示す多様性について検討する。(統計数理研究所・資料5頁

2.2 プレート境界の固着状態とその変化

(1)日本海溝・千島海溝周辺

・三陸沖の地震活動(最大規模の地震:11月9日 M6.9)
 2025年11月9日17時03分に三陸沖の深さ16kmでM6.9の地震が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した。この地震により、岩手県盛岡市、矢巾町及び宮城県涌谷町で震度4を観測した。また、東北地方で長周期地震動階級1を観測した。さらに、岩手県の大船渡で16cm、宮古で9cmの津波を観測した。この地震の震央付近では、11月4日から地震活動がみられ、同月30日までに震度1以上を観測する地震が45回(震度4:1回、震度3:9回、震度2:20回、震度1:15回)発生した。(気象庁・資料6-13頁

・青森県東方沖の地震活動(最大規模の地震:12月8日 M7.5)
 2025年12月8日23時15分に青森県東方沖の深さ54kmでM7.5の地震が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した。この地震により、青森県八戸市で震度6強を観測した。また、青森県三八上北で長周期地震動階級3を観測した。さらに、岩手県の久慈港(国土交通省港湾局)で64cm、北海道の浦河(国土交通省港湾局)で50cmなど、北海道から東北地方にかけての太平洋沿岸を中心に津波を観測した。また、12月12日11時44分に青森県東方沖の深さ17kmでM6.9の地震が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が東西方向に圧力軸を持つ逆断層型である。この地震により、北海道及び東北地方で震度4を観測した。また、秋田県内陸北部で長周期地震動階級2を観測した。さらに、北海道のえりも町庶野で0.2m(巨大津波観測計により観測)、青森県の八戸港(国土交通省港湾局)で14cmなど、北海道と青森県の太平洋沿岸で津波を観測した。12月8日のM7.5及び12日のM6.9の地震が発生して以降地震活動が継続しており、特に2025年12月12日のM6.9の地震の震源付近で活発に推移している。12月8日から2026年1月31日までに震度1以上を観測した地震は、60回(震度6強:1回、震度4:4回、震度3:9回、震度2:16回、震度1:30回)であった。(気象庁・資料14-23頁
 この地震活動に伴って、東通2観測点で東方向に約9cmの水平変動及び約2cmの沈降等、青森県を中心に地殻変動が観測された。地震時の変動のほか、東通2観測点で東南東方向に約3cmの水平変動等、青森県を中心に余効変動が観測された。「だいち2号」及び「だいち4号」データの解析結果によると、青森県東部において最大約5cmの沈降、最大約9cmの東向きの変動が見られた。電子基準点の地殻変動に基づく地震時すべりの推定によると、すべり域は 1994年三陸はるか沖地震のアスペリティの一部に対応している。モーメントマグニチュードは7.56(剛性率40GPaを仮定)であった。(国土地理院・資料24-35頁

・岩手県沖の地震(12月31日 M6.1)
 2025年12月31日23時26分に岩手県沖の深さ32kmでM6.1の地震(最大震度4)が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した。(気象庁・資料36頁

・北海道・東北沖の地震のサイズ分布(b値)の時空間変化(続報)
 北海道・東北沖の地震の規模別頻度分布(b値)の時空間変化について、前回と同様、第244回(2024年8月29日)に「プレート境界の固着状態とその変化」で報告した内容の続報。2003年十勝沖震源域の東側の、1952年十勝沖地震で滑りの大きかった場所付近のb値が、前回報告時同様、0.5程度の低い値を示している。また、1968年十勝沖地震ならびに1994年三陸はるか沖地震の震源域のb値も前回同様に低い値(0.6程度)を保っている。そのb値が低い領域内で12月8日の青森県東方沖地震M7.5の地震が発生し、その後も活発な地震活動が続いている。(海洋研究開発機構・資料37頁

(2)南海トラフ・南西諸島海溝周辺

・西南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況(2025年11月~2026年1月)
 短期的スロースリップイベントを伴う顕著な微動活動は、1月1日~7日に四国西部から豊後水道で発生した。これら以外の主な微動活動として、11月9日~16日に紀伊半島中部で、11月18日~23日に四国中部で、12月1日~6日に紀伊半島西部で、12月4日~12日に四国中部から西部で、1月21日~28日に四国東部から中部での微動活動が検知された。(防災科学技術研究所・資料38-39頁

・東海の非定常的な地殻変動(長期的SSE)
 GNSS連続観測により、東海地域で2022年初頭から南東向きの非定常的な地殻変動が見られている。2022年1月1日~2026年1月10日の期間の解析では、渥美半島を中心にすべりが推定され、すべりの最大値は19cm、モーメントマグニチュードは6.6と求まった。(国土地理院・資料40-43頁

・四国西部の深部低周波地震(微動)と同期したスロースリップ
 GNSS連続観測により、2026年1月上旬に四国西部で短期的スロースリップが検出された。プレート境界面上のすべり分布を推定した結果、最大で約11mmのすべりが推定され、モーメントマグニチュードは6.0と求まった(国土地理院・資料44頁

・日向灘の地震後の地殻変動
 日向灘沖南部では2024年8月8日M7.1の地震の発生以降、余効変動は継続しているが、減衰しており、最近ではわずかになっている。2024年8月6日~9月2日では震央付近に大きなすべりが推定されているほか、繰り返し長期的ゆっくりすべりが発生している宮崎県沿岸部、種子島沖でもすべりが推定されている。その後、主に震源の海溝側と宮崎県沿岸部ですべりが継続していた。2025年1月13日の地震後は、震源を中心に同心円状にすべりが発生したほか、日向灘沿岸北部まで海岸沿いにすべりが広がった。2024年8月6日~2025年11月8日の期間では、すべりの最大値は61cm、モーメントマグニチュードは7.2であった。(国土地理院・資料45-49頁

2.3 その他

(1)択捉島南東沖の地震(1月13日 M6.3)

 2026年1月13日16時34分に択捉島南東沖の深さ30km(CMT解による)でM6.3の地震(最大震度2)が発生した。この地震の発震機構(CMT解)は北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型である。(気象庁・資料50頁

(2)島根県東部の地震活動(最大規模の地震:1月6日 M6.4)

 2026年1月6日10時18分に島根県東部の深さ11kmでM6.4の地震(最大震度5強)が発生した。この地震は地殻内で発生した。発震機構(CMT解)は、西北西-東南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である。また、6日10時28分にM5.1の地震(最大震度5弱)及び同日10時37分にM5.5の地震(最大震度4)が発生するなど、M5.0を超える地震が発生した。1月6日から31日までに震度1以上を観測した地震が58回(震度5強:1回、震度5弱:1回、震度4:1回、震度3:6回、震度2:16回、震度1:33回)発生した。(気象庁・資料51-52頁
 また、この地震活動に伴って、松江観測点で約0.7cmの地殻変動が観測された。電子基準点の地殻変動に基づいて推定した震源断層モデルは、西南西-東北東走向で北北西に傾き下がる断層面上における右横ずれ断層運動を示した。これは余震分布と整合している。(国土地理院・資料53-56頁

(3)2025年2月からの山口県北部の地震活動周辺域の地殻変動

 この地震活動に伴って、阿東観測点で約1.3cm等、山口県北部でわずかな地殻変動が観測された。(国土地理院・資料57-61頁

(4)2025年11月25日の熊本県阿蘇地方の地震

 この地震活動に伴って、阿蘇観測点で約1.2cmの地殻変動が観測された。(国土地理院・資料62-63頁

(5)2025年6月21日からのトカラ列島近海の地震活動

 2025年6月21日からのトカラ列島近海の地震活動に伴って、諏訪之瀬島観測点で約0.9cmの地殻変動が観測された。(国土地理院・資料64-68頁

(6)台湾付近の地震(12月28日 M7.0)

 2025年12月28日00時05分に台湾付近の深さ86kmでM7.0の地震(日本国内で観測された最大の揺れは震度3)が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が、西北西-東南東方向に圧力軸を持つ型で、フィリピン海プレート内部で発生した。(気象庁・資料69頁

(7)硫黄島近海の地震(1月22日 M6.5)

 2026年1月22日01時37分に硫黄島近海の深さ15km(CMT解による)でM6.5の地震(震度1以上を観測した地点はなし)が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が北西-南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である。(気象庁・資料70頁


3.重点検討課題「熊本地震から10年 -地震像と今後の課題-」についての検討

 熊本地震に関する地震像と今後の課題について、以下の報告があり議論が行われた。(コンビーナ:九州大学・松本 聡 委員・資料72頁

◆九州中部の長期テクトニクス再考

 九州中部をとりまく長期(過去500万年)のテクトニクスは、様々な地質学的要素が影響し、日本列島の中でもとりわけ複雑である。九州中部における地層から古応力を推定した結果、鮮新統(約300万年前)の地層では、東西圧縮、南北引張の横ずれ断層型応力場と南北引張の正断層型の応力場が検出されたが、中部更新統の地層は東西圧縮の斜め横ずれ型の応力場であり、明瞭な正断層型の応力場は認められない。また、約300万年前以降の九州中部の応力場は、中央構造線に関連した横ずれ応力が支配的であることを示す。長期のテクトニクスや大規模火山活動で生じた複雑な地質構造が、2016年熊本地震の震源過程に影響を及ぼしている可能性がある。(産業技術総合研究所・大橋 聖和 様・資料74頁

◆熊本地震に伴う断層すべりの阿蘇カルデラ内への貫入とその後の挙動

 熊本地震に伴う布田川断層のすべりは阿蘇カルデラ内部に貫入し、北側の右横ずれ系と南側の左横ずれ系の2系統に分岐した。断層すべりの終端部には高温の流体に富む低密度域が存在し、断層すべりの停止に寄与した可能性が示唆される。地震後、カルデラ内における沈降は長期にわたり進行し、地震時に貫入した断層の余効すべりでほぼ説明ができる。カルデラ内の断層における余効すべりの時間変化は、断層終端部における熱水環境に支配された弱い地殻構造を反映している可能性が示唆される。(国土地理院・小林 知勝 様・資料75頁

◆2016年熊本地震の背景と現在までの地震活動から見えること

 熊本地震は複雑な力の場で発生し、断層は複雑な形状で分岐をしていた。断層面が決められれば、より高い精度の強震動予測の可能性がある。b値と臨界度を併用すると地震発生ポテンシャルをより詳しくモニターできる可能性がある。M6.5の前震の前には震源付近で臨界度が高く、地震が起こりやすかった可能性がある。日奈久断層南部では余震活動が活発であり、断層に力がかかり続けていると解釈できる。いつ・どのくらいの地震が起こるかは予測できないが、稠密な観測、調査を継続し、地震活動の変化の検出に取り組む必要がある。(九州大学・松本 聡 委員・資料76頁

◆2016年熊本地震に伴う地表地震断層上での古地震調査

 2016年熊本地震を引き起こした布田川断層の周辺に広域に出現した地表地震断層(二次的な断層)上で古地震調査を実施した。それらの多くには、2016年より前にも活動していた痕跡が見出された。古地震調査の結果、布田川断層は最近7300年間で4回(2016年含む)活動した可能性が高い。最近7300 年間の二次的な断層上の活動履歴情報と比較した結果、布田川断層の活動とそれら二次的な断層の活動の同時性が認められた。ただし、活動時期の年代制約は十分でなく、現状の古地震調査の限界も示している。(千葉大学・石村 大輔 様・資料77頁

◆比抵抗構造と断層破壊の関係についての研究例

 2016年熊本地震や1997年鹿児島県北西部地震等におけるすべり分布と比抵抗構造の位置関係から、大地震の破壊域は2つの電気伝導度が高い低比抵抗体に挟まれており、低比抵抗体の端部から破壊が開始する傾向がある。また、それらの破壊は、別の低比抵抗体によって停止する傾向がある。2016年熊本地震の本震は、一部の低比抵抗領域を乗り越えて断層破壊が伝搬したものの、阿蘇カルデラ直下の低比抵抗体の存在により停止した可能性がある。(九州大学・相澤 広記 様・資料78頁


4.次回(第251回)重点検討課題「情報科学を活用した地震調査研究」についての趣旨説明

 21世紀初頭に始まった第三次人工知能(AI)ブームは留まることを知らず、各分野においてAIは普遍的な手法となりつつある。地震学においても、地震波検測深層学習モデルが発表された2018年頃から急速にAIが浸透し、地震波動場を面的に再構成する技術、昔の地震計のアナログ記録から当時の地震・スロー地震を検出する技術、地震波伝播や地殻変動の物理シミュレーションを小さな計算コストで実行可能な代替モデルの構築などに展開されている。地震学においてAIをはじめとする最先端情報科学技術の活用を促進するための大型プロジェクトが複数実施されるなど、現在の地震学においては「情報×地震」が一分野として形成されたと言っても過言ではない。文部科学省「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト」(STAR-E プロジェクト、2021~2025年度)などを通じて様々な「情報×地震」技術要素が創出されてきたものの、現業機関への技術提供、政府の各種委員会への情報提供、及び地震研究へのさらなる貢献が可能となるよう、各技術の高度化と汎用化、さらにはシステム化などが喫緊の課題である。そのため、「情報×地震」分野の背景と現況、深層学習に基づく地震連続波形データや歴史地震記象からの地震・スロー地震検出、日本における余震地震動ハザードの短期評価、深層学習に基づくスロースリップ検出と断層すべりモニタリングの高度化について報告を行い、これまでに開発した「情報×地震」技術の社会実装に向けて何が必要か、短期的・長期的視点で必要となる「情報×地震」技術の開発要素は何か、情報科学の専門家との連携を永続するために地震学は何をするべきかについて議論する予定である。(コンビーナ:東京大学・平田 直 委員、東京大学地震研究所・長尾 大道 様・資料79頁


5.令和8年度地震予知連絡会の開催について

 令和8年度の地震予知連絡会の開催日程について報告があった。(事務局・資料80頁


各機関からの提出議題

 地殻活動モニタリングに関する検討 提出議題一覧(PDF:369KB)