地震予知連絡会の活動報告
第251回地震予知連絡会(2026年5月21日)議事概要
令和8年5月21日(木)、国土地理院関東地方測量部において第251回地震予知連絡会がオンライン会議併用形式にて開催された。全国の地震活動、地殻変動等のモニタリングについての報告が行われ、その後、重点検討課題として「情報科学を活用した地震調査研究」に関する報告・議論が行われた。以下に、その概要について述べる。
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1 第29期地震予知連絡会委員の追加について
国立研究開発法人産業技術総合研究所 大上 隆史 氏、気象庁 青木 重樹 氏及び 林 豊 氏が新たに第29期地震予知連絡会委員に就任した。
2 地殻活動モニタリングの検討結果
1.地殻活動の概況
(1)全国の地震活動について
日本とその周辺で2026年2月から4月までの3か月間に発生したM5.0以上の地震は72回であった。このうち日本国内で震度5弱以上を観測した地震は5回発生した。(気象庁・資料Ⅰ-2頁)
(2)日本列島のひずみ変化
GNSS連続観測によると、最近1年間の日本列島には、2025年11月9日に発生した三陸沖の地震及び2025年12月8日に発生した青森県東方沖の地震に伴うひずみ、能登半島を中心に令和6年能登半島地震の余効変動の影響によるひずみが見られる。そのほか、北海道南部から東北地方にかけて平成23年東北地方太平洋沖地震後の余効変動の影響によるひずみ、九州では2024年8月8日及び2025年1月13日に発生した日向灘の地震後の余効変動、2025年4月2日に発生した大隅半島東方沖の地震の影響によるひずみが見られる。また、山口県北部の地震活動に伴う地殻変動やトカラ列島近海の地震活動に伴うひずみが見られる。(国土地理院・資料Ⅰ-3~4頁)
2.プレート境界の固着状態とその変化
(1)日本海溝・千島海溝周辺
・三陸沖の地震活動(最大規模の地震:3月26日 M6.7)
2026年3月8日22時17分に三陸沖の深さ17kmでM6.1の地震(最大震度3)が、3月26日23時18分には深さ15kmでM6.7の地震(最大震度4)が発生した。これらの地震は、発震機構(CMT解)が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した。
今回の地震の震央付近では、3月に震度1以上を観測する地震が12回(震度4:1回、震度3:3回、震度2:1回、震度1:7回)発生した。(気象庁・資料Ⅰ-5頁)
・三陸沖の地震(4月20日 M7.7)
2026年4月20日16時52分に三陸沖の深さ19kmでM7.7の地震が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した。この地震により、青森県階上町で震度5強を観測したほか、北海道から近畿地方にかけて震度5弱~1を観測した。また、宮城県北部及び秋田県内陸南部で長周期地震動階級3を観測したほか、北海道から中部地方にかけて長周期地震動階級2~1を観測した。この地震により、岩手県の久慈港(国土交通省港湾局)で79cm、北海道の浦河(国土交通省港湾局)で39cmなど、北海道及び東北地方の太平洋沿岸で津波を観測した。
気象庁はこの地震に対して、最初の地震波の検知から19.8秒後の16時53分23.3秒に緊急地震速報(警報)を発表した。また、同日16時55分に北海道太平洋沿岸中部及び岩手県に津波警報を発表し、同日17時08分に青森県太平洋沿岸及に発表していた津波注意報を津波警報に切り替えた。その後、同日20時15分に津波警報を津波注意報に切り替え、同日23時45分に津波注意報を全て解除した。
気象庁は、この地震について同日19時30分に北海道・三陸沖後発地震注意情報を発表した。
今回の地震の震央付近では、4月20日以降30日までに震度1以上を観測した地震が38回(震度5強:1回、震度3:3回、震度2:7回、震度1:27回)発生するなど、地震活動は継続している。(気象庁・資料Ⅰ-6~19頁)
GNSS観測によると、今回の地震に伴って、岩手県普代村のS普代(ふだい) 観測点で東方向に約9cmの変動及び約1cmの沈降が検出されるなど、岩手県を中心に東北地方の広い範囲で地殻変動が観測された。また、M7.7の地震の後、およそ10日間で、岩手県宮古市の田老A観測点が東方向に約2cm変動するなど、岩手県を中心に余効変動と考えられる水平変動が観測されている。
また、GNSS観測により、地震時の震源断層モデルの深部側に余効すべりが推定された。2026年4月21日~2026年5月03日の解析では、すべりのモーメントマグニチュードは6.6を超えている。モーメントの時系列からは地震直後からモーメントが直線的に増大していることが分かる。
推定された震源断層モデルは、いずれもこの地震が太平洋プレートと陸側プレートの境界で発生したプレート間地震であることと調和的であり、岩手県沿岸で見られたわずかな沈降は、推定されたすべりにより説明できる。(国土地理院・資料Ⅰ-20~26頁)
・北海道・東北沖の地震のサイズ分布(b値)の時空間変化(続報)
北海道・東北沖の地震の規模別頻度分布(b値)の時空間変化について、前回・前々回と同様、第244回(2024年8月29日)に「プレート境界の固着状態とその変化」で報告した内容の続報。2003年十勝沖震源域の東側の、1952年十勝沖地震で滑りの大きかった場所付近のb値が0.5程度の低い値を示している。また、1968年十勝沖地震ならびに1994年三陸はるか沖地震の震源域のb値も前回同様に低 い値(0.6程度)を保っている。そのb値が低い領域内の北では2025年12月8日の青森県東方沖地震M7.5が、南では2026年4月20日三陸沖の地震M7.7が発生し、1994年三陸はるか沖地震の震源域が中央に残った状態で、その後も活発な地震活動が続いている。(海洋研究開発機構・資料Ⅰ-27頁)
(2)相模トラフ周辺・首都圏直下
・茨城県南部の地震(4月1日 M5.0)
2026年4月1日10時06分に茨城県南部の深さ48kmでM5.0の地震(最大震度5弱)が発生した。この地震は、発震機構が北西-南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で発生した。(気象庁・資料Ⅰ-28頁)
この地震活動に伴って、石下観測点では地震と同じタイミングで変動があるように見えるが、変動量が地震規模に比べ大きく、地震に伴う局所的な変化があった可能性がある。(気象庁・資料Ⅰ-29~30頁)
(3)南海トラフ・南西諸島海溝周辺
・⻄南日本の深部低周波微動・短期的スロースリップ活動状況(2026年2月〜2026年4月)
短期的スロースリップイベントを伴う顕著な微動活動は、2月16日〜26日に紀伊半島中部から北部で、3月1日〜7日に東海地⽅で発生した。これら以外の主な微動活動として、2月8日〜14日に紀伊半島南部で、2月18日〜22日に四国中部で、4月6日〜10日に豊後水道での微動活動が検知された。(防災科学技術研究所・資料Ⅰ-31頁)
・東海の非定常的な地殻変動(⻑期的ゆっくりすべり)
GNSS連続観測により、東海地域で2022年初頭から南東向きの非定常的な地殻変動が見られている。2022年1月1日~2026年5月1日の期間の解析では、渥美半島付近にすべりが推定され、すべりの最大値は19cm、モーメントマグニチュードは6.6と求まった。(国土地理院・資料Ⅰ-32~35頁)
・志摩半島周辺の非定常地殻変動(長期的ゆっくりすべり)
GNSS連続観測により、志摩半島周辺で2024年夏頃から南東向きの非定常的な地殻変動が見られている。2022年1月1日~2026年3月26日の期間の解析では、志摩半島周辺付近にすべりが推定され、すべりの最大値は6cm、モーメントマグニチュードは6.3と求まった。(国土地理院・資料Ⅰ-36~38頁)
3.その他
(1)十勝地方南部の地震(4月27日 M6.2)
2026年4月27日05時23分に十勝地方南部の深さ83kmでM6.2の地震(最大震度5強)が発生した。この地震は太平洋プレート内部で発生した。発震機構は北北東-南南西方向に張力軸を持つ型である。(気象庁・資料Ⅰ-39頁)
(2)長野県北部の地震(最大規模の地震:4月18日 M5.1)
2026年4月18日13時20分に長野県北部の深さ8kmでM5.0の地震(最大震度5強)が、同日14時54分に深さ9kmでM5.1の地震(最大震度5弱)が発生した。これらの地震は地殻内で発生した。発震機構は、北西-南東方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型である。(気象庁・資料Ⅰ-40頁)
この地震活動に伴って、長野県北部でごくわずかな地殻変動が観測された。(国土地理院・資料Ⅰ-41~42頁)
(3)宮古島北西沖の地震活動(最大規模の地震:3月2日 M6.2)
宮古島北西沖では、2026年2月26日から地震活動が活発となり、2月26日から3月31日までに震度1以上を観測する地震が32回(震度3:1回、震度2:13回、震度1:18回)で、これら一連の地震活動は、沖縄トラフ沿いで発生している。このうち最大規模の地震は3月2日19時39分に発生したM6.2(最大震度3)で、発震機構(CMT解)は、北北西-南南東方向に張力軸をもつ正断層型で陸のプレート内で発生した。(気象庁・資料Ⅰ-43頁)
この地震活動に伴って、伊良部観測点で約1.4cm等,地殻変動が観測された。伊良部、城辺、多良間等の観測点において、2月下旬から3月中旬にかけて地殻変動が観測されている。(国土地理院・資料Ⅰ-44~45頁)
(4)千島列島の地震(2月22日 M6.1)
2026年2月22日16時25分に千島列島でM6.1の地震(日本国内で震度1以上を観測した地点はなし)が発生した。(気象庁・資料Ⅰ-46頁)
(5)硫黄島近海の地震(3月2日 M6.2)
2026年3月2日12時55分に硫黄島近海の深さ16km(CMT解による)でM6.2の地震(震度1以上を観測した地点はなし)が発生した。この地震は、発震機構(CMT解)が、北東-南西方向に張力軸を持つ正断層型である。(国土地理院・資料Ⅰ-47頁)
3 重点重点検討課題「情報科学を活用した地震調査研究」についての検討
情報科学を活用した地震調査研究について、以下の報告があり議論が行われた。(コンビーナ:東京大学・平田 直 委員、東京大学地震研究所・長尾 大道 様・資料Ⅱ-2頁)
◆情報科学を活用した地震調査研究 -背景と現況-
近年のAIをはじめとする情報科学技術の発展に伴い、2018年頃から世界的に急速に拡大してきた「情報×地震」が分野として確立しつつある。JST CREST(2017~2022年度)や文科省STAR-Eプロジェクト(2021~2025年度)といった大型プロジェクトにより、情報科学を活用した地震調査研究が大きく進展した。STAR-Eプロジェクトの後継として、文科省STAR-E NEXTプロジェクト(2026~2030年度)が発足し、これまでの「情報×地震」手法群のさらなる深化と応用展開の拡大を狙う。(東京大学地震研究所・長尾 大道 様・資料Ⅱ-4頁)
◆データの不完全性に対応した大地震後の地震活動および地震動ハザードの準リアルタイム時空間予測に関する研究開発
大地震直後の余震地震動ハザード情報作成に向けて、地震データの不完全性に対応した地震活動およびそれに伴う揺れの準リアルタイムの時空間予測に関する研究開発を行った。地震カタログに基づくアプローチと地震動データに基づくアプローチにより、予測スキームを確立するとともに、内陸地震(2016年熊本地震)の実記録を用いた検証を実施した。また両アプローチの統合に向けた基礎的な検討を行い、試験的な情報統合により、短期的余震ハザード予測を大きく進展させることができた。(防災科学技術研究所・久保 久彦 様・資料Ⅱ-5頁)
◆情報科学を用いたスロースリップ検出と断層すべりモニタリングの高度化
GNSSの観測記録のみから、時系列の線形トレンドの変曲点に基づく短期的スロースリップの検出手法を開発し、未知のスロースリップの検出に成功した。一方、地震動検出のような深層学習を用いた短期的スロースリップ検出の試みとして、単観測点を用いた場合の学習器を構築し、各点に順次適用することでスロースリップ検出の可能性を評価した。また、物理深層学習(PINN)を用いた断層摩擦特性推定方法を開発し、豊後水道スロースリップ発生域の摩擦特性推定と地殻変動データを定量的に再現することに成功した。また、構築したモデルに基づく予測では、豊後水道スロースリップの5~6年周期での繰り返しが再現できている。(京都大学防災研究所・加納 将行 委員・資料Ⅱ-6頁)
◆物理情報深層学習を活用した南海トラフ域震源決定システム・地下構造アンサンブル推定手法の開発
プレート沈み込み帯における地震活動を正確に把握するには、複雑な地下構造を反映した3次元速度構造モデルが必要である。しかし、3次元モデルは「作る」のも「震源決定に使う」のも計算量・データ量の負担が大きかった。本研究では、物理情報深層学習(PINN)により、3次元速度構造モデルを「作る」技術と「震源決定に使う」技術の双方を高度化し、高速・軽量な震源決定と地下構造の信頼性評価を実現した。3次元速度構造を「活用する」技術として、南海トラフ域の震源決定システム HypoNet Nankaiを開発した。従来法と整合的な震源決定を、1震源あたり数秒で実行でき、拡張性とデータ効率が高い。3次元速度構造を「作り、信頼性を評価する」技術として、PINNとアンサンブル推定を組み合わせた不確実性定量化付き走時トモグラフィ手法を開発し、紀伊半島沖での実地震データに適用した。ニューラルネットワークによる速度構造表現により、多数の3次元速度構造モデルを軽量に扱えるようになり、地下構造の不確実性を実用的に評価できるようになった。本研究は、南海トラフ域における震源決定の高度化、地下構造モデルの信頼性評価、地震活動把握の精度向上に資する基盤技術となる。(海洋研究開発機構・縣 亮一郎 様・資料Ⅱ-7頁)
◆深層生成モデルを用いた地震ハザード評価 -現状と展望-
深層生成モデルの一種である敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いて、耐震性能評価に必要な地震動の加速度時刻歴波形を直接生成する、新たな地震動評価手法を構築した。具体的には、日本国内の強震観測データ(全国強震観測網K-NET)を学習データとし、地殻内地震を対象に地震規模・断層最短距離・地盤条件を考慮した地震動波形を生成した。さらに、構築した地震動評価手法を活用した確率論的地震ハザード評価(PSHA)手法を実現した。これにより、従来の応答スペクトル中心の評価を拡張した新たな確率論的地震ハザード評価が可能であることを示した。提案手法により、構造物の地震応答解析へ生成波形を直接活用できる可能性を示し、より高度な耐震性能評価の実現が期待される。防災科研を中心に進む地震観測記録・メタデータ基盤の整備をさらに拡張し、将来的には全国規模の波形データ基盤を構築することで、上記を含めた次世代の地震ハザード評価への展開が期待される。(東京大学大学院工学系研究科・糸井 達哉 様・資料Ⅱ-8頁)
4 次回(第252回)重点検討課題「昭和南海地震から80年 ~南海トラフ地震に向けた調査観測研究の現状~」についての趣旨説明
1946年昭和南海地震から80年を迎え、次の南海トラフ地震に向けた調査観測研究の現状を改めて整理する時期にある。南海トラフ地震については、地震調査委員会により長期評価の一部改訂が行われ、発生確率の算出方法やその表現が見直された。この見直しは、過去の地震履歴や地殻変動データに基づく評価手法の前提、不確実性、今後の改善の方向性を再点検する契機となっている。
近年、南海トラフ地震に関する研究は、過去の地震履歴や海岸昇降量等に基づく地震サイクル評価、GNSS・GNSS-A 観測によるプレート境界の応力蓄積率推定、DONET・孔内観測・海底水圧計・光ファイバ観測による状態監視、さらに地震サイクルシミュレーションとデータ同化に向けた研究へと展開している。これらは、過去の地震サイクル、現在のプレート境界の力学状態、将来の推移予測を結びつける研究基盤となりつつある。
長期評価においては、室津港の隆起量に代表される過去の地殻変動データが重要な役割を果たしてきたが、南海トラフ地震の多様な破壊様式を一地点の情報で代表できるかには課題がある。今後、歴史資料や海岸昇降量等の新たな知見を踏まえ、長期評価に用いるデータと時間予測モデル等をどのように検証・改良するかを検討する必要がある。また、現在の観測データに基づく中期評価として、応力蓄積率や力学的カップリングを推定し、地震性・非地震性すべりを含むシナリオを提示する研究が進んでいる。その高度化には、海域観測による浅部プレート境界の解像度向上、地震活動・地殻変動・流体圧等の統合的理解、観測データを物理モデルへ取り込むデータ同化手法の発展が不可欠である。
そのため、歴史資料から読みとった海岸昇降量の時間予測モデルへの適合性再検討、GNSS・GNSS-A観測に基づく応力蓄積率推定と地震シナリオ、プレート境界状態の監視に向けた海底ケーブル観測網による掘削孔内・海底の広域・リアルタイム地殻変動観測の取り組み、地震サイクルシミュレーションと推移予測への活用に向けた研究の現状について報告を行い、新たな歴史資料・海岸昇降量の成果を長期評価にどのように取り込むべきか、応力蓄積率に基づく中期的な地震シナリオをどのように評価し、観測データによってどのように更新すべきか、海底・孔内・光ファイバ観測は、短期的なプレート境界状態の監視に何をもたらし、地震サイクルシミュレーションやデータ同化にどのように接続できるかについて議論する予定である。(コンビーナ:京都大学防災研究所・伊藤 喜宏 委員、海洋研究開発機構・堀 高峰 委員・資料Ⅱ-9頁)
5 運営検討部会報告
以降の重点検討課題名が選定され、
第254回は「三陸沖の活動(調査観測)(仮)」
第255回は「内陸で発生する地震(仮)」
第256回は「群発地震活動と地殻変動(仮)」
について、それぞれ議論を行う予定であることが報告された。(資料Ⅲ・運営検討部会)
各機関からの提出議題
地殻活動モニタリングに関する検討 提出議題一覧(PDF:215KB)